その姿だとは限らない
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「その異世界種は無事なんでしょうか……」
脱線してきた気がするので、フリックはミューンを伺った。
「ええ、多分ね!!異世界種の死骸は見つかってないもの!」
眩しい笑顔で言う内容ではない。
「外交で締め上げるにも未だちょっと時期尚早なのよね。コンラッドの強権発動出来ないの?」
「宰相職は暴君じゃねーんだよ、ミューンちゃん」
「似たようなもんでしょうが」
ミューンはフリックに見せる笑顔即座に意地悪に歪めてはんっ、と鼻で嗤った。顔が見えない分余計にイラッとしつつも、ジュランは彼女を嗜める。
何せ此処はドレッダ侯爵家内だ。侯爵家狂……いや信者、いや彼らを敬愛する臣下のたんまりいる危険地帯である。
「陰キャに無茶言わないでくれる?」
「アンタら、あれだけはっちゃけといて……陰キャって。陰キャの方々に謝りなさいよ」
「裏稼業の人間が陽キャな訳無いでしょーに」
「それもそうね」
自分で言ったにも関わらず、其処で納得されるのも納得いかないジュランだった。
「ジュラン様が陰キャ?とやらでもわたくし大丈夫ですわ!!」
「あの、陰キャって何ですか?」
「根暗よ」
「控えめな人柄ですー」
「そ、そうですか。それであの、少し気になった事が有るんですが」
「何!?何かしらフリック!」
少々前のめりに聞いてくるミューンに押されながら、先ずフリックは疑問を尋ねた。
「異世界種って、いきなり現れていきなり消えるんですよね?」
「そーだよ。ウチにも居るけどな」
「アンタの所って非常識な部下が多いものね」
「常識外が集まるのがコンセプトなんですー」
「まさかチャミラ様をエストールが誑かすなんて思いもしませんでしたわ……」
「え」
チャミラ、とはユーインの王女の名前ではなかったか。王女が誑かされたとは尋常ではない。
「まーあ、それまだオフレコじゃないの。……どうなってんのよそこの教育。無能ねホホホホホ!」
「確かにねー。ちょーっと放置しすぎたか……シュラヴィ・キャリエル?」
「ひええええごめんなさいまし!!だって、わたくしが知ってる異世界種なんてあの男だけなんですもの!!しかも歳まで食って戻ってくるなんてしぶとすぎですわ!!」
「まあそうなの?ストーカーって嫌ねえ。愛は程よく離れることも必要なのに」
「剣歯虎ちゃんを囲ったミューンちゃんの非常識は違うね」
「ジュラン様あああああ!!」
「う、煩……」
怯えて余計に高音域になった声の喧しさに耳を塞いだフリックは、その発言で自分の考えが当たっていたことに気が付いた。
「姿を消したのは、拐われたんじゃなくて過去か未来に行ったのかもしれません。戻ってきたとしたら20代前後の異世界種を探すよりも……年齢の範囲を広げた方が、良いのかもしれません」
「……成程ー。……賢いね剣歯虎ちゃん」
「そうね。そういや、急に若返ったり歳食ったりする変な生き物だったわ。常識の範囲内で考えてはいけなかったのね……」
異世界種を嫌うミューンは相変わらず酷い言い様である。
「非常識なミューンにそう言われるとはねー。でも、確かに規定概念に囚われていたかもしれないなー」
「アンタも年齢操作出来る非常識じゃないの」
「ううジュラン様に此処まで失礼なのに何故スルーなさるんですのおおお」
「ん、目処が立ったからね。この家物騒だし帰るよ。さっきから壁とかから目線多いし」
「ヒッ!?怖いですわ!!」
「どっちが失礼なのよ」
全く見えないが、この部屋の何処かに潜んでいると言うことだろうか。そう言えば他人の匂いがする。
色々と思うことは湧いて出たが、お金持ちは大変だなあとしてフリックは考えないことにした。
いきなり歳をとって出てきたり若返ったりして帰ってきたら……ビックリですね。




