↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツヴェルフモーナット (没)  作者: ねこぶた
二章 グラべオン
63/83

作戦実行

 騎士団本部からの帰り道、コレニスが水無月に聞こえないよう日下部に問う。


「どうして水無月を省いたの?」

「まあ僕の魔法は周りに人が多いと扱いにくいっていうのが一番の理由かな。それに、あの騎士といた方が水無月は安全だからね」


 前を進む水無月の背を見る。

 その目が何を思い考えているのか、コレニスにはわからなかった。


「何してんだよ二人とも。早く帰ろうぜ!」


 自分と差が開いていたことに気づいた水無月が振り返り手を振る。


「日下部はなんでそんなに水無月を気にかけているんだい?」

「前にも言っただろ。約束だって」


 納得のいかないコレニスは日下部に聞き返そうとするも、それよりも前に日下部が水無月の方へと歩いて行ったため黙ってそれを追うしかできなかった。


「何話してたんだ?」

「水無月があの騎士と仲良くできるかなって」

「俺をなんだと思ってるんだよ。さすがにそこまで人見知りじゃねえよ」


      ーーーーーーーーーーー


「ただいまー」

「おかえりなさいおにいちゃん」

「ただいまアルマ」


 戸を開け、水無月を出迎えたのは水色の髪を短く切りそろえたアルマだ。

 ここ数年成長期なのか身長も伸び、やせ気味だった体もしっかりとしてきた。

 それでも水無月とは頭一個分程度には身長差があるが。


「おかえりなさい。騎士団で話はまとまりましたか?」


 同じく出迎えるフォクルがアルマの相手をしている水無月を除き、コレニスと日下部の二人に今日のことを聞く。

 その表情からは少しだけ不安を感じ取ることができた。


「今回はちょっと難易度の高い依頼だね」

「そう…ですか」

「そう心配しなくてもいいのに、フォクルは俺っちのことを気にしすぎだよ」

「でも……」


 普段依頼の内容など気にしないコレニスが少し厳しいと言ったことにフォクルの不安は露骨に表情にでてきた。


「コレニスの言うとおりそんなに心配しなくていいんだよフォクル。今回は無理をしない程度に頑張ってねっていう依頼だったからね。ダメそうだったら僕たちはすぐに逃げるよ」

「日下部の言うとおり俺っちたちはいつでも逃げてもいいよって言われてるから、フォクルは俺っちたちの帰りを待っててよ」

「……お二人がそう言うのであれば…」


 一瞬黙り込むフォクルだが、二人の逃げを前提とした話を聞き表情から不安を取り除く。


「今回の依頼そんなに難しいんですか?」


 三人の会話を聞いていたアルマが、心配そうな目で水無月を見る。


「うーーん。まあ大丈夫じゃねえかな。一緒に行動するのはこの世界でも上位に食い込むほどの強者ばっかだからな。アルマはいつも通りうまい飯用意して帰りを待っててよ」


 不安を増幅させないよう水無月は優しくアルマにほほ笑む。

 その笑顔からは不安を一切感じない。

 

「はい!おにいちゃんが無事に帰ってくるのを祈ってます」

「まあいつになるのかも詳しく決まってないんだがな」

「一応一週間後ってことになってるからね。それまでは体のコンディションも整えるためにお店も休業にするから明日はたまった仕事を全部消費できるようがんばろう!」


 自分のうかつな発言から伝染した不安を取り除くように、コレニスが元気よく明日の目標を掲げた。

 その直後、店内にノックオンが響く。


「あいてますよー」

 

 ノックした相手に聞こえるようそれなりの声で応答する。

 そして、戸を開けて入ってきたのは、


「日時が決まりましたのでお伝えしに来ました」


 騎士服に身を包んだ男だった。


「はやいな!」

「日はいまから一週間後、時刻は昼ちょうどとなります」


 水無月の驚嘆の声を無視して、戸を開け一歩だけ踏み込んでいる騎士が淡々と話していく。


「場所は本日お越しいただいた騎士団本部で集合となります」

「それは確定事項だね?」

「はい。団長様が最終的にお決めになりましたので変わることはないかと」

「変わることがあったらその都度教えてね。わざわざここまで来るのは手間だと思うけど」

「いえ。では伝えることは伝えましたので失礼いたします」


 コレニスの質問に無駄なく答え、役目を果たした騎士は丁寧な一礼をして店を出て行った。


「当初の予定からそんなに変わらずって感じだね」

「にしてもはやかったな」

「そうだね」


 颯爽と現れ颯爽と消えていった連絡役の騎士に、各々たいした感想も持たずに見送った。

 

