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奇襲

 うごめいた人影は、ゆらゆらとこちらに忍び寄る。邪悪な気配を身にまとい、手にしたモノからはさらに邪悪な気、怨霊の気がかんじられていた。その怨霊をまるで制御するかのように両掌で抱え込み、人影は姿をあらわにした。

「なんだ?古いかざり、根付?」

 見たことのない顔つきで、フードをかぶり、短髪。顏上半分はマスクをしている。

「やあ、クレン……」

「誰だ?」

「俺は“ダレス”カルマテイカーの一人だ、といってもまだ、格下だがな……だがお前の兄“デゲス”の信頼は厚い、彼に信頼されて俺は……」

 相手が喋り終えるよりまえに、クレンは突然相手の胸倉をつかんだ。

「今なんていった、今!!!なんて、いった!!!」

「何が??ダレスだ」

「その後だ!!」

「デゲスさんの事か??」

「なんであんたが俺の兄の名前を知っている、あんたは、カルマテイカーだろう!?その悪霊つきの骨董品で、何をするつもりなんだ!」

 一瞬、クレンの動きにとまどったダレスという男だったが、すぐにクレンの手をふりほどくと、叫んだ。

「落ち着け!!何だっていうんだ!!!…………まあいい、今回はある人の依頼を受けるようにたのまれ、お前を襲って今のお前の実力を試してこいと言われたんだ、あんたがあの人をどう思っているか、何をしりたいかんなんて知ったことじゃない」

 そういうと根付に何か、悪い呪文―聞くに堪えないような言葉―を小声でふきかけた。根付から怨霊がとびだしてきた。魔女のように尖った鼻とするどく光る眼。みみまでさけた口が歯ぎしりをして顔だけで2メートルはありそうな巨大なその姿をあらわにした。

「襲え!!ダイモーン・ヘラ!!」

「どいつもこいつも!!」

 クレンは珍しく怒気をこめて言葉を放った。その悪い気は、一瞬敵の怨霊や、ダレスという男自身も気おされるほどだった。だがすぐに気をととのえ、力をためこんだ腹部から、掌に力を集める。

「芸がないな、この前のと同じじゃないか」

「この前?この前っていつだ?」

「あの犬を払ったとき、あるいはお前のおやじが襲われたときさ」

「お前か、全部お前が……」

 気は少し怒りをためこみ、悪い気とはいわないものの、グレーな、少しあやうい感情を含んだまま大きく膨れ上がっていく。

「犬はそうだが……おい、話をきけ……」

 大きくなった気は、やがて瞬間的に圧縮され、クレンの手のひらが光を帯びた。

「なんだそれは……何か、まずい技じゃないのか?いや……先手を打てば……このヘラの呪いはすさまじく早い!!いけ!!ヘラ!」


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