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part 24

結末


そのあと、舞元は自首をして今は裁判中。

肝心の石上はあの後、すぐ学校を退学し、行方不明になった。

彼は母親に真昼から貰った40万とへそくりの30万計70万と「今までお世話になりました」と紙切れを一枚だけ残して流浪の身になった。行方は誰も知らない。

彼の母親は薄情なもので、追おうとも、探そうともしなかった。

玖音はあずかり知らぬことだが。

しかし、金遣いの荒い母親はその70万には決して手を付けなかった。

一年経とうが、十年経とうが死ぬ時まで使うことは無かった。三途の川に現金は持ち込めないというのに。



 

学校を退学して、あれでも世話になった母親にほとんどの金を置いて、少しのお金で路頭を彷徨った僕は今、漁船に乗っている。

激しい波でロクに睡眠をとることもできない。

向こう半年は陸に戻ることも出来ない。

どうせいいんだ。地に足付けたって哀しいことが思い蘇るだけ。

劣悪な労働環境だが、心がしんどいより身体がしんどい方がずっと良い。

心の問題か、体の問題が、この仕事は普通の人にはきつすぎるのだろう。

陸を上がると半分、また半分といなくなっていく。

大将を除けば、僕が一番の古株とまでなってしまった。

大将もはじめに僕を拾った時にはこんなやつ、使い物にならない。人手不足の中、半年でも使い潰せれば上等だろうと考えていただろう。

それが意外にも、日を重ね、経験を積むごとに他と比べて見劣りしかしない僕が、他のメンバーよりも仕事ができ、最後まで残るとは思わなかったろう。日々の過酷すぎる肉体労働で体も出来上がった。それも、元が貧相な分、漁船仕事専用の肉体だ。

僕はきっとこのまま、ただの一回も弱音を吐くことなく、その生涯を終えるのだろう。

過酷な労働から毎日気絶をするように眠りにつく。

最近、よく見る夢がある。

晴馬との高校時代の思い出、といっても一年半の短い高校生活だったが。

無精ひげをはやし、奴らもびびって手出しできないような強靭な肉体を得た僕と高校の制服に身を包んで変わらない彼。

年月の過ぎたるの残酷さに枕が濡れる。

今の僕こそが夢のあと、自殺するのもしたくてしたわけじゃない晴馬に申し訳ないし、殺したあいつにも申し訳ないから死ねずにいるだけ。

ただ、未だ変わらず正体不明の激情が身にある。

晴馬がいじめの末、死んで奴らを憎んだ激情とも違う。

佐原玖音が許されない方法で僕の心を暴こうとしたときとも違う激情。

「怒っているんだよな」

初めて、この夢で晴馬が話しかけてくれた。

僕は何に怒っているんだろう?

「それは俺にだろ?」

はっと今までの激情の正体が分かって目の前が晴れた。

瞬間、僕の武骨な体は高校生時代の貧相な体に戻り、制服に身を包まれた。

「そうだ。僕はお前に怒っていたんだ。僕は君がいて今までの人生の中じゃ、断然幸せだったのに、お前は勝手に自殺して。同じ心を持ってくれなかったことに怒っていたんだ」

晴馬は言葉にせずとも、僕の心を理解してくれていた。だからこそ、同じ心を持っていると阿呆な考えを持っていたんだ。

「本当にごめん。ゆるしてくれるか?」

目の前の彼は泣いていた。

「許さないけど、許すことは出来ないけど。晴馬が僕の人生にたった一年半の間だけでも光をともしてくれたのは本当だから、後悔はしてないよ」

石上はその翌朝から失語に苦しむことは一生無くなった。


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