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057.Gキング

二話完結の一話目です。

 「虐げられたゴブリンを救う王になりたいんです!!!!!!!!」



 《(・・・)》『(・・・)』『・・・』

 

 


■■■■■

 

 

 ここは地球人の転生を担当する異世界転生事務局。私はその転生事務局長で、神である。

 異世界転生事務局は、クライアント(異世界神)のニーズに合う人材(死者)を、異世界へ派遣する財団法神である。 限られた予算をうまく切り盛りしつつ、気持ち良く転生してもらうのが我々の仕事だ。

 


 ある事情から猫の姿をしている。今日は、ヘアレスのミンスキン。短い足と薄い被毛が特徴でいわゆるブサ可愛いと評される見た目をしている。

 隣には一転、フワフワした佇まいで王道のかわいい姿をとった神がいる。助手のケセランパセラン。犬種はビションフリーゼだ。

 

 

 王道のかわいいには誰もが笑顔になると思っていたのだが、今回の人材は違うらしい。ケセランを見る目は嫌悪感にあふれており、むしろブサ要素を持つ私に対しての視線の方が幾分温かい。

 もうひとりこの事務局兼カフェを取り仕切るダークエルフがいるのだが、そちらには目を向けようともしない。

 

 今回の人材は、40歳男性。職業はコンビニ店員だ。勤めていた店舗の経営不振により解雇され、世を儚んで自殺してしまったらしい・・・・・・。

 話を聞いているとどうにもその自尊心に振り回されて生きてきたように思える。

 

 現世の勝ち組と言われる人生のテンプレートがあると信じて疑わず、そのテンプレートと自身のギャップに耐えられず、勝ち組になるべく、大手食品製造メーカーの工場勤務から営業へ異動。営業の後は転職して、同業界の経営企画。その次は食品メーカー向けITベンダ。


 「表向き」はキャリアアップと言っているし、キャリアアップ《そういうこと》にするべく転職先を選び、自分の適性なんかは二の次だったようだ。

 結果、最初は調子よく働けるが、大きな壁にぶつかるたびに辞めてしまうので実質の実績や実力はない。

 ただ額面上の経歴は積み上がっていった。


 幅広く業務を経験したように見える彼は、最終的にその自尊心を満たすことができるコンサルファームへの転職を叶える。だが当然活躍できるほどの実力はなく、それを認めることもできず仕事を抱え込み・・・ついには体を壊してしまった。


 仕事を止め治療に専念するも彼の自尊心はもうズタズタだった。

 少しは体が動くようになった頃、働かず社会においていかれる状況の方が病気よりも耐え難くなり・・・なんとかはじめた仕事がコンビニ店員だった。その最後の仕事すらも失い、彼はついに生きることも辞めてしまった。

 

 

 そんな彼が、治療に専念している間、逃避先に選んだのはWeb小説だ。

 異世界転生でチート特典や現世での知識を元に大逆転、そんな主人公はまさに彼が望む姿だろうと想像しているとどうやら違うらしい。

  

 彼が共感したのはゴブリンだった。

 

 

 

 「僕を見てください。背は低い上に猫背。足は短いし、目つきも悪い。おまけに最近は髪も薄くなって腹も出てる。はは!まるでゴブリンのようでしょう!

 僕はこの人生で思い知らされましたよ。ゴブリンはどこまで行ってもゴブリンだって。

 

 ずっとこのままじゃいけない。ゴブリンのままじゃいけない。努力して這い上がらなければ、他人に勝たなければって思っていきてきました。

 仕事の合間縫って勉強して資格とって。人付き合い苦手だけど営業にだって挑戦したし、転職して転職先で存在感見せようと頑張ったんです!IT未経験だけどいきなり任されたプロジェクトだって必死に回しました!

 いい加減成功したって良かったでしょう!?

 同年代より劣る年収、妻も子もいない。なんで周りに比べて僕はこんなに劣ってるんだ・・・・・・。

 

 小説で見たゴブリンも同じなんです。

 どの小説でも、醜悪で、臭くて、汚くて、弱い存在。必死に強くなろうと頑張っても最後は殺されてしまう。


 なんで猿は人間に進化できて、猿より賢いゴブリンはゴブリンのままなんです?

 冒険者を成長させるためですか?

 他の魔物の餌になるためですか?

 

 なんで神様はわざわざ他に劣る存在を作るんですか!!!!!?????」

 

 

 現世の不満や悩みをひと仕切りぶちまけた後に、出てきたのが冒頭のゴブリン救いたい発言だ。

 

 正直、優れてるとか劣ってるというのは人間の価値観が決めるものだ。

 自然界には弱肉強食という視点が存在するし、種を残せるかどうかは確かに優劣が存在する。

 だがそれだって、生物としての極めて狭い視点だ。

 道端の石に存在価値がないかと問うことは不毛だし、神である私から見れば存在するということが価値だ。


 彼がうまくいかない、劣っていると考えるのは彼がそういう視点を持っているからであり、別の視点から見れば彼は大変優秀ということは当然ある。だが、それを伝えたところで彼の視点はかわらないどころか激昂させてしまうかもしれない。

 

 

 

 《(このままだと望みの特典つけて転生しても、何か障害にぶつかったときに出戻ることになってしまいそうだし、何より彼が幸せだと思えんようではどうやっても幸せにはなれんのだよな・・・・・・うーーーん)》

 

 

 同じ地球出身のダークにちらりと視線を送るが、できるメイドさんもとても困った顔をしている。

 比べるわけではないが、現世では彼女は泥酔してこけて死んでしまった人間である。

 彼以上に後悔も大きかったはずが、転生先では数百年の生をのびのびと生きていた。

 彼には心機一転、新しい視点を持って幸せに生きてほしいのだが。


 どうしたものかと悩んでいると、ケセランが口を開いた。

 

 

 『わかりました。では、ゴブリンに特化したテイマー、ゴブリンテイマーなどはいかがでしょうか?ゴブリンとの主従契約、強化、進化の誘導など、ゴブリン限定ですがテイマーとして破格の性能を持った存在として転生可能です。

 転生する世界は・・・・・・ちょうど獣神が管理する世界があります。

 こちらなら人族同士、人外間どちらの戦争や戦闘が多い世界ですので、あなたの手腕に寄ってはゴブリンが世界の覇権握ることもできるかもしれません。』

 

 

 また、そんな短絡的に勧めるんじゃないと注意しようとしたところで、ケセランが真剣な眼差しでこちらを見ていることに気づく。

 優秀なこいつのことだ。ひょっとしたらケセランなりの何か思惑があるのかもしれない。

 止めたい気持ちをぐっとこらえて、転生の手続きを進めていく・・・・・・。

 

 


 ─────次話に続く。


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