ダンジョンの宝箱の裏技!
「おりゃああああ!」
マグマの光線もどきを魔法で放出するフェルノ。
中層で飛び回るドラゴンはそれを回避するが、自分よりも上に向かって放たれた光線を回避しようと、下に逃げていく。
「そろそろ間合いなんだよ!くたばれ!」
地属性魔法を使って地面を盛り上げ、蹴って飛び上がるフェルノ。
そのまま、妖刀を鞘から抜き放つとともに、ドラゴンを一閃。
頑丈な鱗をいとも簡単に引き裂いて、肉を断つ!
「ギャアアアアアアア!」
「私もいますよ」
シンシアが十を超える水色の魔法陣を出現させて、水の弾丸を作り出す。
連続でドラゴンに叩き込む。
本来なら威力が足りないかもしれないが、装備の影響で細かい作業に関してクオリティが上昇しており、鱗を次々と貫通する。
「よっこいしゃあああああ!」
半ばやけくそと思われかねない叫びとともに、空中に入るフェルノは妖刀を振り下ろす。
その一閃は、一撃で、ドラゴンの首を切り落とした。
ドラゴンは地面に落下して、そのまま魔石を残して塵になっていく。
「……ふう!やっぱ派手に動くのはいいねぇ!」
地面に着地すると納刀して、満足そうな笑みを浮かべるフェルノ。
「何と言いますか。かなり派手な動き方ですね。フェルノ様」
「普段は四十キロくらいの荷物を背負ってたからな。こんなに体が軽いのは久しぶりだ。表層の竜人達相手にこんな動きはいらないからな」
シンシアの感想にこたえつつ、魔石を『地中倉庫』に収納するフェルノ。
「しかし、本当によく斬れるな。この妖刀」
「大昔の帝国で研究されていた。とも解釈できることをサーベラさんは言っていましたが、本当にすごいですね。私も、こんなに気持ちよく魔法を使ったのは初めてです」
水の弾丸を放ちまくった感覚としては、非常にいいものだったらしい。
「この調子なら荒稼ぎできそうだな」
「はい。この調子なら、すぐにランクを上げられるでしょう」
トーラスとの大作戦のためには、ランクを上げることが必要だ。
で、ランクを上げるためには稼ぎを出す必要がある。
近道を遠慮なく進めるフェルノの力があれば、問題なく稼げるだろう。
「ふう、そろそろ休憩するか」
「はい。冒険者ギルドを後にしてから、かなり稼ぎましたからね……あと、フェルノ様の体力には脱帽です」
サーベラから装備を購入した後、早速と言わんばかりに二人は地下大迷宮に潜った。
そこから近道をまっすぐ進んで中層に到達したわけだが、そこからずーっとドラゴンを狩り続けているのだ。
ただ、フェルノが自分で言ったように、普段は小柄な人を一人分抱えているような大荷物である。
加えて、地下に大量の荷物を載せた地中倉庫を動かし続けていたのだ。
言い換えれば『移動に必要な集中力』が大幅に減少したため、体が軽いのなんのって。
「シンシアもがんばったらこれくらいできるって」
「そんな『君も早くこっちにおいでよ』みたいな顔をされても困りますよ」
近くの空き部屋に入る二人。
中には宝箱があったのだが……。
「罠だな。あれ」
「わかるのですか?」
「ああ、騎士団のところで雑用係とやってるときに散々通った道だからな。宝箱が罠かどうかは覚えてるんだよ」
というわけで、二人で部屋の奥でたたずむ宝箱をガンスルーして、部屋の隅のほうに行く。
そのまま地面をたたいて地中倉庫を出すと、その中から仕込んでおいた食材と調理器具を取り出す。
早速調理を開始。
食材を全部鍋の中に放り込んで、薬草も入れて、蓋をしてコンロ型マジックアイテムを点火!
