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派遣社員で異世界の仕事してます!  作者: 縁乃ゆえ
日本の事を異世界の住人に教えよう! 高時給! 異世界にて長期のお仕事、パーティ付いてます!
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東京異世界保護施設の正社員の彼女

 この辺りは魔法の使用許可を得ている者か突然異世界から来てしまい、事情の分からない者達しか魔法が使えない。それ以外の者が魔法を使ってしまった場合、激しい警報が鳴り響き、お巡りさんがやって来て、あそこの標識分かる? ここ、魔法使っちゃいけないの! 緊急事態や仕事なら仕方ないけどね、役所に申請はしてある? と怒られる。

 それにマンションなどの住居やビルなどの建物も魔法が使える所と使えない所、異世界人しか住めない所、一緒に住める所、日本人や外国人しか住めない所などのきめ細やかな住み分けがなされていたりする。

 サラ王女が居るからといったって、極秘で来ているわけだし、本当に何もできないのだ。

 俺はティノとクレア、レギナを連れて少し歩いた。

 盲目のメデューサ幼女の手を今まで握り、道を教えてくれていた手はサラ王女、エルヴァから代わり、ティノとクレアになった。

 それでもレギナは変わらず歩いてくれる。

 本当に良い子だ。でも、実際に生きている年月はその姿に合ってはいない。

 俺は電話をするか迷った。

 いつもそうしているんだ、良いだろう……と、日本に一時帰国した早々、落ち着いただろう午後の時間にスーツ姿で行けば、向こうだって、こっちの本気度が分かるはずだ。

 本当は早朝に行き、あまり人が居ない時間を狙いたかったが、もう待ってはいられない状況! アポなしで行くしかない!!

 きっとこいつらを実家に連れて行ったところで散々な事になるのは分かっている。

 東京の片隅にある東京異世界保護施設に着いた。引き取った場所から約二十分。

 俺はきょろきょろと辺りを見回し、目的の彼女を見つける。

 三階建ての介護施設のように見える一階の正面玄関横に置かれた鉢植えの一つに水をやっている最中で、こちらを向かない。

 さて、どうするか……俺は咳払いもせず、勇気も何もなく、いつもするみたいに自然な調子で背後から日本人である彼女に声を掛けた。

「よ、柊月」

 その声に反応し、彼女がこちらを向いた。

「え? 江東さん!!?」

 それと同時にパーティメンバーの二人が揃って言っていた。

「清楚系美女!!??」

 レギナに分かるようになのか、まあ良い。

 それに照れることもなく、彼女は俺を見る。

 横に並ぶと理想的な身長差になってくれるのが良いし、やっぱり、何度見ても清楚系美女だ。

「どうしたんですか?」

 何か機嫌が悪そうだ。だが、理由を話す前に言わなきゃいけないことがある。

 俺はパーティメンバーの二人とレギナの方を向き。

「彼女が俺の知り合いの安里柊月やすさとひづきさんだ。で、こっちはまあ、いろいろある奴等やつら

 あの、もっとちゃんと紹介してほしいんですけど……っていうパーティメンバー二人は置いといて。

 この状況を見れば分かるだろう……と俺は柊月の方に向き直る。

「今日は柊月に話があってな」

「ん? その子は?」

 目敏めざとい!!

 一番保護してほしいレギナのスカーフ内を怪しむなんて! さすが、柊月!!

「江東さん以外、全員日本人じゃないですね。江東さん、異世界の子、連れて来ちゃったんですか? また」

「ああ、そうだ。すまんが、柊月! ここで保護してくれないか?」

 そう言って俺は頭を下げた。

「事情聞かせてもらいましょうか? 江東さん」

「はい」

 レギナをパーティメンバーの二人に任せ、俺は柊月の案内で保護施設内にある応接室に入った。

「で、どうやって連れて来たんですか? 今度は」

 事情聴取が始まってしまった。

「いや、ここには柊月しか居ないから言うけどな……」

「待って! 江東さん!! それって、ここだけの内緒の話ってやつですか? また」

「そうです! 柊月なら……と思ったんだ! 前の会社解雇されて、派遣で異世界の仕事に就いて、それで、結構ヤバイのから引き取って来ちゃったし、お前の伝手つてで何とかしてくれ!」

 清楚系美女に一気にふざけんなよ……という顔をさせてしまったが、気にしない。

「まったく……、江東さん、やっと真面目に正社員として働いていると思ったら、解雇に派遣ですか……全く、呆れますね。二歳年上だから、さん付けで呼んでますけど、こっちは江東さんと同じ時間を大学で過ごして卒業したかと思うと敬語もなくしたいんですけど……」

「何だよ、こんな時にカミングアウトか? 良いぞ、俺はいつでもタメ口で、大学の頃は『柊月はね!』って言って、かわい子ぶってたじゃん。その可愛さはどこに行ちゃったんだ?」

「あの! それ、いつも持ち出して来ますけど! 今、私は大人の社会人として生活してるんです!! 言わないでくれます? じゃなきゃ、この話なかったことにしてもらいます!」

「な、謝るから!! な? 柊月、機嫌直して!!」

「全く、相変わらずですね……、江東さん」

 また真面目に事情聴取が始まってしまった。

 く、この嫌な時間が嫌だ。気心知れた仲なのに、仕事だとどうしても堅苦しい。スーツで来て正解とはこの事だ。

「で、そのレギナちゃんはどういったご事情が?」

 ああ、顔はこんなにも清楚系美女で癒されるのに、口調がとってもキツイ。仕事中だからか。

「向こうのな、レナード侯爵っていう異世界人がそのメデューサ一族の最後の生き残り幼女の全ての目を視神経ごと取ってしまってな、見た者を石化するのはなくなったんだが、見世物としてこの日本に連れて来ようとしてたから、俺が代わりに連れて来た」

「はあ……」

 大きな溜め息を吐かれてしまった。こんな仲ではないはずなのに!!

