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初恋を踏みにじられたので、可愛い番を作ります  作者: 宇和マチカ
此れは愛へ繋がる試練

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台座のみの装飾品

お読み頂き有難う御座います。今年はこれで最終更新となります。

「シャーゴン王宮なら、丈夫だから。多少暴れても何とかなる。そう思っているのかもな」


 柔らかな絨毯が敷かれた、応接間のひとつ。

 ユーインは、目の前の剣歯虎の少年と煤色の髪の少女に語り掛けた。

 ひとりは唖然とし、ひとりはガチガチと歯を鳴らして怯えている。


「ででで、殿下におかれましては……ごごご、ご機嫌麗しく有られますよう、僭越ながらももも申し上、げぐえ……」

「お、お久し振りでござ、御座いますユーイン様」


 フリックとロジェルは、緊張MAXで王子の前に預けられたのだ。

 煤色の髪の少女の顔色は真っ青である。初対面なのかもしれない。それならキツイだろうなあ、とフリックは気の毒になった。



 原因は少し前に遡る。

 ユーインに謁見しようとしたが、普通に待てと言われたのでミューンは王宮に与えられた部屋を整理していた。

 因みにお嬢様の上ドジッ子属性も得ているミューンは掃除出来ない。それなのに、フリックに良いところを見せようと無理矢理しようとして箒ごとひっくり返りそうになり、私物を使用人に持って帰るよう指示する係になっている。


「大変だよミューン。矢張、ゴードンが抜け出した。どうやらハーピー族の『御恒例』のようだね」

「乙女の部屋に立ち入るな!!御恒例……って、アレ!?あの、20年前の!?どうでも良いけど、あの年変な事件が起こりすぎじゃない!?」

「知らないよ。当時の私は子供なんだから責任持てないね」


 御恒例とは、何だろうか。


「と言うことは、ハーピーのお嬢さんがたはアレを気に入ったのね……」

「部下からは『お嬢様受けがいいです』とのことだよ」


 フリックはミューンとコンラッドの会話が気になるものの、一心不乱に掃除に励んだ。


「君の婚約者殿は実に勤勉でキレイ好きだね」

「フリックは有能なのよ。私に出来ないことが沢山出来て、素晴らしいんだから!」

「そ、そんな……有難う御座います。僕に出来ることは少ないですが、ミューン様に誉められるのが一番嬉しいです」

「フリック!!自信が付いてきたのね!……きゃわあああ……あ!?」


 頬を染めてはにかむフリックに感動したミューンは、躓きつつ駆け寄ろうとして……転ける前に侍女に救出された。


「ミューン様!」

「……本当に此れで良いのかね、剣歯虎君」

「何見てんのよコンラッド!!」

「そんな事よりも早く来たまえ。『排除プランG』を発動させる時が来たんだから」

「ダサい名前ね。ゴードンを痛め付ける件なら『地獄への超特急プラン割り増し』にしようって言ったじゃない」

「そっちの方が荷物料金みたいで嫌だよ。センスがない」


 そんなに争う程の事でも無いような……とフリックは思ったが、いがみ合いながらもフリックは流れるように部屋から出され、気がつけばミューンと手を繋いで廊下を歩き……。

 同じようにポカンとした顔の、煤色の髪の少女と一緒にユーインの前に取り残されたのだった。


「そう固くなるな。取って喰いはしない」

「あ、はい、分かってますけど……」

「……むむむむ無理。王族の御前なんて、コンラッド様の一夜のお相手より無理」


 何だか聞き棄てならない言葉が聞こえた気がする。横の煤色の髪の少女はガタガタ震えが止まらないようだ。


「それであの、僕は……フリック・レストヴァです。初対面、ですよね?」

「あ、え、あ。は、はい!存じております、ロジェル・ワルトロモで御座います!レストヴァ子爵令息様!!」


 初めて言われた呼称に、フリックは驚いて瞬きした。


「ええと……ワルトロモ嬢、初めまして」

「はいっ」

「彼女もメメル校の生徒だそうだな」


 ユーインがロジェルに話しかけようとして、肩からずり落ちてきたショールを掛けなおす。

 その時、フリックの耳にカシャンと金属音が届いた。

 何か装飾品が落ちたらしい。


「あ、ユーイン様、僕が」

「すまんな」


 フリックが床を滑った物を拾おうと、音のした方角へと屈む。

 まもなく見付け、その指に触れたのは金を豪勢にたっぷり使ったブローチだった。

 だが、その豪華な台座は凹んだままである。嵌めてあった石が外れて落ちたのだろうか。


「あれ?石が……?」


 だが、落下音は金属の音のみだった筈。首を傾げるフリックの困惑を察したらしい。ユーインは首を振った。


「……ああ、それは。元から空だ。……ふたりの女に、与えたものだ」

「ええと、ふたりの、女性ですか?……あ、まさか、プリシテ嬢とマ……い、いえ!」


 ロジェルはチャコールグレーの瞳を見開いて言葉を溢し、かと思うと口を物凄い勢いで叩いた。その様子にフリックはギョッとする。


「だ、大丈夫ですか?」

「も、申し訳御座いません!とんだ不敬を!!どうか殿下、お沙汰は私のみに!家族には!!」

「いや、そうではない。君は悪くない」


 平伏してしまった少女に顔を上げるようユーインは言った。

 そして、ユーインは緩く首を振って少女に微笑む。


「構わない。女生徒の方が案外細かく知っているのかもな。プリシテ・ライバーとマリエット・ヤシエ。

 それが私が直接傷付けた女性達だ」

よきお年をお送りくださいませ。

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登場人物紹介
キャラクターが多くなって来たので、確認にどうぞ。
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