ミューンのお勧め
お読み頂き有り難う御座います。誤字報告誠に助かっております!
招かれざる客を追い払った後の三人ですね。
「ホホホ、我が家の廊下の一部はお気に召しまして?少しお狭かったかしら」
「急に案内されたから何かと思ったが……部下が無礼を働き、申し訳無い」
「いいえ閣下。空気を読まない物知らずのワガママ箱入りに乗り込まれて、お気の毒な事ですわ。
それにあんなレベル程度!追い払えない私、ミューン・ドレッダでは有りませんのよ!ホホッ!」
控えめに高笑いするミューンを珍しそうに見たスオリジェは、続けてフリックを見る。
「……フリック。君の番はオレの思っていたのとは……大分、印象が違うようだな」
「あ……ええと。ミューン様は可憐で綺麗ですけど、強かな面も素敵なので……」
「ホホホフリックったら。……あら?閣下……一人称は元々其方ですの?」
耳敏く聞き付けたミューンが首を傾げると、スオリジェは苦笑した。
「かるたの勧めで、吾輩、等と軍人らしく威厳を無理矢理付けたらどうだと。単なる図体がデカイばかりの小僧だったからな。胡散臭い紳士が板に付かず……違和感が未だに有る」
「そ、そうなんですね。でも、スオ様は僕が知る限り一二を争うご立派な紳士ですよ。
……僕、どちらのスオ様の一人称も好きです」
「有り難う。惰性で使ってはいたが……別に偉ぶった所で威厳が備わる訳でも無いからな……今更だが」
何時の間にか、この短時間でスオリジェとフリックが愛称で呼ぶ仲に迄なっている。
ミューンは少し……いや、目茶苦茶気になって突っ込みたかったが、グッと飲み込んだ。
「所で、お掛けになってください。フリックのおもてなしには敵いませんけど私からもお茶を……アルコールの方が宜しいかしら?」
「いや、折角フリックが聞いてくれた後だ。酔いたい気分でもない」
「スオ様……。僕なんかで少しでも気が晴れたなら良かったです」
「じゃあお話致しましょう!さあ!ド派手で盛大に用意致しますわ!!さあ!お菓子を!!」
「はっ!承りましたお嬢様!」
「ええっ!?そ、其処まで派手じゃなくても良いですよ!?」
何となく良い雰囲気がモヤッとしたので、ミューンは侍女に厚待遇のお茶の仕度を用意させ、話に割り込んだ。
そして、スオリジェが少し引きフリックがビビる程のお菓子が積み上げられる。……ちょっと気合いが入りすぎていたようだ。
「……何と言うか、ミューン嬢は……父上似なのだな」
「父を尊敬しておりますの、光栄ですわ。ほらフリック、どんどん食べてね」
「あ、ハイ……」
さっきの自分が出したお菓子と段違いの山を見て、フリックは少し凹んだ。
しかし、競う自体が間違っている事に気付き、ミューンに微笑みかける。
「君達の心遣いに感謝する」
「スオ様……」
「それでですわね!閣下は合成異世界種をご存知?」
また良い雰囲気になったのに我慢出来なかったミューンは、また割り込んで強引な話題転換をしてしまった。
内心ちょっと強引だったかしらと反省するも、彼は気を悪くした様子は無いようで首を傾げている。
「合成……?
キメラ獣人の事か?偶に両親の特性を変わった組み合わせで産まれると聞いたが……。オレの部下にも何名か居るぞ」
「そっちは単なる遺伝ですけれど、人工的に造られた異世界種の話ですわ」
「……異世界種を、人工的に……?」
スオリジェの穏やかだった青い隻眼が、少し鋭さを帯びた。
「18年前に、とある田舎の男爵が起こした事件が有りますの。閣下の異世界種も巻き込まれた可能性が」
「すまんが……それには及ばない」
「……スオ様?」
スオリジェは、淡い青のカップをゆっくりと傾け、芳香を漂わせるコーヒーを飲み込んだ。
「犯罪撲滅に関しては、全面協力する。ただ、かるたに関しては、そっとしておきたい」
「まあ。意外ですわ」
「……ミューン様」
納得が行かず眉根を寄せるミューンの袖を、フリックはそっと引く。
「幸せに暮らしているようなら、オレが出張るべきではない」
「あら。
事情は知りませんけどあんなに懸命にお探しになっていた閣下に隠れてコソコソ暮らしていた異世界種には、呼び出して文句の百や二百を言っていいですわよ。閣下はそのお立場だと思いますわ」
「も、文句を百や二百……」
ミューンが拳を握り力説する様に、フリックは絶句した。
……無駄に力強いその迫力に、スオリジェも気圧されたらしく考え込む。
「ええ、閣下が良い方なのは存じておりますけれど!浮気された相手の幸せを祈った所で腹が立ちますわ!」
「い、いやまあ……、浮気と、そうと決まった訳ではないが」
「いいえ!私の持論ですけれど、どんな浮気でも制裁が必要ですわ!スッキリとしなければ!でなきゃ未来に進めませんもの!!」
「……何と言うか……いや、まあ、そうだな……。スッキリと、か」
「スオ様……」
「少し、そうだな……。文句を、か。……待たされて、すっぽかされた……のだから、言っても構わない……のか」
「その時本気で腹が立たれたなら、色々と合法的にむがっ!」
「みゃっ!スオ様!兎に角、ええと!お話はされた方が心残りは無くなると、ミューン様は仰りたいんですよ!ね?」
「むむ……」
過激発言が出そうなミューンの口を塞ぎ、慌ててフリックはフォローした。
只でさえ異世界種にいい思いを持っていないから何を言うか分からない。
寧ろ、未だ文句なので此でも控えめにされている方だな、とフリックはこっそり嘆息するのだった。
これでもミューンは、スオリジェに対して気を遣って居る方です。




