表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/57

010.スライム愛

全二話の一話目です。

記念すべき10話めです。


ちょっと長めです。苦手な恋愛話書いてたら、仕事の説明も相まって、前置きだけで2000文字超えてしまいました。すみません。

あと、一部、医療従事者対する表現ありますが、スルーいただけたらと思います。

筆者は、コロナの中、命をかけて頑張ってらっしゃる医療従事者を尊敬しております。


 「もう細胞(スライム)しか愛さない!!!!!!!!!!」


 《(・・・・・・)》

 

 

■■■■■

 

 

 私は、地球の異世界転生担当職員、一応、神だ。

 異世界転生担当職員とは、クライアント(異世界神)のニーズに合う人材(死者)を、異世界へ派遣する神級派遣事業者だ。

 クライアントからオファーできる異世界転生特典のうち、最低限の特典を人材に渡しつつ、気持ち良く転生してもらうのが私の仕事だ。


 今回の人材は29歳女性、職業は培養士。地球では再生医療の実用化が進んでおり、細胞メンテナンスを行う人材が必要とされている。彼女もまたそんな人材の一人だったようだ。


 死因はーーー医師との不倫の末、発覚を恐れた医師による殺害か・・・命を助ける医療従事者が何やってるんだか。

 正直、不倫とはいえ、恋人に殺された記憶を持って転生とか、不幸ではないだろうか。せっかくの人材が減るのは惜しいが、やんわりと転生のデメリット伝えて、輪廻にお還りいただく方向でいいだろう。


 改めて、今回の死者を見てみよう。ここにくる死者は、生前の想いを投影した姿で現れる。本来魂に形はないのだが、長年肉体に結び付くことで形を得るのだ。

 詳細は割愛するが、人間は、魂と肉体、それを紐づける精神で構成される。主に記憶や感情は精神に保管されているのだが、長年ひっついている魂と精神は癒着が進み、ひっついたまま神界にやってくる。この精神が死人の形を構成しているわけだが――


 失礼だが、控えめに言って怖い。以前、日本で流行したホラー映画の貞〇のようだ。かなり痩せているし、髪もぼさぼさで、血色も悪い。目の下にはくっきりと隈が刻まれている。

 先ほどからこちらの呼びかけには全く答えない。カウンセリングは得意じゃないんだが、まずは正気を取り戻してもらわないといけない。

 

 

 《先ほど、異世界転生事務局員と自己紹介しましたが、一応、私、地球の神なんです。何か思い残していることがあるなら、相談に乗りますから、少し話してみませんか?》

 

 

 「神・・・?」

 

 

 《(反応有りか。)

 はい。神です。何でも、とは言いませんが、力になれると思いますよ?》

 

 

 「私の・・・私の何がいけなかったんでしょうか?」

 

 

 《はい?》

 

 

 「これまで真面目に生きてきました。家があまり裕福じゃなかったから、学校に内緒で中学校からバイトと勉強両立してきました。高校は公立に通い、何とか貯めたお金で医療系の専門学校に通って、臨床検査技師の資格取りました。

 看護師も良かったけど、昔から人が苦手だったから、コツコツ実験できる仕事がいいなと思ったんです。」

 

 

 《(・・・語り始めてしまったが、とにかく話を聞いてみよう)》

 

 

 「検査センターはお給料が安いって聞いてたから、製薬会社に入って実験してました。

 細胞培養チームに配属されて、実験に使う細胞培養してました。


 楽しかったなあ。親にもしっかり仕送りできて、会社の人も優しくて。細胞にスケジュール合わせるから、休日出勤もあったけど、苦じゃなかった。

 あの子達は、本当に繊細で素直なんです。元々はある女性の腸の細胞だったらしいんですけど、ちょっと培地と血清、あ、細胞のご飯なんですけど、ご飯のロットが変わっただけで機嫌悪くなって、実験に使えなかったり。全く同じ手技でお世話してるのに、人によって違いが出たりするんですよ。


 20代の後半になると、他の実験を経験してって上司から言われるようになって。細胞培養が好きだったから、会社辞めることにしたんです。

 命を育む胚培養士もいいなって思ったんですけど、再生医療って言葉に惹かれて、大学院に行って臨床培養士になることにしたんです。我ながらミーハーですよね。でもそれが間違いだった…


 奨学金と貯金使って、臨床培養士の養成コースに入学しました。そこであの人と出会ったんです。一回りも年が離れていたけれど、落ち着いていて、少し陰があって、ふとした笑顔が素敵な人だった。ーーーーーー初恋でした。