「雰囲気はすごいイケメンって感じだったんだけどな、存在感が薄かったな」

「影の薄さは水無月も同じだと思うけどね」

「なんか言ったか日下部?」

「何も言ってないよ」


 ぼそっとつぶやいた日下部の言葉を水無月は聞き取ることができなかった。


      ーーーーーーーーーーー


「はやいね水無月」


 日が天の頂へと昇るまであと少しという頃、水無月、日下部、コレニスの三人は騎士団本部へと到着していた。


「待ち合わせ場所に指定時間より少し早く来るのは結構普通のことだと思うけどな」

「僕たちも出撃準備はできてはいるんだけどね、ただ……」

「ただ…?」

「うちのお頭がきてないんすよ」


 水無月とテルソリアの会話に割って入ってきたのは、明るい金髪を忍者服からちら見せさせているリヒットだ。

 申し訳なさそうに頭をかいている。


「あんたのところのお頭何やってんだよ」

「寝てるんじゃないっすかね?お頭朝に弱いんで」

「は?」


 朝に弱い。

 確かにそういう人は世の中に多くいる。

 何より水無月もそうなのでそれに関して突っ込みたいことはない。

 突っ込みたいのは別のところ。

 すでに時刻は正午を迎えるというのに何が朝かということだ。


「まじで言ってんのか?今もう朝って言えるような時間じゃねえぞ」

「予定の時刻には間に合うはずっすからそれまでは待っててくださいっす」

「そういうことなら……王城内へ侵入する騎士以外は所定の位置へ向かってくれ。その後合図を出すから見逃さないように」


 信じられないといった顔をする水無月をなだめるように言ったリヒットの発言を聞き、テルソリアが場にいる騎士に指示を出す。

 それを聞いた総勢二百名にも及ぶ騎士たちはそれぞれ自分たちの場所へと移動し始めtた。

 その足並みはそろっており、一種の芸術のように思わせる。

 が、


「じゃあみんなも所定の位置に向かってくださいっす」


 リヒットの指示を聞いた忍たちが、俺どこだったっけ、とか、あっちであってたかな、とか言いながらばらばらに動き始めた。

 そのせいで騎士の整った動きに乱れが生じることとなり、芸術は崩れることとなる。


「なあ、お前らのところには趣を感じたりできるやついないのか?」

「ん?なんかしちゃったっすかね?」

「いや……わからないならいいよ」


 価値観の違いをダイレクトに感じ、ガクッと肩を落としてため息を吐く。

 そこまでしてもなおリヒットは何がダメなのか気づくことはなかった。


「今日はそれ持ってきたんだね団長」

「確かに、愛剣を持ってくるなんて珍しいですね」


 二人から少し離れた場所でリルレットとカルステアの二人がテルソリアが鞘に収めている剣を見ている。


「別に出し惜しみしてるわけじゃないんだけどね」


 そのやり取りは水無月の耳にも届き、落ち込んだ肩を戻し、三人のもとへと近づいた。

 その鞘に納められている剣は刀身は見えず、吸い込まれるような漆黒の柄しか見ることができない。


「それそんなにすごい剣なのか?」


 いつぞやに買った水無月の剣もなかなかの代物だが、その鞘から溢れるオーラはその剣が只者ではないことを感じさせる。

 まあそんなオーラはでていないのだが。

 とりあえず、水無月はそう思い込んでテルソリアへと質問をする。

 が、答えたのはリルレットだった。


「すごいなんてものじゃないよ。これはあの巨大樹から作られたものなんだから」

「巨大樹?」

「そう、巨大樹。あれ?もしかして知らない?」

「聞いたことはある…はず…」


 学校の授業で習ったのだが、水無月はそのことをはっきりと覚えていない。

 頼りない。


「あれだよあれ。…なんだっけ?」


 どうやらこっちの騎士もポンコツだったようだ。


「リルレット、もう少し歴史にも興味を持った方がいいよ」


 すかさず口をはさむカルステアに、リルレットはえへへとすこし恥ずかしながら笑っている。


「確か君は旭昇天から来たんだったね?」

「そうだけど、何か関係あるのか?」

