表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋を踏みにじられたので、可愛い番を作ります  作者: 宇和マチカ
後継者の選択

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/164

親子喧嘩は内でお願いします

お読み頂き有り難う御座います。

誤字報告を本当に有り難う御座います。

王妃様の愚痴は続きますね。

「…………水槽の、維持を」

「は?」


 たっぷりと時間を掛けて重い口を開いた王妃の言葉に、ミューンは淑女っぽいコメントを忘れ、疑問のままに首を傾げた。


「流木を拾ってきたりして、水槽に水草のジャングルを作るそうよ……。メンテナンスに水草集めに……嬉々としているわ」


 ミューンはコメントする気を失った。


 妻を放って王太子は何をやっているのだろう。

 王太子妃の居室は、壁のように大きくて透明な硝子の囲いを嵌めて沢山の海水を詰めた、水圧が掛かっても破れない特別製の水槽らしい。

 ミューンは興味が湧かなかったので行っていないが、何と御披露目会まで開かれたそうだ。


 因みに、そのプレゼントを受けとる王太子妃をお迎えして何日か経つまでは、迷惑な程にラブラブオーラ全開だったらしい。

 関係ないミューンが前に通りかかった時は、遠くからでもその張り付きあう姿が見て取れた事も有った。結構前だが、あの即席バカップル加減は無駄に記憶に残っている。


「……ユーイン様といい、王子様のご趣味は高尚ですわねー」


 心にも無いコメントを漸く返し、ミューンは死んだ目を王妃から逸らした。

 それにしても、嫁との仲を拗らしているのは有名だが、まさか水槽作成にハマっていたとは……斜め上で恐れ入る。

 王太子はその立派な水槽部屋に戻っても、水草ジャングルとやらを拵えるのに夢中で、水槽の美しさのみを堪能してるのだろうか。まさか妻は背景の魚扱いだろうか。

 妃は観賞用の派手な魚じゃないのよ。全く、水槽が割れてメンテ中の王太子が水没すればいいのに、関わりたくないわー!とミューンは思った。


「ミューン、貴女のその、明るい性格はとても素晴らしいと思うわ。オーレリ様にちょっとこう、会話で良い影響が有るかも」


 だが、益々興味を無くしていくミューンの目に、王妃は食い下がる。


「何度かお目通りしただけの私なんて覚えていらっしゃらないと思いますし、同年代の……深海語学を修めたお嬢さんなんかが良いのでは?

 メメル校にお問い合わせになるとかどうでしょう」


 ミューンは、王太子妃を気の毒だとは思ってはいる。しかし、物事には限度があるのだ。言語体系が違う時点で、腹を割った話し合いはほぼ不可能である。


 しかも、シャーゴン王宮に勤務する通訳は、壮年の男性オンリーだ。

 離婚の危機に瀕した状況で胸の内を、オッサンの通訳を介して、初対面の夫側の人間(別に味方ではないが相手からはそう見えるだろう)に話せ、等と罰ゲームでしかないだろう。

 ミューンが同じ立場なら、即、家に連絡して帰っている。ザブジャブジャブーンにどうやって連絡手段を取ったら良いかは不明だが。


 しかも、下手したらミューンが王太子の愛人疑惑を掛けられるかもしれない。幾ら王妃に世話になっていようと、そんな見え見えの地雷源に飛び込もうとはとても思えなかった。


「通訳を帰してからなのよね、不仲になったのは。まさかあの通訳がデクスターに迫ったのかしら……」


 ゴシップとしては気になるが、ミューンが発する関わりたくないオーラを半ば無視して強引に王妃は語った。

 最早、手段を選ばない程お疲れのようだ。


「エラからの空気の音も混ぜてとか言われても、エラが無いのよどうしろって言うの、って言っちゃう程深海語学と相性悪いんですのよね」


 ミューンは重ねて断った。

 私が末の息子のやらかした事を相談をしに来てるのに、何で上の息子の嫁のメンタルケアを承らなきゃなんないのよ。

 せめてゴードンを始末してから通訳を手配して、有償依頼して欲しいわ。引き受けるとは限らないけど。

 王妃様も良い方なんだけど、息子の後始末にお疲れなのね。でも、やっぱり王太子は見捨てるって決めた!と決意する。


「やはり部外者がしゃしゃり出るよりも、夫婦の語らいが先かと思われますわ」


 心の内を覆い隠し、ミューンは更に断った。


「そう、そうよね……」


 そんなに絶望に満ちた表情をされても困る。

 すると、控えめなノックの音が響いた。

 これ幸いとミューンは立ち上がり、暇乞いに入る。

 結局ゴードンの件は何の解決にもならなかった。しかし、此処で食い下がって逆に更なる火種を背負い込まされては元も子もない。


「お時間を有り難う御座いました、王妃様」

「あ、ええ……。」


 そそくさとミューンが立ち上がると、何と入ってきたのは王太子だった。


「母上!ゴゴゴ海岸でピンクのシーラカンスが地引き網に引っ掛かったとか!

 オーレリと泳がせたらきっと華やかで目出度い色合いにになるに違いない。ちょっと、買い付けに行って参ります!」

「デクスター!!おまえ、お前はあっ!!とうとう、妻を観賞魚扱いなのーーー!?」

「お、王妃様ーーーー!!」


 ドシンバタンと言う音が凄く気になるが、早期撤退に限るようだ。

 親子喧嘩に巻き込まれる前に、ミューンは退散することにした。

長男は嫁そっちのけでアクアリウム作成ドハマり中、次男は遺跡マニアで碌に帰ってこない、末っ子は恋に生きて女を泣かしまくる…な感じの、何処にでも有りそうなご家庭です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介
キャラクターが多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