1話 探偵 案件A 依頼
短編の習作置き場です
リハビリ目的なので、完結するかも不明です。
どうしようもなく暇でこれを読む以外に時間をつぶす方法がないという方がいらっしゃいましたらお目通しください
とある雑居ビルの一室、アンティーク調の家具と壁紙で統一された室内に、男が2人テーブルを挟んで向かい合って座っていた。
入り口側の椅子に腰かける男はスーツ姿に四角メガネ、整髪剤で整えた髪と、外見からしてそこそこの立場の人間であることを示している。
片や窓側に座る男は部屋の雰囲気に合わせるような装いをしており、屋内にも関わらず、茶色のインバネスコートに身を包み、頭にはディアストーカー帽、いわゆる探偵服の装いをしていた。
テーブルにはコーヒーが置かれており、湯気の立ち具合から二人が部屋に入って時間が経っていないことを示していた。
「さて、依頼の件だがね、探偵さん」
コーヒーに口をつけるなく、スーツの男はおもむろに切り出した。
それに対し、探偵の男は優雅にコーヒーに口をつけ、向かい座る男を一瞥する。
「緊急の件だと聞いているが」
「あぁ、国家を揺るがしかねない一大事だ」
「それは大事だ、戦争でも始まるっていうのかい?」
「あながち的を射ていないともいいきれない」
「へぇ、それは一体どういう了見で?」
軽い冗談を真に受けられ、少し目を見開く探偵。だが、面白い話を聞いたといわんばかりに口元に笑みを浮かべ、秘密話をするかのように声を低くしてスーツの男に続きを促す。
「僕が今外務省の欧州局にいることは話しただろう」
「確か、……欧州第一課と言っていたような」
「そう、その中の管轄にフランスがあるんだが、丁度今大統領が来日していてね。君もニュースで見ただろう?」
「知らないね、ニュースは見ない主義なんだ」
「毎回言っているけれど、君は探偵だろう。情報収集の為にも少しは習慣づけたらどうだ」
「余計なお世話だ。不要な情報は入れない、これが自分のスタンスだからね」
スーツの男は嘆息する。知り合ってから数年来、毎度の小言に毎度の回答。
このため息が時事を知ろうとしない探偵に対してモノなのか、それを分かっていながら聞いてしまう自分に対してのものなのか、役人の男にも判別できていなかった。
「まぁいい、結論からいうとだね、これを君に依頼したい」
そう言うとスーツの男は傍らに置いてあった鞄から一枚の書類を取り出し、探偵に見せるようテーブルへ置いた。
探偵の男は期待と共に自身の前に置かれた紙へ目を落とす。その脳裏では様々な可能性が男の中で駆け巡っていた。
実は暗殺計画が動いており、大統領を秘密裏に警護してほしいのかもしれない、テロが予告されておりその阻止に動いてほしいのかもしれない、あるいは既に事件が発生していてその協力依頼なのかもしれない、壮大なスペクタクルを夢見ながら、探偵は書類の見出しを読み上げる。
そこにはいかにも役所然としたフォントでこう記されていた。
「ワクワクッ☆ドキドキッ☆コントレックスの水源地から水をとってきて♡」




