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はちみつレモンです。夢で見た設定を元に作ったこの作品ですが、無事完結できるか……。あらすじにも書きましたが、こちらBL作品ではないので、ご注意を。楽しんでくれると幸いです。


「まあ、あのお二人って......」

「あら、()()?」

「いけませんわ。あのお二人は()()()()()()ではないのよ。」


何やら中庭を見ながらざわめきを起こしている女子生徒たちをふと見た私は、彼女達の視線の先を思わず見た。一体何をみたらあんなに頬をバラ色に染めるのかしら?


会話から推測するに、身分差のある男女の密会でも見たのかしらね。

学園ド新人の私は、慣れない先輩たちの姿の間をかき分けながら、何とか歩みを進めた。ちなみにチビだからか肘で頭をどつかれたりした。痛い。



「す、すいませーん。通りますよー。」



いててて、と言いながらようやく最前列へ出ると、しばらく向こうに男子生徒2人がいた。ええと.........あれは...。



「.........わあ。まって、推しカプが存在してるわ。」



えっ、ええええ!?推しカプ、何で存在してるの!?だって2人は...って、あれ。私、どうして見た事もない景色が頭に浮かぶのかしら?


小さな箱のような部屋......ああ、「りびんぐ」だったわね。そう、その「りびんぐ」で私はずっと「乙女げえむ」をやっていたんだっけ。お父さんとお母さんと、それに弟。狂ったように映像を凝視する私を笑いながら叱ってくれた家族が、私にはいたんだわ。


そうだった、そうだった。と一人で頷いてしばらく。いや、どう考えてもおかしいわよ!、と一人でツッコミを入れた。久しぶりにノリツッコミをした。ここにはそういう「お笑い」みたいなものが存在しないから.....これは、私にしか出来ないのよね。


という感じで混乱を極めた私は、頭を抱える。


「これは.........現実?そうよね、現実だわ。だって今までフレアとして生きてきた記憶だってちゃんとあるもの。私はちゃんとフレアという自覚があるし...原因は、この別世界の記憶よね。」

「......ちょっと、そこの貴女。先程から一人でぶつぶつと何を喋っていらっしゃるのかしら?目障りだわ。」

「あ、すみません。」


突然ですが、皆さんに解説しましょう。今私の住むこのリヴィエール王国は、上下関係が絶対の身分至上主義国家なの。要は、どんな難癖だって立場が上の人には言い返せないのよ。今まではそれが当たり前だと思って生きてきたけど......「二ホン」の記憶がある今の私にとっては、少し不自然に思えるわね。


見たところ、伯爵かあるいはそれ以上の貴族だろう。一言だって反論してしまったら私の家が潰されてしまう。お父様もお母様も路頭に迷ってしまうわ!・・・だから私には、大人しく謝るという選択肢しかないのだ。正直内心では独り言くらいで、と不満だけど。


「本当に教養が無い方って嫌だわ。折角気分が良かったのに、貴女のおかげで台無しじゃない。」

「.....申し訳ございません。私は身分に相応しくこの場から下がらせて頂きます。」

「そう。いくら頭が足りていなくても、それくらいは分かるのね。」

「それでは失礼します。」


もう、ほんっとうに嫌な良い方よね。要は、"うざったいからどこか行って"ということを言いたかったのよ。目障りなら目障りだとはっきり言ってくれれば私だってすぐ立ち去るわよ。それをこんな嫌味をきちんと租借した上でいなくならないといけないなんて.....身分社会ってとことん合わないわ。


「二ホン」の記憶が戻る前から、私はこの身分社会にうんざりしていた。小さい頃からお友達を作ることが目的のお茶会に何度も参加したけど、誰もかれも話はつまらないし、同じ年ごろなのに面倒なくらい気を遣わなきゃいけない。こんなの私の求める"友達"じゃない!とお父様に反抗したんだっけ。


