マーメイドの為に
マーメイドの為に
「じゃあ、また大阪に帰ったら電話する。おやすみ。」
彼女は言葉通りに大阪に着いた日の夜に電話をくれた。
江ノ島が楽しかっただの買い物で何を買っただの たわいもない会話を楽しんで臆病な祐介は最後に気持ち変わってない?なんて美香に確認をしてしまった。
「うん、うちの気持ち変わってへんよ。早くまた会いたい…」
その言葉に祐介は幾分か安心して受話器を置いた。
「うちも裕介さんの事、好きになってもいい?」あの日の光景とか初めて彼女に会った日の事、水族館、隅田川、わんわん泣いた顔、数えるほどしかない思い出全てが鮮明に蘇る。
今まで芽生えそうになった恋心は徹底してその芽を摘み取ってきたのに美香の事だけはそんな風に心を殺せなかった。
僕はマーメイドの為にこれから何が出来るだろう?
僕はマーメイドの為にどんな男にならなくてはいけないんだろう?
あなたには僕の悲しみや今まで辛かった事を知って慰めて欲しいなんて思わない。なぜなら僕が彼女の悲しみや辛かった事を慰めてあげたいのだから。
もっとバイトを頑張ってお金を貯めて兄貴の車を借りなくてもいいようにしたい。早く自立して実家の事を話さなくてもいいところまでたどり着きたい。
祐介の想いや時間、存在価値すらも 全てが人魚姫の為に捧げられようとしていた。
マーメイド…あなたが泡になって消えてしまわないように僕はその全てを捧げます。




