フェルノVS SSランクモンスター『剣闘王パーフェクト・ガイア』 1
報告に来た冒険者と、その報告を受けたトーラスが速攻で資料を出した結果、出現したSSランクモンスターの名は、『剣闘王パーフェクト・ガイア』であると判明した。
王都に存在する博物館にはこのモンスターに関する情報が彫られた石板が残されており、一万年以上前、大陸で暴れまわったとされている。
巨人の中でも恵まれた体格と戦闘術を持っており、他の追随を許さないその威力で、大陸のありとあらゆる文明を破壊した。
最終的に、一つの大陸を滅ぼした後、別の大陸に泳いで渡った後、『別のSSランクモンスターとの闘い』で同士討ちとなった結果、その生涯と終えたとされている。
「いったい何がどうなって復活したのかは知らんが、ま、俺も本気でやってやるさ」
フェルノは竜刀を構える。
唾の竜の頭のようなものから翼が生えており、それが、フェルノに飛行能力をもたらしていた。
「まさか、どちらかといえば岩の竜の属性だと思っていたが、飛べるとはねぇ……まあいいや。さっさと始めようか」
フェルノは突撃する。
そのまま竜刀にマグマを流し込んで……膨大に流し込んで、マグマの『巨刀』を生み出す。
それを、ためらいなく巨人に向かって振り下ろす!
巨人はそれを、金棒を構えて受け止めた。
「マグマエンジン・マントルブースター!」
フェルノの全身から、文字通りマグマがあふれ出した。
そのまま、マグマの巨刀が、金棒を押し込んでいく。
「あんまり舐めてんじゃねえぞ。お前は巨人で、『理不尽』かもしれないが……こっちは『災害』だ!」
そのまま押し込んで、巨人の体勢が崩れる。
「あー……ごめんな。俺最初から空中戦をやるつもりだったから、あいつらが逃げた時点で……地面、全部滑りやすくなってるんだよ」
凶悪なほど広範囲にわたって影響を及ぼすフェルノの地属性魔法。
普段はダンジョンという閉鎖空間で、マグマで焼き切ることができるモンスターを相手にしているため『調整』が入っているが、今回は地上で、周りには森以外何もなく、敵はSSランクモンスターだ。
容赦も遠慮もない!
巨人はそのまま足を滑らせて、地面に倒れた!
「言っとくけど、遠慮はしねえぞ!」
巨刀をさらに振り下ろす!
次の瞬間、まるで三日月のようなマグマの刃が生まれて、巨人に向かって射出された。
「BAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
巨人が吠える。
そのまま左腕を振り上げて、マグマの刃を裏拳ではじいた。
マグマの刃が森をぶち抜くように貫通して、そのまま飛んでいき、空に向かって消えていく。
「頑丈だな。ただ、もっと本気でかかってこいや!」
竜刀を上段に構えて、さらに刃を大きくする。
「OOOOOOOOOOOOOO!」
巨人も金棒を振り上げる。
巨刀と金棒が激突し、一瞬、その場の空気が圧に耐え切れずにすべて弾き飛ばされる。
「すげえな。だが、そんなんじゃまだまだ甘いぜ!」
左手を巨人に向ける。
「イラプション・バーストオオオオオオオオオオ!」
さらに発生する火山の噴火。
至近距離から巨人に向かって放たれて、そのまま激突する。
「GI……RUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
巨人が吠えて、そのまま金棒を押し込んでくる。
「チッ、その金棒頑丈すぎんか!?てか……体を全然貫けねえ……ここまでやってんのに『威力が足りねえ』ってのか。マジで言ってんのかよ」
体中からマグマが吹き荒れているフェルノ。
しかし、大陸そのものに脅威をもたらすとされる巨人が相手では、まだまだ足りない。
「しゃーない……早いけど奥の手だ!」
一度、大きくマグマをあふれさせると、そのまま金棒を押し込む。
その勢いで体勢を狂わせると、勢いよく飛びあがった。
空高く舞い上がり、竜刀を逆手に構える。
「さてと……妖刀の時は、俺の体を侵食して『岩の桜の木』にしてこようとしてたな。だが今は違う。今のお前は竜刀で、俺はその主人だ。さあ、その『侵食する力』……その本質を見せてもらうぞ!」
