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この世界で何を求める  作者: 七支 刀
楠野里高校編

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13/18

楠野里高校:07

 休憩だと一方的に言い残し“くろこ”は姿を消した。それと同時に10分のタイマーが表示される。体育館は一気に騒々しくなる。


「良太。今の話どう思う?」

 隣に座っている比奈が問いかけてきた。他の部員たちの視線も背中に一身に受けている感覚がする。


「そうだな……、一度死んだら生き返らないってさ、今の時点どれだけの人数が死んでいるかわからないよな。最悪、一つの学校丸ごと壊滅している可能性あるだろ。」


「それは…否定できないけど、流石にそこまで無謀なことはしてないんじゃない?」


 話を聞いていた大河がすかさず反論してくる。確かにまともな判断が出来ていればそうだろう。だが。

「どうだろうな。まともな判断を出来るだけの人間がいればいいけどな。実際、俺たちは人のこと言えないし」


 良太の考えを否定しようとしたした大河も自分たちの行動を振り返り二の句が継げないようだ。


「だろ? だから他の高校の状況がわからないんだよ。一つ疑問なのは、“くろこ”は俺たちが3人で討伐する事を想定していなかったみたいだけど、じゃあ元々、何人想定だったんだろうな?」


 3人で倒したらわざわざ“くろこ”は顔を出してきた。であるならば本来想定されていた参加人数は一体何人だったのか。


「確かにそうだね。3人で倒したのを驚いている風だったし、どんな想定してたんだろう?」


 大河もよくわかっていないようで首を傾げている。そこに後ろで話を聞いていた蓮太郎が割り込んできた。


「多分、10人は最低でも必要じゃないですか? りょうくんが1人でずっとヘイトタンクしてたから戦線を維持できただけで、本来あの仕事は複数人割り当てるべきじゃないですかね?」


「たしかに。良太がいる前提の作戦で俺たちは倒したけどあれが出来る人間がいなければ人数を割くしかないよね。実際戦いやすかったし」


「そんなにすごかったの?見てなかったけど見とくべきだったわね」


 大河と蓮太郎の評価を聞いた比奈が驚いている。他の陸上部の面々も見ていた者もいたのか当時の状況を話していた。それを聞きながら良太は思考に耽っていた。


(まさか……1クラス分、40人とかぶつける計算じゃないだろうな。いや、流石にそれなら俺たちも死んでるか)


 良太は嫌な考えに至り、背筋が寒くなるがその考えを振り払う。


「良太?大丈夫?」

 ふっと顔を上げると大河と比奈が顔を覗き込んでいた。急に黙ったので心配させたようだ。


「ああ……、うちの高校、絶対に外れ値だから他の高校と話しする機会あったら聞いた方がいいだろうな。」


「そうね。どうせうちの高校だけで何とかなるわけじゃないでしょうしね。」


 良太の意見には比奈も同意してくれた。ただ、まだ気掛かりなことはあるようで、「食料ってどうするのよ?この人数食べれるだけの量を用意できるものなの?」 と呟いていた。これには大河や蓮太郎も同意するように話し始める。


「それは気になったよね。だってこの学校に防災用で備蓄されている食料にも限りがあるよ」


「大河先輩の言う通りです。生徒会に調べてもらいましたが、仮に三食食べたとして、全員を補える防災用の備蓄食品は3日が限界です。昨日の夜は倒した恐竜からの肉があったので使っていませんが、今日の朝、昼食では使っていますからね」


 特に蓮太郎がサラッと爆弾発言をした。比奈だけではなく、話を聞いていた部員たちや近くに座っていて聞き耳を立てていた生徒も全員眼を剥いている。


(サラッとここで言うなよ。秘匿情報だろ)


 良太も初めて知った内容であるが、大体予想はしていた。だがここでサラッと言っていい内容ではない事を蓮太郎はあまり認識していなかったようだ。


「蓮太郎、この話は終わりだ。」


 混乱を避けるために話を打ち切る。混乱が広がらないように釘をさす必要があった。


「蓮太郎、大河、後ろで話そう。ついてきて。今の話は混乱の素にしかならないから他言無用で頼む。比奈、ここは任せる」


「え? 何を?」


「当然、この場を」


 比奈にこの場を任せ、蓮太郎と大河を伴って体育館の端の方に移動する。そして不用意に近づいてくる人がいないかを確認しながら会議を始める。


「蓮太郎、さっきの3日って数字は正確なのか?」


「せ、正確だと思う。一緒に計算したから。全員が3食を食べたら絶対に3日で底をつくよ」


 蓮太郎が自分のミスを悟り慌てていたが、しっかりと良太が聞きたいことを答えた。


「大河、この話は知ってるか?」


「もちろん。生徒会長から部活の主将には説明があったはずだよ。調べる依頼したの俺だしね」


 良太はその言葉を聞いて顔に出さず安堵する。


「よかった。蓮太郎、あの場でまだ共有されていないことをサラッと言うな。俺たちが混乱を作り出すのは絶対にダメだろ。」


「ごめんなさい。流石に迂闊だった。休憩で気を抜きすぎたみたい」


「気を付けとけ。食料はあまりにもセンシティブすぎる」


「うん」


 蓮太郎は意気消沈しているようだが、これは仕方がない。次から気を付けてくれればいいと良太は考えてた。


「で、その食料は今誰が管理してるんだ?」


「今は生徒会が管理しているよ。食堂に全部運び込んである」


 良太の疑問は大河が答えてくれる。さらさらと答えが出てくるあたり、恐らく何かしら関与したのだろう。


「ならまだマシか。……ちなみに安定的な食料の確保が出来ると思う?」


「最初は厳しいでしょ。農業するにしても一日で食べられるようになるわけないし、しかも最初は農地作らないと」


 困った顔をしながら大河は答える。実際、すぐにどうにかなるような話ではない。


「そうだよな。森の開墾からだもんな。山の幸でも探した方が見つかるのかな?」


「かもね」


「まあ、休憩後の話がどんなのかによるか。とりあえず生徒会長に蓮太郎がポロったって言っといてほしい。どうせすぐに広がるだろうから」


「分かった。言ってくるよ。暴走する前に対処出来るかもしれないしね」



 大河が生徒会長の方へ行くのを見送り、席へ戻りながら蓮太郎に話しかける。


「蓮太郎、俺たちは反感を持たれる側にいる。必要以上に喧嘩にならないように気を付けような」


「うん。しっかり考えて行動するよ」


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