……五秒後。
「できたぞ」
「早すぎませんか?」
「早くしないとフルコースなんて作れないからな」
「フルコースを求められていたのですか!?」
「ああ。すごいだろ」
「……そうですね」
いずれにしても絶句ものであることに変わりはない。
というわけで、シチューが完成である。
「いやー。いいよなぁ。簡単に作れるし」
「簡単すぎませんか?普通、こんなに早くシチューはできませんよ」
「めっちゃ仕込みを頑張ったからな」
「それでは解決できない気が……」
疑問を抱きつつもスプーンを口に運ぶシンシア。
「あ、おいしいですね」
「レシピ通りだからね」
ではレシピを見たら加熱時間が五秒とか書かれているのだろうか。
……とシンシアは突っ込みたかったが、やめておいた。どのみち解決しないし。
「あ、そうだ。裏技を教えてやる」
「裏技?」
「ああ」
フェルノは別の器にシチューを盛り付ける。
そのあと地面に触れて宝箱までの道の摩擦力を変えていき、その皿を滑らせた。
宝箱に近くなると摩擦力がやや上がって、減速する。
最終的に、宝箱のそばでピタッと止まった。
「……」
シンシアは変な予感がした。
で、宝箱が少しだけ開くと、中からスルスルと触手のようなものが出てきて、シチューに触れた。
まるで吸収していくかのように、触手に触れたシチューがなくなっていく。
数秒で完食し、触手が中に消えていった。
その後、宝箱が開いて、かなり質の高い魔力が込められた魔石を出すと、皿に乗せてこちらに滑らせてくる。
フェルノのそばで止まった。
「なっ?」
「なっ?ではありませんよ。なんですかこれは」
「だから裏技だよ。簡単に言うと餌付けできるんだ」
「……人間が開けた場合には襲い掛かって、食べ物をもらった時は対価を払う……不思議な価値観ですね」
「俺もそう思うんだが、実際できるから仕方がない。まあ、内職のついでにはなるぞ」
「そうですか……」
関心半分呆れ半分といったところか。
知恵というよりは……直感的に受け入れられない『何か』といったところである。
「様々なことを知っているのですね」
「うーん。初代団長のころから含めると、潜り始めて五年くらいかな。小技はいろいろあるんだよ」
中には普通の『技』に昇格したものもあるが、基本的には知識の段階だろう。
「あと……あの宝箱はありそうだな」
「え?」
まだ何かあるの?といった表情のシンシア。
そんな彼女を尻目に、フェルノは立ち上がって宝箱のところに向かう。
宝箱の蓋……ではなく、その下側を探った。
「ええと……多分この辺に……よし、あった!」
小さな穴を発見。
ポケットから先端が曲がった針金を取り出すと、そこに入れてガチャガチャ動かす。
そしてスーッと引いていくと……引き出しになっていて、中から一つの小さなインゴットが!
「二重底!?」
驚愕するシンシア。
さすがに想定外だったようだ。
「よし!『竜核インゴット』だ!このダンジョンでも結構なレアものだぞ」
「……」
何かが凄く納得いかない。といった様子のシンシア。
フェルノも気持ちはわかる。初めて発見した時は『~~っ!?』みたいな、声にならない声を出したものだ。
「……二重底なんてあるんですね」
「宝箱って、大体一つのアイテムが入っていて、あとは綿が敷き詰められてるだろ?俺な。もしかしてこのわたの下にもアイテムがあるんじゃないかって、全部綿を出したことがあるんだよ」
暇人かお前は。
「まあ、綿の下には何もなかったんだが、実際に中を覗き込んだ感じと、宝箱の外観がなんかあってないなって思って、調べてたんだよ。そうしたら小さな穴を発見してな。次に来たときに針金を持ってきていろいろ弄ってたら、二重底を見つけたんだよ」
暇人だなお前は。
「……そういうことですか」
経緯は分かった。論理的整合性もとれている。
だが、社会的通念として何かが納得いかないだけである。
笑顔でシンシアの隣に戻ってきたフェルノだが、すぐに何かに気が付いたように表情を変えた。
「……ん?足音が聞こえる」
「あら?」
宝箱の部屋の外から足音が聞こえてきた。
「おっ!アリアス!シチューの匂いがするぞ!」
「エルフィナ。いったい何を言って……あら、確かにそうね」
通路側から声が聞こえてくる。
どうやら女性二人のようだ。
(めずらしいこともあるもんだなぁ)
そんなことを考えつつ、フェルノはシチューの量がまだ結構余っていることを確認した。
新ヒロイン出現です!やっとハーレムタグの回収ができた!
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