「ここに来るまでにどれほどの時間を要したか覚えているかい?」

「あー、一日もかかんなかったはずだ」


 今思えば国と国の間を経った半日ほどで移動できたのはいくらなんでもはやかったなと水無月は思う。


「実は十年ほど前にはあそこの間に巨大な樹が生えていたんだよ」

「ああそうそう、それが世界樹っていうんだったんだよね」

「リルレットは説明が終わるまで少し黙っておいてくれ」


 カルステアの態度に、むすーと頬を膨らませながら静かにする。


「その樹は不思議でね、大量の魔獣をおびき寄せる特性を持ってたんだよ。そのため君たちが通ってきたあの道は少し前までは通ることさえ難しいほど魔獣がいたんだよ」

「でもそんな樹の痕跡全く見なかったが…」

「ああ、それは…」

「僕が倒したんだよ」


 カルステアがそこまで言って、テルソリアが口をはさんだ。

 その顔は嫌悪感のないドヤ顔である。


「倒したってのは切り倒したってことか?」

「ん?違うよ、殴り倒したんだよ」


 意味不明な発言に、水無月の脳はテルソリアの発言を理解することを拒んだ。

 カルステアもどう説明すればよいのかわからず乾いた笑みをうかべている。


「そしてその樹を加工して作ったのが」


 二人を置いて、テルソリアは自分の剣の柄に手をかけ、引き抜く。

 その刀身は柄と同じく漆黒に染まっていた。

 放心状態の水無月もその刀身を視界にとらえてから吸い込まれるように目を放すことができなくなっている。


「はい終了ー」


 そう言ってテルソリアは剣を柄へと納める。

 それと同時、水無月の意識も刀身から解放された。


「なんていうかあれだな、ザ木刀みたいな感じだな」

「お!よくわかったね。水無月の言うとおりこれ木刀なんだよ」

「やっぱそうだよな。騎士団長様がそんな剣を使ってていいのか?」

「木刀だからって甘く見ちゃだめだよ。傷つけようと思えば簡単に傷つけれるし、殺そうと思えば簡単に殺すこともできる。木刀っていうのはそういうものだよ」

「へー、そんなもんなのか」


 急に真面目な表情になり話始めたテルソリアの圧に、水無月は一歩下がってしまう。


「私そろそろ話してもいい?」


 カルステアに命令されてから一度も口を開かなかったリルレット。

 どうやら我慢の限界のようだ。

 話したくて仕方がなかったのを耐えていたせいか少し頬が紅潮している。


「ラオべインさん来たみたいだけど」


 その言葉に、一同はリルレットが指さす方を見る。

 その先にはリヒットと話すラオべインの姿があった。


「あっ!お頭、向こうがこっちに気づいた見たいっすよ。早く謝ってきてくださいっす」


 気怠そうなラオべインが、寝癖を頭に残したまま四人のもとへと近づいてくる。

 そして、


「すんません、寝坊しました」


 なんのひねりもなく、素直にお謝罪の言葉を述べた。

 

「じゃこっちもそろったんでいつでもオッケーっすよ」

「よっし!それじゃあ行こうか」


 まだ眠たそうにするラオべインのことなど気にせず、リヒットとテルソリアが話を進めていく。


「大丈夫か」

「おぉ、ありがとよ坊主」


━━ああわかった。これ二日酔いだ。めちゃめちゃアルコールの臭いするもん。


「みんなそろってるね」


 その場にいる十人。

 水無月、日下部、コレニス、リヒット、ラオべイン、テルソリア、カルステア、リルレット、プラスで騎士二人のメンバーがいることを確認し、テルソリアが空へと何かを打ち上げた。

 飛んで行ったものはある程度の高さまでいったところで花火のように爆発した。


「さあ行くよ!」


 物語の主人公が似合うテルソリアの言葉によって、グラべオン王城奪還戦の開始の合図がされた。

読んでいただきありがとうございます

感想あればお聞かせください

下にある☆☆☆☆☆評価もお願いします


実際のところ木刀ってどうなんですかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。