 結婚していたことは、知りませんでした。ちょっと変わったとこあったし、この年まで独り身なのは、私に出会う為だったなんて、勝手に想像して自惚れてました。本人から直接話聞けてたら、私も素直に身を引いてたと思うんです。でも、私が知ったのは同級生からの忠告でした。


 しばらくの間、彼にも黙って悩んでたんです。でも食事も睡眠も取れなくなって。気づいたら彼の研究室で、彼に鋏を向けて言ってました。

 <奥さんと別れてくれないなら、あなたを殺して私も死ぬ>って。もちろん本気じゃなかったです。それで彼が私を選んでくれるなんて、本気で思ってたんですよ。頭お花畑ですよね。


 当たり前だけど現実は違ってて。彼、慌てちゃったんでしょうね。近くの花瓶掴んで私にガン!って。意識を失いながら、あ、今日、研究室の細胞の培地交換(清掃と餌やり)の日だなんて思いながら、気を失って。目が覚めたら、ここにいました。」

 

 

 《(ーーーーお、重い。そもそも人の恋愛感情なんてかけらも理解できない・・・)

 そ、それはご愁傷様でし「何であの人だったんですか?」った?》

 

 

 「神様なら、もっと私に良い人紹介できたんじゃないですか?なんで既婚者と出会わせたりしたんですか?

 私頑張ってきましたよね?前世でそんなに悪い人間だったんですか?」

 

 

 《あ、あの、それはですね、私ではなくて運命神の管轄といいますか、、、私はあくまで中間管理職で、えっとまあ神界の潤滑油?的な役割でして、その…》

 

 

 「じゃ、私があの人と出会ったのは、運命神の差配ですか・・・なるべくしてなった運命だと、そう仰りたいわけですね。

 だったらいいです。わかりました。私はもう人間を愛さない。私はもう―――

 もう細胞(スライム)しか愛さない!!!!!!!!!!」

 

 

《(・・・・・・)》

 

 

 何で急にスライムだって思いますよね。ええ、私も思いますよ。確かにスライムは単細胞だし、増殖して増えるイメージですけど、他にも魔物テイミングしたり、植物使役したり色々進めたんですよ?そもそも輪廻して綺麗さっぱり忘れちゃいましょうとも伝えましたよ。


 でも少しでも自分を騙す要素がありそうなものは嫌だ!の一点張りだし。スライムだって感情や意思あると思いますよって、あなただって細胞擬人化してかわいがってたでしょって?って言ったら、神ごときが細胞(スライム)語るなって、逆ギレですよ。

 また同じ間違いしたくないから輪廻も願い下げって言うし。


 運命神の件で、私の信用ガタ落ちで、もう何も話し聞いてくれなくて、結局、細胞(スライム)愛って訳のわからないスキル作ることになってしまった。


ーー要件まとめるか…

・まずは<スライムに愛されること>これは必須だ。


・次に<スライムと意思疎通が図れること>

 これは彼女の性格上入れない方が良い気もするけど、いつか積極的にコミュニケーションとりたくなる日がくるかもしれない。成長したスライムに限定しておこう。


・<スライムを隷属できること>は、裏切り防止の要件として入れておこう。でも、彼女使わなそうだな。


・<スライムを強化・成長促進できること>は、彼女の出戻り(転生後の早死に)防止のために入れておこう。お世話することで、スライムの成長を垣間見ることができれば、彼女の癒しにも繋がるだろう。


・<運命神の加護>は、嫌がるかなあ。でも入れておいてあげたい。


基本パッケージ

L 記憶保持、異世界言語、鑑定《小》、成長補正《小》


細胞(スライム)愛パッケージ(カスタマイズ機能)

L 対スライム好感度《特大》

L 念話《高レベルスライム限定》

L スライム隷属《大》

L スライム強化《大》

L スライム成長促進《大》

L 運命神の加護

 

 

《では、スキル付与と共に異世界に送ります。どうか来世では、心安らかに過ごせますように。(私のせいじゃないけど、大変な思いさせてごめんなさい。私のせいじゃないけど――)》

 

 

「その案外器が小さいとこ、あの人と似てますね(笑)。話せて良かったです。それでは――」

  


――――――――――――次話《異世界編》に続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 心が動かされました。でも中間神のツッコミが面白いので、全然暗い話にならないのが才能だと思います。 [一言] 最後、中間神ちょっと恋しましたね。笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