動揺
「チッ、バカな事を」
「お前存在なんだろう?」
「なっ……」
サノンも驚いた。
「!?」
「あの時……以前コンビニの前で戦ったとき、セイヤに取りついたお前の“気”をよんだ」
「バカな、お前そんなに強い“退魔師”だったのか!?」
「薄暗い箱の中に閉じ込められ、意識を失っていたお前は、過去の記憶の中で、怒りとも、愛情とも思える記憶の中をさまよっていた、男に対する未練や、裏切りに対する怒りの中で揺れていた、お前は、悪霊になり切れない悪霊だった」
「黙れ!!私を侮辱するな!!」
悪霊は、自分の顔をかきむしり叫ぶ。縫合された皮膚が破け、中から無数の目玉のようなものが飛び出してきた。そしてその目玉がクレンに訴える。うごめき叫ぶ無数の声となって。
「助けてくれ……」
「この悪霊を殺せ……」
「私たちを開放しろ!!」
「なぜこんな目に」
「すべて、あの仮面の女が悪い!!!」
あまりの異様な光景にクレンは目をそらした。
「くっ」
悪霊は息をすいこんで、叫んだ。
「いいだろう!!そんなに死にたいのなら、殺してやろう!!この死にぞこないが!!!」
「なあ、サノン」
「!?」
クレンは、体中を獣ののような爪でひっかかれながら、サノンによびかけている。だがその口が動いていない事に、サノンは疑問を抱いた。
「あなた、どうやって?」
「“気”だよ」
「……」
「あんたの正直な気持ちを聞きたいんだ」
「正直って、言った通りよ」
「じゃあ、あの仮面の女が、あのままでもいいっていうのか?」
「それは……」
「あんたは、家の寺にわざわざ呪物をとどけにきた、いまの彼女に従いながら疑問を抱いているはずだ」
「でも、どうしようもない、贖罪をしているのだから!」
「本当にそうかな?あんた、自分が犠牲になれば、それで済むと思っているのか?それこそあんたの独りよがりじゃないのか?」
「私は……私は、彼女の恋人をうばっただけじゃない!!」
「??」
「私はね……彼女の大事なものをすべてうばってしまったのよ」
「ほう」
―「初めは軽い気持ちだったの、彼女には何をしても勝てなかったから、嘘を流したの―友人―皆にね、彼女が陰口をいっていたとか、実は裏で私をいじめているとかそういう嘘を、でも最後にはその嘘をばらして、すべてなかったことにしてしまえばいいと思ったのよ―。
「でもそうはならなかった……?」
「皆、嘘を信じた、そうじゃない、皆それが事実であるほうが都合がよかった、つまり、あの時、誰もが彼女の賢さや強さや、スポーツの才能、魅力に嫉妬していた、私は、私はあの時とんでもない“悪魔”を目覚めさせてしまったのよ」




