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エグザート~その遣いなるもの~序説

本作品は学園異能力バトルアクションものです。~その遣いなるもの~編は全て書き終えている為、エピローグまで連日連夜に渡り初回から二十話以上投稿する事になると思われます。投稿は全て午後九時に設定してありますのでどうぞよろしく。

エグザート~その遣いなるもの~


序節


 世の中には曲がり角というものがある。


 この年齢がお肌の曲がり角とか。


 ここから先が何番地何丁目ですよとか。


 此処が我が人生の曲がり角だった(キリッ)とか。


 あ~あそこで止めときゃよかった(泣)とか。


 諸々を総合すると選択肢というやつと言うべきかもしれない。


 そう、たった一度の選択。


 曲がりますか。


 曲がりませんか。


 それだけの事で生き方は変わってしまう。


 左に行こうと右に行こうと変わりはしないなんて嘘だ。


 同じ距離でも一秒か二秒か。


 到達する時間は違う。


 道は必ず同じではない。


「確認しました。間違いなく新人ルーキーです」


『速やかに住所氏名年齢を取得して支部に送ってください。こちらから向かう事になると思うので。それまでは観察に徹するよう。それと出来れば、どのような類の力を持っているのか確認を。本部に照会ショーカイを掛けて記録ログ参照サンショーを要請します』


「はい。分かりました。では、現状待機で観察を続けます」


『頼みましたよ。それと地域一帯に【不破協定キョーテー】違反者が潜り込んだと連絡がありました。くれぐれも“使わず”を守ってください。相手はどうやら結構な大物らしいので』


「了解しました」


『その地域での定期監察カンサツも、もう終わり……怪我の無いよう祈っています』


「ありがとうございます。伊藤さん」


『では』


 通信が切れて。


 特撰(とくせん)のイリジウム端末を外套コートの内部へと押し込む。


 今日も夜空にはオーロラが輝いていた。


 煌々と照らす光の下。


 計画停電の時間となったのか。


 区画毎に街灯の明かりが消えていった。


 午後九時。


 自分のいる最後の一区画から人工の灯火は失せて。


 静寂が夜を渡っていく。


 海も近い地方都市。


 被害も少なかったのだろう長閑な街も今は轟々と唸り逆巻く夜風に吹かれた廃墟に見えて。


 寒々しいばかりだった。


 分厚いはずのいつも余り気味な布地に抱かれながら。


 電波塔に鎮座したまま。


 そっと2km先の公営住宅を見やる。


 災害復興の名目で粗製乱造された箱の群れ。


 その一つには未だ仄暗いモニターの光が薄らとカーテン越しに見えた。


「このご時勢にネットゲーム、か……インドアなのかな?」


 呟いたところで何も分かりはしない。


 ただ薄ら呆けた乳白色の箱の群れは今も確かに人の息遣いに溢れて。


 小さくポツポツと外部電源に切り替えて細々とした営みの光を発していく。


「良い子だったらいいな……」


 小さく呟いて。


 そっと、ゴーグルの暗視モードを広角に切り替える。


 まだ、何も起こっていない。


 まだ、誰とも出会っていない。


 それでもやはり争いはやってくる。


 そんな予感が背筋を満たして、一度だけ大きく息を吐いた。


「“使わず”にいられますように……」


 神頼みだなんて馬鹿馬鹿しい。


 けれど、祈る事くらいはいいだろう。


 それくらいの選択肢はあるはずだと、そう思う。


 例え、結果が同じだろうと一秒か二秒か。


 確かに選び取った道の先には選ばなかった世界とは違う光景がある。


 直進するという手もあるけれど、道が蛇行していないとは限らない。


 いつの間にか曲がった角を振り返れば、辿り着いた場所が同じでも違う景色が見えていると信じたかった。


「使い使われ我ら他が為にならんと欲するならば、その過ぎし道に殉ずるべし………あたしが言っても格好付かないや。あはは……はぁ」


 小さなおにぎりを一口齧って、そっと溜息を吐いた。


 廉売していた山積みの品はいつもと同じ。


 とても不味くて、落ち着く味がした。


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