現在 その3
テーブルの上には紅茶と美しく繊細な菓子皿にケーキじゃなくて団子が並べられている。
こうやって見ると四角い和菓子系にあう食器とか欲しくなるわね。
「…みたらし?」
「ええ、そうですよ~。とうとう粉を良い感じに粉砕できるようになりまして」
「……串、刺してある?」
「ちゃんと3兄弟ですよ。焦げ目もばっちり、餡のとろり感も最高です。SNSに上げたいくらいの美々しい団子ですわよ」
「食べる……」
よし、勝った!
ふらふらとリリーから離れて、レオン殿下がソファに座るのにあわせて、お絞りを差し出す。
まぁ、浄化魔法の“クリーン”を使えば良いんだけど、こういうのも雰囲気よね。
殿下の顔も温かいおしぼりで、ほっとした感じ。
そのまま目に留まった皿に、ゆったり表情が解けていく。
おぉ~イケメンのやんわり笑顔頂きました。
「…とうとう出来たんだ?」
「はい。納得のもちもち感がやっとですね」
「凄いね。食べて良い?」
こちらを伺って待てをしているレオン殿下の後ろにフサフサしっぽが見える。獅子じゃないな、あれは犬科だわ。
「ええ、どうぞ」
「いただきます」
パチンと手を合わせて、もぐもぐ、もちもち。
そんな音が聞こえてきそう。
味わって食べているんだろうなぁ。
一口かみ締めては、うっとりしてるレオン殿下を見ながら、私も団子に口をつける。
うんうん、これよ、これ。
お互い無心で、三本の団子を食べ終えて紅茶で一息。
ここで緑茶が出てきたら、完璧なんだけどね。
それでもあったかいお茶と甘しょっぱい味は、懐かしさをつれて来る。
「ふぅ……美味しかった。ロゼ、ありがとう。俺、みたらし好きだったから嬉しい」
くっ、普段はきりっとした精悍な顔が、ふにゃっとなるこのギャップ!
破壊力満点の笑顔は、来ると分かっていても防御力突破するのよね。
「喜んでいただけて何よりですわ」
「とうとう団子も完成か~。これで白玉とか作れるね。俺、うるち米が白米ってロゼに教わって初めて知ったよ」
「名前を知っていてもお米の見極めなんて出来ませんけどね」
お米を見つけても、それが一体どういうものか。もち米っぽいのか、インディカ米みたいに炒め物に良い物なのか。何気に食べていたものの凄さを痛感させられながら、粉にしたり炊いたり、まさに試行錯誤したのよね。うちの料理人が!
もちろんお給料に色を付けましたよ?
今では新食材とか見つけると、いかに調理するか燃えるようになってしまったのよね。
「それでもロゼが料理について覚えてくれてたから、そこから色々出来たんだし凄く感謝してるよ。おかげで醤油と味噌が出来た。俺だけじゃ、絶対無理」
「うろ覚えでしたけど、公爵家と王家の錬金術師たちに感謝ですわね。見事に麹を作り出したんですから。その分レオ様は食材を探して来てくださいますし、トマトとコーンを探し出してきた時は、ビックリしましたけどね」
「だって、ジャガイモがあるのに探すでしょう。俺はケチャップと焼きもろこしが必要だったの」
「あーフライドポテトにケチャップはつけたいですよね~」
「そうそう、バジルと塩も良いんだけど、ケチャップつけたくて。マスタードも欲しいんだけどね。『日本』いけたら、調味料買いこんで来るのになぁ」
「ふふふ…確かに。それで?」
「それでって、なに?」
「もう一人の『日本』出身者と何があったんですの?」
「………」
俯いて無言って…。
まぁ、なんて分かりやすく拒否ってるのか。
しかし最近は上手く逃げれてたのに…。
あんなリリーに抱きついて、ストレス発散するくらい荒れるなんてねぇ。
久しぶりに捕まって、我慢が効かなくなったのかしら。
「レオン殿下、教えて下さいませんか?この件に関して互いに情報を共有するべきだと決めましたよね。言いたくないほどの事がございましたの?」
一体、どんなイベントが起きたのよ?
フラグなんて立てられてないし、イベントだって消化されてないし。
『壁ドン』か?『おでこコツン』か?
いやいや、レオン殿下の好感度は最低イってるのに起こるわけないのよ。
「さ………た」
「はい?」
「…だから、……たんだ」
「申し訳ありません、もう少しだけお声を大きくお願いします」
「っ!だからぁ、尻、さわられたの!あの女に!」
「……」
どうしよう、そんなイベント知らないわ…。
作者が下品で申し訳ない…