*キメラ
青年はその才能を活かすべく政府の遺伝子研究の部署に勤める事になった。
A国──正式名称アルカヴァリュシア・ルセタ。ヨーロッパにある小国だ。イタリアを思わせる街並みと森が多く、小国ながらもバイオ技術には優れている国である。
25歳になった青年はある日、上司から呼び出しを受けた。
「……」
青年は気を引き締めてノックする。
「入れ」
中から上司の声が聞こえてドアノブに手をかけた。
「失礼します」
40歳過ぎの男が彼の顔を確認すると、無言で彼に何かを手渡した。
「!」
初めに目に飛び込んできたのは【機密文書】という赤い文字。書類の上にそうスタンプが押されてあった。
「マーク・スチュアート。2日後、その施設に視察に行ってもらう」
「……視察ですか?」
マークはいぶかしげに上司の顔を見つめた。
「キメラが誕生してから年に数回、様子を窺いに施設に赴いているが、新たな視点での意見も聞きたいのでね。君が今回から選ばれた」
「『キメラ』?」
その俗物的な名称にマークは怪訝な表情を浮かべる。上司はマークの持っている書類をあごで示し発した。
「そこに今までの事が書かれている。向かいの部屋で読み覚えろ」
ぶっきらぼうに言われてマークは向かいの部屋に足を向ける。
「!」
中には1人ガードがいて、その横には透明の四角いケースがあった。ガードの男はマークを一瞥し無言で視線を外す。
彼もそれに応えず、こぢんまりと置かれたテーブル席に腰掛けた。




