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この世界で何を求める  作者: 七支 刀
楠野里高校編

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18/18

楠野里高校:12

 グラウンドで戦ったティラノサウルスを意識して身構えていたので、予想以上の柔らかさに驚いてしまった。昨日はコンクリートを叩いている感覚に比べれば、今のウサギは豆腐レベルで柔らかい。


「まあいいや。何がドロップしたのかな~」


 ウサギからのドロップ品をアイテム欄で確認していると、比奈たちが近づいてきた。


「ど、どうでしたか?」

「柔らかいな。これなら簡単に倒せると思うよ?」


 ソワソワしている前川君の問いかけに良太は正直に答える。前川君や馬場さんは少し緊張がほぐれたようだが、比奈は消滅したウサギの方を見て悲しそうにしていた。


「ウサギさん……、倒すしかないのね」

「弱肉強食だと割り切るんだな。俺達にも余裕はない」

「そうね、分かってるつもりなんだけどね。実感がないのよ」


 比奈の考えも理解できるからこそ、良太は言葉を掛ける事が出来なかった。

 異世界転移した地上だけならまだしも、扉をくぐったこの世界を体験してしまうと、夢心地なのは否定できない。


「それはそうと、さっきのウサギからは何がドロップしたんですか?」

 少し暗い空気になったのを察した馬場さんが助け舟を出してくれた。


「あぁ、肉と毛皮だな。他にも獲れるのかはまだわからないけど」

「肉と皮ですか……。他にも何かドロップする場合もありますし、こればっかりは数を狩るしかないですね」

「そうですね。流石に一匹だとどうしようもないですからね」


 馬場さんの意見に前川君も賛成している。良太としても一匹狩って帰るというわけにはいかないので、ちょうどいい。


「じゃあせっかくだし3人もやってみよう。どうせいつかはやらないといけないし」

 戦闘も覚悟して同行した前川君、馬場さんは頷いたが、比奈は乗り気ではないようで困った顔をしながら良太の武器を眺めている。

「因みに、その武器だから簡単に倒せたとかじゃないの?」

「それもそうか……確かに試しとくべきだよな」


 ステータス画面を開き武器を最初から持っていたロングソードに変更する。背中から重量が消え、大太刀に比べれば驚くほど軽いロングソードを抜く。

(確かにこの剣は不安かも……)

 そこはかとなく不安を感じながらウサギを探すために平原に眼を向ける。


「竹中先輩、あそこにいます」

 静かに、馬場さんが耳打ちしてくれる。その方向を見ると、少し遠くにこちらに顔を向けていない兎がいた。


 確実に仕留められる距離までは音を殺して近づくのが定石だが、先ほどのウサギの察しの悪さを考えてあえて走り抜けて距離を詰める。


 大太刀では重くて走れなかったが、初期装備のロングソードであればある程度のスピードが出せた。草原を駆け一気に間合いに到達する。


(これで気付かないの?)

 予想以上に察しは悪いようで、足音がしているはずなのにこちらに気が付くことは無かった。


「はッ‼」

 上段から振り下ろした太刀筋はそのまま兎を一刀両断する。今回は最後までウサギは良太のことを察知できなかったようだ。


「このウサギはほんとに初心者用ってことかな」

 良太は、一本角ウサギは脅威ではないと断定した。



「このロングソードでも焦らなければ余裕だな。 次誰が行く?」

 大太刀に比べて軽いロングソードの感触を確かめながら3人のところへ戻り、誰から行くか聞いてみると、勢いよく手を挙げたのは前川君だった。

「行きます!」

「よしじゃあやってみよう。1回目は狩れたら戻ってきて」

「分かりました! え~~とウサギは……」

「あそこにいるよ」

 ウサギを探す前川君に比奈が場所を伝えた。前川君も視認し歩いて近づいていく。特に苦戦することなく狩ることが出来たようだ。



「じゃあ次は?」

「私が行きます」

 前川君が戻ってくるのを確認しながら残った二人に話しかけると、馬場さんが手を挙げる。そして、獲物を既に見つけていたようで走り去っていった。


「……やる気満々だな。 まあ怖がって泣き出すよりいいか。」

「馬場さんって意外と武闘派なのね。驚いたわ」


「次、比奈だけどやれるか? 別に絶対やらないといけない訳じゃ…」

「覚悟はできたよ。難しくもないみたいだしね」


「難しくはない。 ……迷わなければな?」

「覚悟は出来てるって言ったでしょ。 それにハプニングがあったら助けてくれるんでしょ」

「まあ・・・全力で」

 2人で話しながら狩りをしている馬場さんを見ていたが、問題なく狩れたようで丁度、前川君が戻ってきた。


「がんばってこい」

「分かってるわよ」

 比奈は笑いながら走り出していった。その背中を見守りながら、いつでもヘルプに行けるように良太は身構える。



(私はどうすればいいの?)

 成田比奈は、草原を走りながら気持ちを整理していた。草原に吹く風は、パンクしそうな頭を冷やしてくれている。


(自分で戦う覚悟はした。 あと私には何か必要?)


 草原の風は比奈を後押しするかのように追い風になる。心地の良い風を感じながらどんどんスピードが上がっていく。

 右手にロングソードを持っているためいつもの走りではないが、それでも加速は止まらない。そのスピードは見守っている良太をも驚かせるほどだった。


(いつもより速いかも…… でももっと速く走りたい!)


 スピードが徐々に上がっていくにつれ、見えている世界がスローになっていく。ロングソードの間合いに入る直前、ウサギは比奈のことを察知し、慌てて逃げようと後ろに飛び退いた。


 比奈にはウサギの行動はスローモーションのように映っている。ウサギが空中で無防備になった瞬間を狙い、ロングソードを突き出した。ウサギはなすすべなく胴体にロングソードを貫通され、そのまま消滅した。


「ハアッ ハアッ フゥー」


 走るのを緩めるにつれ、スローに見えた世界は本来の見え方に変化する。立ち止まった比奈の口元は、“笑っていた”。

ゴールデンウィーク期間の代替として、来週5月11日の投稿をお休みします。

次の投稿は5月18日です。よろしくお願いします。

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