それからあまりお茶会には参加しなくなった。思えば「二ホン」の記憶がうっすらこの頃からあったのだろう。下っ端とはいえ、子爵家はしっかり名簿登録されている貴族。その一人娘が領地を走り回り、木登りをしていたなんて、両親が優しくなかったら修道院送りにされていたかもしれない。


「...懐かしいわね。」


私、結構やんちゃしてたわー、という両親にかけた迷惑を全く省みない感想を漏らしながら女子寮に戻ると、やけに冷静になった。


さっきまでは、え、私頭おかしくなった?みたいな感じで若干困惑気味だった。でも、思い返せばだいぶ昔から怪しい匂いがプンプンしていたんじゃない。ともかく、ふふ......私には前世があるのだ、みたいな痛い奴にならなくて良かったわ!


「お嬢様、お帰りなさいませ。」

「もう、私の侍女ならすぐ愛に来てくれるものじゃないの?私しばらくここで待ってたんだけど。」

「か、か.........。」

「かか?」

「いえ。お嬢様のお顔をみて、カカオが切れそうだと言う事を思い出しまして。」

「カカオ?もしかしてヴィラ、私のためにチョコレートでも作ってくれたの?」


ねえ、どうなのよ?ほら素直になりなさいって。


薄桃色の髪の毛を揺らしながらはにかむフレアの何と愛らしい事。フレアの千辱侍女のヴィラは、実は屋敷の全侍女の中から選ばれたエリートである。掃除洗濯の家事は勿論のこと、マナーや教養、暗殺術まで彼女の出来る事は多岐にわたる。


仕える相手よりも万能じゃないの、と思わずツッコミを入れたくなるほどの実力だが、ヴィラは主人であるフレアをこよなく愛している。世界中の誰よりも愛している。だから基本的に主人が悲しむようなことはしないし、主人のためなら実力もセーブする。


さっきも主人が寮に戻って来た瞬間気配を察知していたが、ヴィラは主人に怒られたかった。フレアは怒るとき、その薄桃色の髪を揺らす。怒りから頬にも桃色が差すのだが、怒られている側は怒られているというより誘惑されているとしか感じない。


という感じでヴィラはフレア馬鹿なのだ。可愛すぎる、という言葉を最初の一文字で我慢できたのを屋敷の皆が見たら、栄誉賞をくれるだろう。


「ねえ、それで?どうなのよ。チョコレート、あるんでしょ?」

「くっ......。はい、ございます。」

「何でそんな悔しそうなの。」

「いえ、そういう訳では。」


ただ単に可愛いという言葉を抑えるのに眉間にしわが寄っただけです。とは言えないヴィラだった。


「でさ、ヴィラ。」

「はい。」

「今日、私凄いもの見ちゃったの。」

「すごいもの、ですか?」

「うん。聞いて驚くわよ?」

「ああ、ルイ公爵子息様とヴァンス第二王子殿下ですか?」

「えっ、私まだ何も言ってないわよね!?どうしてわかったの!?」

「それは、私が......情報通だからです。」


私が、お嬢様のことを大好きだからです。とも言えないヴィラだった。


「ヴィラ、ここはお屋敷でもないのに知り合いがいるの?」

「はい、私はここの卒業生ですので。」

「そうだったの?私、初耳だわ。どうして入学する前に教えてくれなかったのよ。」

「特にお嬢様は関心が無さそうでしたので。」

「.....私、ヴィラの事はなんでも知りたいわよ。小さい頃から一緒にいてくれるお姉ちゃんみたいに思ってるんだから。」

「ぐっ、お嬢様私に恨みでもあるのですか?」

「え、今お姉ちゃんみたいに思ってるって言ったわよね?」


話聞いてた?と思わず言ってしまう。そこから話に花が咲いて、ルイ様とヴァンス様のお姿が尊くてキラキラでピカピカで......という話を永遠とした。ヴィラは私が話すのを聞いてはいいタイミングで頷きと相槌をくれた。やっぱりヴィラは何だかだ有能なのよね。


