チート君達が
待て待て待て!!!
この娘は今、何と言った? もう一度言ってくれ……なんて言って、言ってくれるだろうか。
「どうした? エトにぃ」
「いや、間違いじゃない」
それは口に出して言っちゃいけないやつだった。
「エトにぃ、間違い?」
「いやいや、大変嬉しいです!! 大正解!」
じゃなかった。ゴホン! と咳払いをわざとし言う。
「あのな、ロディア、何で俺の妹なんかになりたいわけ?」
「妹になればずっと一緒にいられるって。そうすれば、人間について知れるって、あのニホンからやって来たっていう輩が言ってた!」
「その輩ってのは?」
「ちーと少年達」
「ちーと?」
「そう! エトにぃの住んでる国に元は居たって言ってた。だけど今は事情があってこっちで冒険者として暮らしてるって」
それって、あの異世界転生したチート持ちの日本人少年達のこと?!! あのチート君のお仲間か何か? それともご本人?!
「あの、そのチート少年達の中に石沢煌翔っていうリーダーっぽい少年はいたか?」
「うーん……キラトっていう名前は知ってる。けどイシザワは知らない」
「そうか……、それっていつ頃の話だ?」
「ずいぶん前。でも、その少年達はここに一年間居て、ワタシにいろいろ教えてくれた。日本語、日本の事、年下なのにすごい!」
え?
「あの、その少年達は十代くらいかな?」
「そう。皆、エトにぃみたいな黒髪黒目だった。けど服装だけはエトにぃのよりも良いのを着てた。その深緑色の服は何?」
う! 痛い所をつかれた!!
「これはだな……、ちゃんと着てないからあれだけど、日本でまあまあ見る格好だよ。仕事によってだけどな! で、失礼だけど、ご年齢は?」
「すぐには答えられない」
「いや、言いたくないなら無理に言わなくても良いんだぞ?」
「エルフの年齢の数え方は複雑。でも大体見た目に十倍すれば良いとされている」
「ってことは……」
考えないようにしよう。
「その、チート君達はどうしてここに来たか知ってるか?」
「ギルドで見つけたって言ってた。それで仲間を増やして依頼者の為に来たって言ってた。楽しかった。ニホンという国に憧れた。ここにはない事がいっぱいで、異世界人と違うものを感じた。もっと知りたいと思った。そのニホンを作り上げている日本人に興味が出た。だからワタシは願った。今度来る時、ちゃんとした日本人を連れて来たら、一つだけ願いを叶ると! それはちーと少年達から依頼者に伝わり、こうしてエトにぃに会えた!」
いや、違う。だけど……。
「そうかぁ、良かったことの一つだな」
「そう! これからが楽しみ!!」
無邪気に笑うロディアを隣で見ながら俺は思っていた。
やっぱり、この場合の依頼者は絶対レナード侯爵で、レナード侯爵はこのエルフの娘に会ってないんじゃないか? だとしたら。
「その依頼者ってのにはロディアは会ったことがあるのか?」
「ううん、ない。だけどちーと少年達が見せて来た。その依頼者の姿が写ったものを」
「どんな人だった?」
「おじさん。異世界人。ワタシの好みではない」
「そうかぁ! そうなんだ……そのおじさんってのは、人間として見てだよな?」
「そう」
「おじさん嫌いか?」
「う? おじさん……でも、エトにぃはおじさんじゃない! 兄さん!! けど、ワタシの年齢では……」
「あー、そこには触れなくて良いから!! 見た目で行こう!! 俺はあまり実年齢にこだわらない! じゃなきゃ、ここに居るどっかの酔いつぶれ女神だって、ヤバイ!! そんなこと言ったらもっとだぞ!? あれは絶対もっとだ!!!」
「そんなこと言ったらバチあたる」
「良いんだよ、クレアはそういうのなんだから」
言い切ってしまってから、ロディアがまた無邪気に笑った。
「うふふ! エトにぃ、おかしい! 神様侮辱すると怖いのに」
「笑いながら言うことか? ロディアの言葉の方が怖いんですけど……」
「あははっ!」
乾いた笑いではないから良しとするか。さて、俺は考えた。
「依頼者の名前、分かるか?」
「ううん……でも、どっかの貴族だって聞いた」
「そうか……貴族か……エルフのここに来れたのはそのチート少年達だけか?」
「そう」
「じゃあ、やっぱり」
ロディアの願いを叶える為に俺を来させたんじゃない。最初からそうしなかった理由は分からないが、レギナの事で俺はレナード侯爵の考えを変えさせてしまったかもしれない。運良く、俺という『ちゃんとした日本人』が現れて、これは! こっちの方が良いんじゃないか? とひらめいてしまったのかもしれないし、リアムが言ってた事もまんざらではないのかもしれない。その願いを一つだけ叶えるというのにはそれだって含まれるわけで……。
だとしたら、レナード侯爵は次に何をしようとしてるんだ?
ヤバイ事か? また……レギナのような子を出さない為に俺に出来ることは何だ?
「あ、エトにぃ、言い忘れてた。この樹の近くでは炎系の魔法は禁止! 使ったら即行死んでもらう!!」
「うっそぉ?!!!」
俺の思考が停まった。
「え、じゃあ、あの水は?!」
「水は良い」
「え、じゃあ、何か……そういうのですんごい魔法見せてくれないか?」
「すんごいの?」
「そう! ロディアは魔法が得意だろ?」
「うん、分かった。明るくなったら見せる!」
そう言って立ち上がって、朝になったらね! なんて言って、可愛く行ってしまった。あ~!!! 天使!! 天使みたいな表情だった! いや、あれこそが女神!! それに俺の意図は分からなかったようだ。
良いんだ、これで。
新しい魔法を教えてもらおうとか思ってないのだから! それを見て、ティノかクレアにあれ教えて!! とやるんだから。
俺は朝になるまでその気持ちをずっと考えていた。




