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セイヤの願望

 宿題やそれなりの勉強を終えた後、セイヤはMMORPGゲームをしながら、今日の出来事を思い出していた。机の傍らの聖書をみて、ため息をつく。

「俺は……神なんて信じていない……けれど……」

 親友クレンのあの神秘じみた力をみたのは、転校して間もなくのことだった。通学途中、トラックにひかれそうな少女をたすけ、すぐにそれが“彼女の憑き物”だとさとったクレンは、助けたあと救急車がくるまでに彼女の“憑き物”をはらってみせた。その時、見る事はできなかったが、セイヤは神秘的な力を感じた気がしたのだ。深い霧にみたされ、何か、慈悲深い愛が自分の中にも満ちていくような、そんな感覚を覚えた。それは懐かしい感覚。かつて幼いころ、実はセイヤは幽霊を多くみたが、“奇跡”とやらを信じる両親の狂気を、それよりも怖れていたために、そのことを隠してきた。

「俺は、いつしか自分の能力を隠して、封印した、神がいるならもっと多くの人間が救われているはずだし、けれどあいつは……あいつ自身が“神秘的な何か”だと、俺は思う」

 実際のところクレンから影響を受ける事は多い、落ち込んだ時、何もかもうまくいかないとき、クレンの陽気な感じに助けられたこともある。趣味でこっそりかいている小説のモチーフや、インスピレーションをくれることも。

「だけど……俺は……」

 セイヤの棚には多くのラノベがならぶ。異世界系やらファンタジー系が多い、そしてそうした小説を好むわけが、セイヤの過去にあった。その棚の上に家族写真、だがそのどれもが教会でとられた映像だった。

(両親は神を頼りすぎている、信用できない神を)

 教会での両親は仲睦まじく饒舌だが、家での両親はほとんど会話もしない。両親の出会いが神秘的で特別なものであっても、彼らのいう“神”は、日常を幸福なものにしなかった。そんな彼らの欲する“神”とやらに、セイヤは興味がなかった。セイヤはラノベの主人公のような存在。

“人が困っているときに、真の力を発揮するような存在”

 に憧れた、いまのクレンのように。そして自分も、それにふさわしい存在になりたいという、ある種ファンタジーな願望を抱いていた。だがその時にはすでに遅く、両親の狂気じみた期待によってその能力を完全に封印していた。だから今日の出来事は、特別な意味をもった。

―私ガ、見えるノ?―

 和服の少女が、教室の後ろの出入り口にたっている。セイヤはそれをみて目をこすった。声はでない、なぜならかつての記憶を封じておきたいとおもったから。霊がみえたところで、一体何がかわるだろう。ふと、その霊がなにか、糸のようなもので何かにつながれていることに気づいた。それは箱―奇妙な箱が、ある机の上に置かれていて、そこから幽霊が一本の糸がからみあって、束をつくり、幽霊の下部につながり、そして幽霊の像が形成されているように見えた。

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