幸福を呼ぶ、紺色のハンカチ
-----放課後-----
彼女が行ってみたかったというカフェで、アイスコーヒーを頼み、一段落していると。
彼女はシロップを入れたアイスティーをぐるぐる、
ストローで時計回りに混ぜ、
氷の音をカランコロン鳴らしながら、衝撃な言葉を発した。
「好きな人できたんだよね」
『うぇ、マジで』
「マジマジ」
『え、誰』
「言うわけないじゃんって言いたいところだけど
律、あんたに協力してほしいから、こうして時間作ってんだよね」
まさかということが起きた。
いつか来るかもしれないと想像はしていたが、まさか来ると思っておらず。
それが今日とは思わず、面食らってると、
彼女は好きな人の名前を言った。
「悠都先輩なんだよね」
『…ゆうと?どの?』
「谷中、谷中悠都先輩」
『…あぁ、悠都先輩
…つったら正直あんまりいい噂を聞かねえよな?
見た目は超爽やかだけど』
「そこがいいんじゃん、先輩とだったら私…」
と下を向いてサイドに寄せた一つ括りに縛った、
長い髪の毛先を恥ずかしそうに触りながら言いかけたので、
『あぁ幼馴染みのそういうこと、聞きたくねーわ』
と阻止した。
「なんでよーまぁいいわ。
でね、協力っていうのが…」
「じゃん」
という効果音とともに紺色のハンカチを取り出した。
『え、なにそれ、まさか』
「その、まさかなんだよね!
拾っちゃった」
『えー…ついに犯罪者になっちゃったか。
いつかやるとは思ってたけど…』
「なによそれ、心外な。
違うわよ、さすがに。
今日5時間目、体育だったじゃん?」
『うん』
「その後、3年生たちとすれ違ったんだけど、その時に先輩が落としてったんだよね。
すぐに声かけようと思ったんだけど、間に合わなくて。
だからあんたから返しといてくんない?」
『…なんで?
直接返した方が話すきっかけになるだろ?』
「ちっちっち…」
と人差し指をたてて横に動かしながら否定された。
…なんかムカつくな笑
「甘いなぁ。
先輩に声かけてる人めっちゃ多いのに印象付けないと忘れられちゃうじゃん」
『でも俺が声かけたって印象つくわけじゃないだろ』
「そこであんたよ。先輩に手紙書いてくんない?」
『は?手紙?今時?
てか、その方がキモくね?』
「いやいや、直で私が書いたんだったら気味悪いかもしれないけど、
同性ならそんなこと、思わないんじゃない?」
『えぇどうだろうなぁ…』
と思わず腕を組む。
「その手紙のついでに好きなモノとか、
好きなこと、趣味、なんでも聞いて欲しいの。
つまりは仲良くなって欲しいというか…!」
『…仲良く、ねぇ…』
仮にも先輩だし、難易度高そうだなぁ…。
てか、俺が仲良くなっても意味あんの?
…っていう言葉はグッと堪える。
「あんたも直接は無理だろうと思うし、手紙ならいけるでしょう」
無理だと思うなら、頼むなよという心の声はまたしてもグッと堪えた。
火に油は注ぎたくないからね、
結と何年友達やってると思ってんだ、と誰にたいしてかはわからないが威張ってみる。
「手紙に飽きたんなら途中でLIMEに切り替えたらいいじゃん?」
『あ、それはありなんだ』
「うん!ありあり!なんなら私にLIME教えて」
『…それが魂胆か』
「当たり前じゃんね。
私の頼みならやってくれるよね?」
と、ほぼ強制的に彼女は笑顔で言う。
実は俺は彼女に逆らえない理由があった。
幼稚園の頃、運動会の準備をしていて足がもつれ込んで、
何故か彼女の上に覆い被さってしまい、
その勢いでファーストキスを奪ってしまったのだった。
当時は事なきを得たが、中学時代からその話を
何かにつけて脅しで使ってくるのだ。
なんなら、俺もそのキスを初恋の人の目の前で
繰り広げてしまったため、
充分、被害者だとは思うが、それは置いといて…
そのため、逆らえず彼女のお願いは聞いている。
そんな彼女のお願いが、多くの人を巻き込んで、
恋の渦になっていくとは誰が思っただろうか。




