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初恋を踏みにじられたので、可愛い番を作ります  作者: 宇和マチカ
後継者の選択

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傷付いた遺跡にて

お読み頂き有り難う御座います。フリック目線でお送り致します。

「頑ななユーイン様は、メメル校に通い成績優秀な君なら何かリアクションを返すかもしれない。

 まずは、人と積極的に関わろうとしない彼と話をする糸口を見つけてくれたまえ」

「フリックに任せるですって!?怠慢よコンラッド!」


 そう、コンラッドは言う。ミューンは彼をかなり罵っていたが、フリックがやると返事をすると、躊躇いながらも任せていいのかと聞いてきた。


「王太子やゴードンよりは穏やかだけど……。何か有ったら手を振ってね!!安全な狙撃をさせるから!!」

「そ、狙撃はダメですからね!!」

「フリックの安全が一番なのよ」


 どうもミューンは少し過激だなと微笑ましかったが、横のシュラヴィはドン引きしていた。

 そんな彼女は別任務を言いつけられていたようだ。失敗しないと良いのだが。



 フリックと姉のお世話になっていた修道院より少し奥に分け入ると、遺跡が有る。

 シャーゴンが成り立つよりももっと、昔。千年位前の遺跡らしい。其処に、ユーイン王子は朝から晩まで居るそうだ。


 其処には、古生獣人が溢れ恐竜の獣人も居たそうだ。

 以前読んだ新聞には、『ジダイコーショードーナッテンダマゼンナ』と書かれた粘土板が見つかったそうだと書いてあった。

 何故かそれだけは、発掘調査に関わっていた異世界種の男性が読み解けたらしい。

 博学で凄いなあとは思ったが、考古学に興味のないフリックの感想はそれだけであった。


 勿論、その場には発掘調査に王族が関わっている事もあり、立ち入ったこともない。

 だが、そういう所に子供達は興味を持つものだ。

 修道女アルベリーヌは子供達に言って聞かせていた。


「遺跡は、過去に有った余所のお家なのです。第二王子子ユーイン殿下が其処で探しものをしている最中なので近寄らないように」

「なんでー?」

「おうじさま、よそんちはいっていーのー?」

「ぼくも入りたい。ずるーい」

「ユーイン殿下は許可をもぎ取っているので、余所のお家にも入れるのです。約束が無いお家を訪ねたら嫌がられるのですよ。愛し子達は、他人が勝手にお部屋に入っても良いのですか?」

「やだー」

「お人形パクられちゃうかも?やだー」

「どしたらきょか?もらえるのー?」

「どうしても入りたければ、お勉強しなさい」


 昔聞いた子供達とのやりとりを思い出す。フリックが第二王子について知っているのはそれぐらいだった。

 まさか、それから五年程経って、拝謁することになるなんて夢にも思わない。

 しかも、自分の婚約宣誓書の保証人欄に署名をしてくれたのが彼の人だなんて。そして、まさか面と向かって話をすることになるなんて。

 引き受けたは良いものの、フリックはその晩何度も寝返りを打った。


「悩んでいますね、フリック」


 次の日。通りがかったついでに、修道院に挨拶したフリックの顔色は自分では分からなかったが悪かったらしい。アルベリーヌに指摘され、フリックは事情を話した。


「……成程。……ユーイン殿下の治世の方が良いのでしょうね。ですが、あの方はゴードン殿下とは違う意味で面倒です……」


 そして、アルベリーヌはフリックの手に小さな筒を渡してくれた。



そして、多分ひとりなのが良かったのだろう。ユーインは直ぐに見つかった。


「剣歯虎の子爵家の子供。ミューン侯爵令嬢に弄ばれ中の哀れな仔虎。一体何をしに来た?」

「畏れながら殿下、僕は弄ばれてなんていません」


 フリックが近寄ると、半分壊れた壁を眺めていた男は直ぐに振り返った。猫背ながらも、フリックよりも随分と背が高い。

 赤褐色の髪は伸び放題でぞんざいに縛られており、顔には無精髭が目立つ。

 フリックの姿を認めた青い目は、暗く濁っていた。


「ユーイン様、初めまして。僕は、フリック・レストヴァと申します」


 威圧的な視線に、フリックの体は震えた。


「初めまして、仔虎。私も、勝手にのぼせ上がられた女に弄ばれたことがあるのだから分かる」

「……」


 こんな凝り固まっている人と、一体どんな会話をすれば良いのだろうか。ミューンとの仲をシュラヴィに貶されたが、段違いのプレッシャーを感じる。

 自分とミューンは違う、と主張したいところだが、フリックは黙った。


「大体何を言いに来たかは分かる。仕事は兄上がすればいい。子供は弟が作ればいい」

「……あの、殿下。少し、少し落ち着かれませんか?」


 アルベリーヌが渡してくれたのは、樹液入りのレモネード入りの水筒と、カップがふたつだった。

 カップひとつに水筒を傾けると、少しくすんだレモン色がコポコポと音を立てて満ちていく。辺りにふわりと甘酸っぱい香りが漂った。


「あの、毒は、入っていません」


 恐る恐るフリックが渡そうとしたカップをじっと眺めていたユーインは、躊躇いつつも受け取ってくれた。


「……突飛な仔虎だ」


 案外、呆気なくユーインはカップに口を付けてくれた。

これで、意志疎通を図れるのだろうか。

傷付いた遺跡と呼ばれるその地で、ふたりは暫くレモネードを啜ることになった。



ユーインはまだ話が通じるタイプのようですね。

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登場人物紹介
キャラクターが多くなって来たので、確認にどうぞ。
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