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黒歴史バトル 〜お前なかなかの中二病患者だな〜  作者: 平ミノル


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エピローグ


「晴子!」


リング中央で倒れている晴子を、カイが抱きかかえた。すると晴子はゆっくりと目を開けた。


「良かった……目の輝きが元の晴子に戻ってる」


すると晴子は、それに気付いたかのように自分の頬へ触れた。


「あ……本当だわ……霊が寄ってこない」


晴子は不思議そうに辺りを見回した。


「晴子…‥お前は自由になったんだ。望み通りにね。安倍晴明との霊的なつながりは断たれた」


それを聞いた晴子は、驚いた顔をしながらカイを見た。


「どうして……あなたが、つながりを断ってくれたの?」


カイは頭を掻きながら、横を向いた。


「まあ……結果としてそうなっただけだがな」


晴子の目に、涙が溢れた。


「ああ……うれしい」


晴子はカイに抱きついた。


カイの顔が一瞬で真っ赤になる。


レフェリーがカイの右腕を高く掲げた。


「勝者……黒瀬カイ!」


その瞬間、観客席からブーイングの嵐が巻き起こった。


リング中央でアツアツの二人に向かって、罵声が浴びせられた。


「物を投げないでください! 物を投げないで! あ! 物じゃないものなら投げていいってもんじゃないぞ! おい! 物を投げるな!」


その騒動は、しばらく収まらなかった。





「なんで俺の借金がまだ残ってるんだよ!」


試合後の控室で、カイはベルゼ課長に詰め寄った。


するとベルゼ課長は困ったように笑った。


「だってお前……最後にラブラブで終わるんだもん。悪魔たちは負の感情で生きているって言っただろう。そんな終わり方して……誰が投げ銭を送るってんだ」


「嫉妬の悪魔とか……俺の行動に賛同するやつはいなかったのか!」


「いたにはいたけど、ごく少数さ。何の足しにもならんよ」


カイはため息をついた。


その時、控室の扉が開いた。


「あの……」


入ってきたのは安倍晴明だった。半透明の姿で、腕を組みながらカイを見下ろしている。カイはその姿をチラリと見ると、フイッと横を向いた。


すると晴明が腰に手を当てて抗議してきた。


「なんてことしてくれたんだ……晴子とのつながりを斬っちゃ困るだろ」


それを聞いたカイは、思わずムキになって言い返した。


「何言ってるんだ。そのせいで晴子がどれだけ苦しんでいたか知ってるのか」


「それもこれも……娘を立派な陰陽師に育てようと思ってのことだったのだが」


「それが、大きなお世話だっていってんだよ。それに、おまえと晴子のつながりを斬ったはずだ。どうしてお前がここにいるんだ」


「いや、お前がワシと晴子の繋がりを斬ったから、しかたなくワシはお前に憑りついているわけだが」


「憑りつくな!」


カイがそう言うと、虚空断裂斬の構えを取ろうとした。


「いや待て、斬るな、斬るな!」


晴明は慌てて両手を振った。


「……お前と晴子の婚約を認めてやるから!」


「それはお前の問題じゃない、晴子ちゃんの問題だろ」


晴明はじっとカイを見つめると、やがて小さく息を吐いた。


「そのとおりだカイ……。だが晴子はお前に救われたのだ。お前のことが好きに決まっておるだろう?」


その時、控室の扉がまた開いて、晴子が現れた。そして、ゆっくりとカイの元へと歩いて来る。


「カイさん……」


晴子はチラリと晴明を見た。


「お父さん……まだ成仏してなかったの?」


「ぐはあ!」


晴明が血を吐いた。それを見た晴子は笑った。


「もう、変なことしないでね。今度憑依したら……本当に成仏してもらうから」


すると晴明は、解った、解ったと言って頷いていた。


「それからカイ君……」


今回は私を救ってくれてありがとう……」


「晴子ちゃん……」


二人は見つめ合った。


「私ね……カイ君のことが……」


「せ、せ、晴子……」


その時、ベルゼ課長が二人の間に割り込んだ。


「ちょっと待った!」


「べ、ベルゼ?」


「カイ! 女にうつつを抜かすのはまだ早いぞ! 借金の件はまだ解決していないんだ! お前に貸している投げ銭だが……日本円に換算して二千万円もあるんだぞ」


それを聞いた俺は、顔を青ざめさせた。


「に……二千万? そんなの払えるわけねえ!」


だがベルゼは首を横に振った。


「駄目だ。そんなんじゃ、晴子との交際は認めないぞ」


「ベルゼ! 貴様にそんな権利があるか! 晴明!こいつを焼き払ってくれ!」


「おう、わかったぞ婿殿!」


「やめろっ、やめろ!」


晴明の狐火がベルゼを追いかけ、ベルゼが控室を逃げ回る。


そんな騒動を、桃瀬はくすくすと笑いながら眺めていた。


「最強の黒歴史カップルの誕生ね。……お似合いだわ」


桃瀬はそういうと、寂しそうに笑った。



それから一週間後。


カイの借金問題は、意外な形で解決した。


桃瀬ひかりが借金を肩代わりしたのである。


その資金源は、桃瀬が再度黒歴史バトルに参加して稼いできた。もちろん、優勝である。


ただ今回は、今度は魔法少女プリキララではなく、修羅場マン姿で参加していた。


その圧倒的な羞恥心と投げ銭により、桃瀬は二代目の優勝者となり、膨大な投げ銭を稼いだと言われている。


そしてその投げ銭が、そのままカイの借金返済に充てられたのだ。


「なんで俺の借金をお前が返すんだよ」


「うるさいわね。ちょっと早いけど結婚祝いよ」


桃瀬はそう言いながらウインクを一つ飛ばすと、ツインテールを揺らしながら去っていった。


なお、カイはその後、彼の背後霊と化した安倍晴明の霊による脅迫……もとい、懇願によって、安倍家から全面的なバックアップを受けることとなり、日々、除霊業務にいそしむこととなった。


もちろん、虚空断裂斬・改を使っての除霊だ。


晴子との関係は……婚約者として、清い交際がスタートした。もちろん、安倍晴明の監視がついている。今はこれでも構わないが、もし、新婚初夜に監視しようものなら、その時は間違いなくあの世へ送ってやろうと思っている。


そして、ベルゼ課長は今日も、カイの名前をど忘れしながら、時折、黒歴史バトルの勧誘に訪れてくる。だが、カイに参加の意志はない。もう、あんな命を削る戦いなんかに参加したくはなかった。


「カ、カ……」


「カラノスメラだ」


「カラノスメラ!」


黒歴史は、終わらない。



■END■

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