翼竜は罠に掛かる
お読み頂き有難う御座います。誤字報告誠に助かっております!
フリックが学校へ行ったようです。何やら騒がしいようですね。
フリックが登校すると、行事予定が張ってある掲示板の周りに人が集っていた。
殆どの生徒がスルーする場所なのに、実に珍しい。
よっぽど大事な掲示がしてあるのだろうか。
そういう物は配布されるのが常なのだが、緊急事態らしい。
「……」
普段なら、午後にでも見に行くところだが何故か尻尾がゾワゾワする。
精一杯背伸びしたが、背の高い生徒が前にいてよく分からない。行儀は悪いがモゾモゾと前へ押し入り、掲示板の前へ躍り出た。
掲示板には、紙が幾つか貼ってあり……最新の物は、昨日の午後。
それには、こう書かれていた。
「大規模な、カンニング……?」
昨日のテストで複数のカンニングが有ったので調査中……。心当たりの有る者は名乗り出よ。
「……どうやって?」
何せ、メメル校は監視システムが目茶苦茶厳しい。
校内で不正が行われていたら、即刻停学退学にさせられた者が居ると入学の時に聞かされた。
そして、テストはテスト用に作られた囲いで覆われた半個室の中だ。
監督の教師も5人付く。監視用の記録道具(鳥型)も天井を常に飛んでいる。
入室時に荷物検査も行われる。
そして、何より。問題となったテストは……特に査定に響かない小テスト。
不正をする意味が、フリックには分からなかった。
「わたくし!?何でわたくしが疑われますの!?」
「いいから来たまえ。君の点数の上がり方は異常だったぞ!!」
「濡れ衣ですわよ!!わたくしだってやれば出来るんですのよ!?お友達に教えて貰ったんですわ!!」
……そして、向こうからとても聞き覚えの有る大声が聞こえる。
「黙りなさい!!さっき落とした君の荷物は何だ!?保護者に連絡するから来なさい!!」
「わたくしは何もしておりませんったら!!」
……シュラヴィが教師に捕まっている。
とうとう何かしたのだろうか。
人混みが邪魔でよく見えない。彼女のキイキイと鳴く声は次第に遠ざかってしまった。
「……あのプライドの高すぎる子が、カンニング……?」
確かにシュラヴィはかなりの馬鹿さ加減……いや、頭は良くないが不正をするようなひねくれた人間、いや翼竜ではない。あのプライドの高さからして有り得ない。
もしかして、脇の甘さと世間知らずさに付け込まれて、誰かに騙されたのだろうか。
上空から、羽ばたきの音が聞こえた気がして、フリックは空を見上げた。
誰もいないのに、ジットリとした視線を感じる。
見知らぬ誰かに見張られていたような、嫌な予感がした。
でも、シュラヴィを救える何の証拠もない。今はどうしようもない。
帰りにジュランの元へ行っても良いか、護衛さんに聞こう。
それに、もうすぐ授業が始まるから教室に戻らねばならない。そう割りきって身を翻すと。
「あっ」
「!!」
誰かにぶつかった。
「すみません、大丈夫ですか?あの、お怪我は」
「……」
どうやら生徒では無いようで、入校許可章を着けた若い派手な装いの女性だった。謝るフリックをキッと睨みつけ、足早に去っていく。
「何処かで……見たような」
此処に通う生徒達よりは歳上で、ミューンよりは歳下のようだ。
……そうだ、ミューン。
「……ミューン様に難癖付けてた人が……スオ様の部下の人。何故、此処に」
嫌な予感しかしない。
あの憎しみを込めた視線は、見下した人を傷付けることを厭わない目だ。
それも、姑息な手段で。
過去に実の両親によく向けられていたから、フリックはよく知っていた。
「シュラヴィ・キャリエルにスオ様……」
ふたりが、危ない。
でも、同時には救えない。
フリックは走り出しそうになりながらも、保健室に駆け込んだ。
「すみません。体調が思わしくないので、家の者を呼んで貰えませんか?」
初めて学校をサボる経験は中々にスリリングで……保健医を騙せる程、顔色を変えられたようだ。
諦めの悪い人々が集まってきてますね。