「小さな精霊、奇妙な大きな卵は翼の生えた小さな竜」

「え? あの卵かえったの?! ドラゴン?!」

「ええ、紅いドラゴンの子供でしたよ」

 疲れた顔で柊月が俺を見る。

「今度は、全ての目を失くされたメデューサ一族の生き残りの子供ですか?」

「ああ、でも、盲目のメデューサ一族の幼女って言ってくんないか? ああ見えて何百年も生きてて、元は王族らしいぞ」

「そうですか。それで江東さん、後見人にはなってくれるんですよね?」

「当たり前だろ! 柊月、俺はちゃんと責任は持つよ」

「そうでしょうけどね……」

 連日の夜勤続きみたいな顔になって来た。アポなし作戦失敗?

「後でまた来ようか?」

「後でって、いつ来られても大変なんですけど!! 江東さん、分かってます? 分かってますよね!! 私達は江東さんの保護したい欲を満たす為に居るわけじゃないんです!!」

「強気になって、まあ……。あの頃はとても可愛かった。柊月もするー! だの、柊月もこうやればもっとイケるかな……って言って、真似て……」

「いつの話をしてるんですか? 江東さん!!」

 顔が赤くなってる。うん、この記憶はあるのか。

「じゃあ、いつの夜なら空いてる? そこでちゃんと話すよ」

「今日……。今日しか空いてません」

「ウソっぽい」

「いえ、本当です。仕事終わったら、メールしますから! レギナちゃんを置いてこの施設から出てってくれません?!」

 急にそんな事を言って。

「まあ、良いよ。夜にちゃんと、俺と一対一で会ってくれるんならな」

「分かりました。会いますよ。会えば良いんでしょ! そうしなきゃ、いつもの如く、帰りませんもんね。常套手段じょうとうしゅだんですよ、江東さんの」

「何か、やっぱり、柊月って、異世界のギルドで知り合った大学生の香住ちゃんに似てるんだよな……。何でだろ? 同じような髪型だから?」

「知りませんよ、それに、そういう私以外の女性の話をする気なら、こちらにも考えがありますよ」

「分かった。じゃあ、約束だからな。守らなかったら、こっちだって柊月がして来た事守る義務がなくなる」

「う……それは言わない約束です!! 江東さん」

 うん、今日もそれなりに攻められた。こんくらいで帰って、夜に話し合いをしよう。

「じゃ、そういう訳で……、なあ、ついでにあいつらもしばらくここに居させてくんないか? 大変な事をしてしまったせいで、一時帰国させられてて、住む所がないらしい」

「え? あの女神様と魔法使いの女の子? ですか……」

「そうそう、あの二人は俺の派遣の仕事で知り合ったパーティメンバーなんだが、柊月もすぐに分かっちゃうんだ。やっぱり、いろいろ資格持ってる奴は違うな……」

「死にたくないって言って、異世界から遠ざかってた時期もある人に言われたくないんですけど」

「それは建前。親が納得しなかったんだよ、俺だって大学出たらすぐに異世界に関係する仕事に就きたかったさ。だけど、無理だった。で、普通のサラリーマンやって。サキュバスのせいで会社都合の解雇になったんだ。その辺について知りたくてな。本当にメールが欲しい。柊月」

「分かりました。サキュバスが出て来る時点で変です。本当に今日は夜勤ないし、行きますよ」

「あ、俺の実家はいつもの如く、ダメだからな」

「じゃあ、どこですか? その辺の店は止めてくださいね。変なの拾う癖があるんだから、江東さん」

「変なのって。困ったモンスターや異世界人だろ? それでも、ここに勤める正社員か?」

「そうですけど、何か?」

「……何もありません。すみません、調子乗り過ぎました。ホテルでも何でもどこでも良いです。二人きりでお話をしましょう」

「分かりました。じゃあ、いつもの如く、私の家で良いですよね」

「引っ越ししてない、あの家か……」

「何ですか? 思い出いっぱいで私としてはとても落ち着くのですが」

「分かったよ、安上がりだしな」

「余計な事言う癖、なくされてはいかがですか?」

 そんな話をして出て来た俺を待ち構えていたのはクレアとティノとレギナ。

「何か、ヨシキチから女の匂いがするわ」

「そりゃそうだろう……。柊月はお前達と違ってちゃんと化粧して現代日本で超忙しく働く正社員様なんだから。良い匂いだってするさ」

「そういう匂いじゃないんだけど」

 何か嫌~な予感に繋がるような事を言われてしまった。

 本当に嫌な気がして来たじゃないか。クレアのせいで。

退いてくれません? 江東さん」

 応接室から柊月も出て来た。

「はいはい、連絡お待ちしてますよ、安里さん」

 クレアとティノも置いてもらえることになったし、俺は実家に一度戻り、一人で久しぶりに日本の外をぷらぷらし始めた。

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