「……私、お二人が大好きなの。ああ、勿論恋愛的な意味ではないわよ?」

「そうでしたか。では()()は必要ありませんね。」


そう言ってヴィラは突然現れた小型ナイフを内ポケットにしまった。


「……ヴィラって侍女よね。」

「?はい。お嬢様専属の侍女でございます。」


侍女がナイフを携帯してるなんて聞いたことないけどね。まあ、侍女には侍女にしかわかり得ない事情があるかもしれないし。


「それでお嬢様、お二人のことが大好きだというのは?今までもお二人は度々話題になっていましたが、お嬢様は気にもされていません。怪しいです。」

「うーん、何というか、道端の原石を見落としてた、って感じかしら。それを宝石と認識できてなかったの。」

「随分と詩的な……お嬢様にそんな感性があった事に驚きです。」

「それって私にセンスないって言ってる?」


まったく私の侍女というのはこんな感じで私のことを貶すのよ。一応、私も貴族なんだけど?確かにうちの領は身分差で言いたいことが言えないような領ではないけど。


「まあ良いわ。それでね、私思ったのよ。お二人を影から支えたいなって。大事に思う人には幸せでいて欲しいでしょう?」

「なるほど。一つお聞きしても良いですか?」

「良いわよ。」

「そもそもルイ公爵子息様とヴァンス殿下はお付き合いされているのでしょうか?特にそんな話は聞いたことがありませんが。」

「え…….えっ!?」

「お嬢様はまるでお二人が想い合う仲である事を知っているようにお話になられていましたが……そういう訳では無いんですね。」


私はあんぐりと口を開けてしまう。ゲームで彼らはもう交際を開始しているはずなのだ。幼馴染である彼らは苦楽を共にして、学園に入学する前に付き合う。


『ルイ、君が他の男と親しげにしているだけで私は狂ってしまいそうだ。』

『……ふふ、ヴァンス。まるで僕のことが好きみたいな言い草だね。』

『っ、……本当はもっとちゃんとした場所で言いたかったが。このまま学園に行けば、君はどこぞの輩に横取りされるかもしれない。』

『ヴァンス……?』

『ルイ。君の言う通り、私は君が好きだ。もう少し後に告げようと思っていたが……耐えられそうにない。どうか、この手を取ってくれないか。君の隣にいる権利を、私に与えて欲しい。』


って感じなのよーーーー!はぁ、思い出すだけで鼻血が出そう。15歳が出せる言葉じゃないと思うんだけど。


ヴァンス王子が膝をついて愛を乞うシーンは私の、というかヴァンス×ルイ推しの1番の名シーンだろう。


「なのにその名シーンが存在していないなんて。」

「お嬢様。頭の中で一人で会話しないでください。」

「ヴァンス×ルイが存在しないなんて。そんなの……そんなのおかしいわ。」

「一国の王子と公爵子息を呼び捨てにするお嬢様の方がおかしいです。不敬って知ってますか?」

「………ヴィラ。貴女も主人に対しての礼儀がなってないわよ。」

「ほんの冗談ですよ。お嬢様が構ってくれないから拗ねました。」

「はいはい。……頭撫でてあげるから自室に戻りなさい

。」

「程のいい厄介払いじゃないですか。」


と言いつつ頭を差し出してくる己の侍女に呆れながら頭を撫でであげた。ヴィラはそれで満足したようで、良いタイミングでそろそろと部屋を退出した。と思ったら何を思い出したのかひょっこり顔を出してくる。


「どうしたの?」

「言い忘れていたことがありまして。今週末、旦那様から屋敷に一度戻ってくるように仰せつかりました。」

「え、それはヴィラだけ?それとも私も?」

「もちろんお嬢様もです。と言うよりも、お嬢様にお話があるそうで。」

「……何だか嫌な予感がするわね。」

「では、失礼します。」


そう言うわけで、週末に実家に戻ることになった。



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