囲いの中で
お読み頂き有難う御座います。
ジュランがシュラヴィ付きでドレッダ侯爵家にやってきました。
「何ですのこのお部屋は!!」
此処はドレッダ侯爵家。訪問のアポイントメントを取り、ジュランと共に訪れた翼竜シュラヴィは驚愕のあまり、悲鳴をあげた。
「……翼竜ちゃん、言いたいことはよーく分かるが、一応他人様の家で叫ぶな」
「もももも申し訳御座いませんジュラン様!!ですが!!これは無いでしょう!?」
通されたのは……黒い硝子の嵌まった頑丈な鉄製の衝立に囲まれた椅子二脚とお茶の用意されたテーブル。
これに座れと言うことだろうか。
幼馴染みの突飛な行動に振り回されてきたジュランだったが、中々に今回も意味が分からない。異様だ。
そして、ドン引きするジュランと憤慨するシュラヴィに高笑いが降ってきて、その後弱めの挨拶が続く。招待主がフリックを連れて入ってきたらしい。
「ホーッホッホッホ!!我が家へようこそ!!」
「こ、今日は……」
「出ましたわねドレッダ侯爵令嬢!本日はお招き頂き有難う御座いますわ!!」
しかも連れがミューンのノリと若干一緒である。ジュランはこの屋敷に来たことを若干後悔した。
「……えーと、この衝立何かなミューンちゃん。お前のツラなんか見たくねーって言う物理?」
「すみません、あのジュラン様。ミューン様が、その、爬虫類の彼女を見ると鳥肌が立って倒れてしまうらしいので。声だけなら普通にお話出来ると……それで、使用人の皆さんが作ってくださいました」
「わたくしは翼竜なんですってば!!」
心底申し訳なさそうなジュランへの詫びの言葉が、向こう側のフリックから聞こえてくる。
しかし、本当に顔を見たくない(物理)だったとは。彼らの足ぐらいしか見えない。
「いや、分かるけど……俺迄排除対象かー」
「ジュラン様!?まさかわたくしをお見捨てになって衝立の向こうへ!?」
シュラヴィはドン引くジュランの服の裾をがしっと掴んで、涙目になっている。
「いや今更行かないから。取り敢えず落ち着け。そんで、詫びだけど」
「あの、ジュラン様はお気になさらないでください」
「え、じゃあこれからフリック・レストヴァに勉強を頼っても!?」
「……勉強は自力で頑張らないと」
「……くううう!」
「ホホホ!無償でフリックの教えを乞おうなんてね!教室でふたりっきりになるだなんて……許せるもんですか!!ああ、私も学生としてフリックと……」
「話を戻していーかねー?」
ジュランは疲れてきた。ミューンが妄想して憧れる程、学生生活はそんなに楽しくなかったと突っ込むのも放棄する程に。
「今日、詫びに託つけて来たのは多分そっちにバレてると思うけど、ウチのネラとハーマイン家の話な」
「ホホホ!華麗に陸軍将のハーマイン家の後押しもゲット出来たら向かうところ敵なしね!私達の未来は意気揚々で煌々と輝いて全速前進気味だわ!!」
「ひ、人助けは何にせよ良いことですしね」
フリックも何とか軌道修正を図ろうとしてくれているらしい。
「陸軍将はハーマイン家から移ると思うよ、ミューンちゃん。
次男のルベルドはどー見ても軍人向きじゃないもん。内向きと言うか、文官向き。
まー、父親にそー仕向けられたんだろーけど。辛いよなースペア次男は」
「ジュラン様はご立派に裏稼業ネットワークの世帯主ですわ!」
「世帯主って、俺結婚してないから。仕事は生活の糧、その糧を持っていく家庭はプライベート」
「わたくしを!!番に!!なさるって!!」
「あーそれ的な事?目茶苦茶凹んでたのを慰めた時に言ったっけ?」
「まあ、此処でも番詐欺なの。酷い話ね爬虫類の子」
「わたくしは!その先祖筋であり誇り高き翼竜ですってば!!」
「先祖も系統じゃないの!それよりも、それで、異世界種は見付けられたのかしら?」
「魚獣人に捕まってたのが最後っぽいね。フツー、異世界種が出獄して王都来たらお迎え来るじゃん。チョイ強面な職業斡旋の」
「来るわね」
法務大臣の娘であるミューンは普通に頷いたが、若年層ふたりは初聞きらしく驚いた顔をしている。確かにメジャーな情報ではない。
「そ、そんなシステムなんですのね」
「知らなかったです」
「出獄した異世界種限定のシステムだからね。ほら、無意味に放つとまた悪さするかもしれないし。その辺、ガッツリ牢獄の中で聞かされてた筈なんだけど、システム変わったのミューンちゃん?」
ジュランの問いを、ミューンは鼻で嗤った。
「変わる訳無いでしょ。
つまりその異世界種がガッツリ忘れてフラフラ不審者に付いてったのよ。何て無防備なアホなのかしら」
「スオリジェ閣下の恋人だよミューンちゃん」
「煩いわね。誤ったことをしてるのに、立場の云々で文句言われないとでも?」
「そうと決まった訳でも無いのに悪口は駄目ですよ、ミューン様」
「そ、そうね」
「……酷い掌返しですわ。わたくし、番であるジュラン様を貶されて怒り狂って宜しい場面では?」
「面倒だからやめといてね翼竜ちゃん」
「うう……」
ジュランが居ると爬虫類の子は大人しくていいわね、とミューンは自分の事を棚に上げて思った。
「その、それで、その魚獣人は見つかったんでしょうか」
「それがねえ。特殊な一族みたいなの」
「と言うか、5年前に故郷に一族の塊が帰らされたよね。此処暫く見られてないんだよな」
拐ったらしい魚獣人は、この国に居ないらしい。
密入国だろうか。
あまりいい方向ではないようだ。
パッと見つからないようです。