構える。
「竜刀覚醒!」
宣言するフェルノ。
次の瞬間、赤黒い雷が唾から放たれて、フェルノに侵食し始める。
「ふふふっ。全然痛くねえし……力が湧いてくる」
ゆっくりと目を閉じるフェルノ。
次の瞬間、フェルノの頭に、二本の角が生えた。
それはまるで、竜のような……
「おおおおおおおおおおっ!」
体の中に生まれる力を開放するフェルノ。
次の瞬間、背中からは竜の翼が生えて、ズボンからはしっぽが生えた。
……いや、服を貫通していないので、実際に言えば『生えている』という言葉とが違うのかもしれない。
だが、その本質は変わらないだろう。
「さて、やろうか!」
カッと目を開くフェルノ。
その瞳は、ドラゴンの瞳のように、瞳孔が縦に割れていた。
「!?」
雰囲気そのものが変わり、巨人は驚く。
だが、矮小な人間であることに変わりはない。
巨人は、ドラゴンを金棒で叩き潰したことさえあるのだ。
問題など、何一つない!
「OOOOOOOOOOOOOO!」
金棒をフェルノに向かって振り下ろす巨人。
それに対して、フェルノは左手をスッと構えた。
そして、その手に触れた瞬間、金棒の勢いが、すべて消失する。
「!?」
「まるで効いた手ごたえがないのは初めてか?だったら……これから味わうんだな!」
高速で巨人に迫るフェルノ。
通り過ぎるときに、マグマの刀を一閃!
切り付けたところが焼けて、ジュウウウウウ!と音が出始める。
「AAAAAAAAAAAA!」
久しぶりの『痛み』
それを感じた巨人は吠えるが、フェルノに向かって金棒を振り下ろす。
「もうそんなの効かねえよ」
フェルノは高速で回避すると、そのまま刀を構えて突撃する。
下から迫るように、高く、飛び上がるように!
「竜王術・我竜・大怒号竜絶撃!」
一閃!
下から振り上げられた一閃は、巨人の右腰から左肩にかけて、マグマの刃が焼き切っていく!
「AAAAAAAAAAAAA!……A、AA……」
叫んだ巨人だったが、やがて、糸が切れた人形のように、地面に倒れた。
「ふう……ここまでやらないといけないなんてな……ん?」
胸がざわつく。
巨人の体ではない。
体ではなく、金棒。
「まさか……」
ここに来る前にエルフィナとした会話が、フェルノの頭によみがえる。
『フェルノ。一応、石板の伝説の補足をしておく』
『ん?なんだ?』
『あくまでも、巨人は剣闘士であったことは事実らしい。だが、巨人というものは何かを煩わしいと考えたとき、『剣』を振るそうだ』
『剣を……』
『金棒は単に蹂躙するための武器。剣は、戦うための武器だ。覚えておくといい』
金棒が、次々と形を変えていく。
グネグネと、その形が、どんどん細くなっていく。
『ついでにもう一つ。この巨人が、この大陸にやってきた理由についてだ』
『そんなことまでわかってるのか』
『いや、伝承を調べるものからすれば有名な説だ。そしてその理由なんだが……』
形を変える金棒は、細く、薄く……
『アルマテリア王国の前身となる国に存在した、最高の錬金術の力を奪い、最強の剣を作り出すため。と言われている』
両刃の剣のようになって……。
「!?」
次の瞬間、下から剣……グラディウスと呼ばれるそれが迫っていた。
「うおおおおおおおおお!」
巨刀を構えて、剣を受け止めるフェルノ。
しかし、一瞬、フェルノは押された。
「チッ!」
技術を結集させて受け流すと、そのまま距離をとった。
「ぐっ……ああくそっ!マジで全身が吹き飛ぶかと思ったぞ。あぶねえなマジで」
剣を構えなおす。
だが、巨人もまた、『引き締めた顔つき』で、剣に魔力をまとわせる。
「うおっ!」
次の瞬間、フェルノの背中の翼が切断されていた。
バランスが崩れたが、一瞬で翼を修復し、そのまま突撃する。
それに対して巨人は、全身に魔力をまとわせた。
「竜王術……え、な、なんだと?」
距離をとられていた。
「……あれほどの巨体で、そんなことが……」
驚愕するフェルノ。
それに対して、巨人は素早く迫ると、剣を振り下ろす!
