次の現地まで
ヴァンパイアお嬢様の屋敷を出てからしばらく、俺達は行きと違って徒歩だった。それも俺とティノは来た時とあまり変わらない量を持っていたが、この浴衣姿の女神は俺のテントを含めても明らかにその量が減っていた。
「おい、クレアの荷物、どうした?」
「何が?」
「や、あれか……酒だったんだな……って思うことにしといて、次の現地」
「ちょっと! 前もって荷物減らすようにしておいたんです!! こんな事になるだろうと思ってね!!」
「へー、俺達だってちゃんと計画的に荷物の方はやってたさ。冬も終わり、こっちの世界では日本で言う四月の季節になったわけだけど、日本の方は今、十二月。冬物を一度東京の方に送りたくても出来ないんだよ!! 次の仕事では絶対休むし! そうしたら東京にだって帰ることも可能。冬服が必要になる! というわけで!! 誰か、次の現地にテレポート出来る奴いないのか?」
は? 何言ってんの? という顔をパーティメンバー二人にされた。
「言っている意味が分からないか……そうか……」
「いえ、分かりますよ」
ティノが素直に言った。
「きっとこう言いたいのでしょう。またあんなに大変な思いをする道中になるくらいならいっその事、テレポートで行けないのか……」
「そういうことだ! で、行けないのか?」
「次の現地って……どこだっけ?」
この女神! あの屋敷に居る時にノイデフィの方から更新に関する書類が届いて、それにサインをし、返送したはずだ。だからこうして、今一緒に居るわけだし……もしかして、もう忘れちゃったの!!? 最近の出来事なのに?!
「次の現地は王都近くの街だったろ……」
「あ! そうだった!! ぞわぞわがひどくて、あんまり深く読まないでやったから、どっかの街ってことは覚えてたんだけどね……」
「それはひどかったな……」
「そうよ!! だから、今度からはちゃんと前もって言ってよね?! 変な事になると大変なんだから!!」
「はいはい、すいませんね……。アンデッドだ……なんて言ったら、狩る狩る! 言うと思ったんで」
ここは適当に言っておこう。次も教える相手はそういう系だと知らないようだけど。
「でも……次の現地でも……」
「ティノちゃん!! 何? 何なの?!!」
「いえ……、確かメデューサ一族」
「さあ! で、テレポート出来るやつはいないのか!!? もちろん、俺は出来ないけれど!!」
「出来ないのにそう言っちゃうヨシキチにこれだけは言えるわ!! ぞわぞわがやっとなくなりそうなんだから、少しくらいのんびりしたい!!」
「そうです!! さっさと着いてしまってはゆっくりできませんよ」
「何言っちゃってんの?!! お前ら!! 俺がそう言うんだったらまだ分かるよ!!? 休みなく、太陽の出ない時間はずっと働いて、その間、お前ら何してた? ティノは寝て、クレアはどっかに行って温泉入るか酒飲んでただけだろ!!!」
今、思い返してもふざけんなよ!!! というのが溢れて来そうだ。
「あ、そうですね……でも、あたしはその街、行ったことないですし」
「私は行ったことあるけど……」
行きたくないのか、この女神……そんな目でクレアを見る。
「良いわよ! テレポートしてあげる!! だけどね、今日行ったって、私は働かない!! 何故なら、今日は休日だから。日本人ほど働く人は見たことなかったけど、そう、ヨシキチは働くの?」
「ちげーよ! 休むって言ってるだろ!! 早く行って、どんな所か見たいってのもあるけど、そこまで行く日数を休みにあてたいんだよ! 俺は!!」
それの許可はもうもらってある。
「それにこの先にある、あのちょっとおかしなばあさんが居る村に行きたくないしな……」
その話をした途端、パーティメンバー二人が頷いた。やはり、避けたい所だ。
「じゃあ、行くわよ……」
「ああ」
「はい!」
俺達はその場所から次の仕事先となる王都近くの街に一瞬でテレポートした。




