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後宮の守華  作者: 海莉


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6 華碤宮

案内が中途半端になったせいで私は今、とても困っている。

目の前に本邸みたいな入口があるが本当にここなのだろうか?もしここが、大事なものを置いている所だったりしたら洒落にならない。

やはり、人が出て来るまで待つべきか…


それにしても静かな所だなあ。

後宮って賑やかなイメージがあったが思ったよりおしとやかなところのようだ。

 (私には合わない雰囲気だな。)


 「ちょっと、そこで何をしている!」


 (うわっ、びっくりした〜)


適当な場所で突っ立っているといきなり後ろから叫び声が飛んできた。

あわてて振り返ると、そこには私と同じような身長の幼げな雰囲気を纏った侍女?らしき女性が仁王立ちをしていた。


よかった。やっと人が出てきてくれたようだ。

それにしても、いきなり叫ばれるとはもしかして私怪しまれてるのだろうか?


 「えっと、私は今日からここで働くように言われた桃華といいます。」


一応、自己紹介をしてはみたがあまりピンときてない顔をしている。


 「なんで入ってこないのよ?」


 「どこっから入ればいいかわからなかったもので…すみません。」


あの宦官さえしっかり仕事をしてくれればこんなことにはならなかったのに…おかげで、怪しまれた挙句、少し怒らせてしまったではないか。


 「どこからって、どう見たってここに決まっているでしょう。あなただいぶ変わっているわね。」

 「まあいいわ。とりあえず、入りなさい。瑶華様に挨拶をしてもらうわ。」


いきなり、ご対面か。…お店での接客で慣れているつもりではあったがいつもとは違い少し緊張してきた。


一応、桃華は失礼が無いようもう一度容姿を整えておくことにした。と言っても軽く服を叩いてゴミを払うくらいしかできないのだが。


 「瑶華様、新しい侍女が今参りました。ご拝見いただいてもよろしいでしょうか。」


案内してくれた侍女は礼儀正しく扉の前で許可を待っている。


 「紅杏?いいわよ入って。」


扉の向こうから幼げな返事が返ってきた。年齢が低めなのだろうか、はたまた作っている声なのだろうかなんとも好感をもてる声である。

返事を聞いた侍女は静かに扉を開いた。


その先に待っていたのは、声からは印象がつかないような妖艶な雰囲気を纏った女性が椅子にくつろぎながら座っている。


流石は三夫人の一人というべきだろうか。見た事がないくらいの美人だった。

白ベースでほんのりと赤みがかった髪に優しげな垂れ目、高めの鼻に潤った唇。まさに完璧である。

あの、子珏とかいう宦官といい瑶華様といい後宮というだけあって顔のいい人が多い気がする。

羨ましい限りだ。


 「ほら、早く挨拶しなって。」


おっと、いけない。見惚れていて挨拶を忘れるところだった。

こういうのは第一位印象が大事だ。


 「あ初にお目にかかります。今日からこちらの華碤宮で侍女をする事となりました桃華と申します。若輩者ですがなにとぞ…」


 「子珏が護衛を用意してくれるとは聞いていたけど、まさか女性だったのねぇ。」


…護衛ということは伝えてあるのか。なら最初から侍女ではなく護衛として来たと伝える方が感じが良かっただろうか。


 「確かに私は女ですがそれなりに剣の腕には自信はあります。」


一応自己アピールは大事なので肝心なことは伝えておく。正直ここまで来て、門前払いだけは勘弁して欲しい。

後宮で目的を見つけた今ここを離れるわけにはいかない。もちろん護衛という役目をおろそかにするつもりは無いが最終的な目的は事実を知ることだ。

その先のことは知らない。

今はただ事実さえ知れれば…


 「ふふ、腕を疑っているわけではななくてよ。あなたの腕は子珏から聞いてます。大男を投げ飛ばすくらいの力量があると。」

 「可愛らしい顔をして、大胆なことをしますね。ふふ」


疑われてないなら良かったけど、すごくからかわれている気がする。というか、この感じ多分私が男装で後宮に入ろうとしたことも聞いてるな?

自業自得だができれば話さないでほいかったものだ。


 「ごめんなさい。からかいすぎたわね。」

 「でも護衛といっても出歩く時以外は暇よね?子珏から好きに使っていいと言われているのだけれど、普段は他の侍女と同じように仕事を任せてもいいかしら?」


使っていいって、私は物ではないのだけれど…仕事をくれるのはありがたい。いつもそばで突っ立っているだけだと楽ではあるが流石に居心地が悪くなる。


 「はい。もちろんです。できることはやらさせていただきます。」


 「良かったわ。」

 「今日は疲れたと思うから、明日からお願いできる?」


私としては今日からでもいいのだけど、休みをくれるというのならもらっておこう。


 「はい。お気遣いありがとうございます。」


それにしてもよかった。怖い上司だったらどうしようかと思ったけど、なんとも包容力があるというかなんというか流石は帝を落としただけの器の持ち主である。


桃華は瑶華様との顔合わせを済ました後、侍女が使う部屋へと案内された。てっきり何人かと共同で部屋を使うものだと思っていたが一人一人部屋が用意されているらしい。

他の宮の事はあまり知らないが人数が少ないからだろうか?

来てから気が付いた事だが、ここは最初に通って来たところよりも人通りが少ない気がする。


 「それじゃあ、明日の朝私が迎えに来るから今日は好きに休んでちょうだい!」


ありがたい事にここまでは先ほどの侍女が案内してくれた。


 「はい。ありがとうございます。ええっと…」


そういえば、名前なんだっけ?さっき瑶華様が呼んでいた気がするけど…


 「ああ、そういえば名前まだ言ってなかったわね。私は紅杏よろしくね桃華!」


 「はい、よろしくお願いします紅杏様。」


挨拶を済ますと、紅杏は仕事へと戻っていった。


休めと言われても、やる事ないな…


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