「は、はやっ……っ!?」
竜の機動力を超える速さで迫った巨人の振り下ろし。
フェルノは竜刀を構えてギリギリで防御した。
しかし……
「ぐっ……づっ……ああああああああ!」
しっかりと体重を乗せてきた一撃に対して、大した構えもなく受け流せるほど、この『戦い』は甘くない。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
「がっ!……かふっ……」
地面にそのままたたきつけられるフェルノ。
クレーターの中で口からは血を吐くが、すぐに巨人をにらみつける。
「はぁ、はぁ……あー、まったく、ここまで早いとは……」
また思い浮かぶ、エルフィナとの会話。
『それと……あまりこれは確信してはいないことなんだが……』
『まだ何かあるのか?』
『フェルノ自身のことだ』
『ん?』
『フェルノの地属性が、怒りでマグマになったという話だが、正直、私はそれを聞いたことがない』
『そ、そうか……』
『特異性が高いのか、それとも別の理論を応用できるのかはまだ分かっていないが……とりあえず、感情が高ぶれば、マグマの勢いが増すのは事実だな?』
『ああ。確かに』
『なら逆に……熱くなった時ほど、冷静になってみるのはどうだろう』
『え?……いや、マグマだぞ。冷静になって力を発揮できるのか?』
『わからない。しかし……何か、あると思う』
『うーん……まあ、覚えておくよ』
フェルノは巨人を見上げる。
「直感的に反していて、しかも試してないことを土壇場でやるのは好きじゃないんだが……仕方ないか」
フェルノは地面に刀を突きたてる。
そのまま、大きく、大きく深呼吸をする。
「すううううぅぅぅぅ……ふううううぅぅぅぅ」
冷静に、落ち着いて。
巨人を倒すためのエネルギーで高ぶっている感情を、心を。
「……U?」
そのフェルノの行動を、巨人は理解できなかった。
マグマの勢いがどんどん落ちていく。
勝負をあきらめたのだろうか。もう打つ手はないのだろうか。
「……」
しかし、仕方がない。とも思う。
自分が、こんな、矮小な年月しか戦っていない少年に対して、本気になったのだ。全力を出したのだ。
たとえまだ生きていても、心のほうが折れても仕方がない。
「……」
剣闘士として戦ったことは事実。
そして、この少年とのやり取りが、単なる蹂躙ではなく、『戦い』であったことも事実だ。
「HUUU……」
せめて、敬意をもって、終わらせよう。
巨人は、グラディウスを構える。
膨大な魔力をまとうそれを、少年に向けて、まっすぐ。
少年がその速さを自覚することすらできないほどの速度で、振り下ろした。
次の瞬間、剣が地面にめり込み……剣と腕と足が、『凍り付いていた』が。
「!?」
驚愕する巨人。
避けることなどできない威力と速さだったはず。
というか……そもそも凍り付いているのは、いったい何が起こった!?
「……待たせたな。最終ラウンドだ。私も本気で行こう」
落ち着いた口調で、冷静に、淡々とつぶやく。
そこにいたのは……『青』と『水色』と『白』で構成された液体をあふれさせる、冷めた目をした少年だった。
「どこからでもかかってくるといい。『ゼロ度のマグマ』で、焼き尽くしてやる」




