85話 ガルドVSムサシ
部屋に入るとルーリが抱きついてきた。
「ユウ、よく勝ったね!!」
「ああ、何とか勝てたわ」
続いてナティさん、セバスも近寄ってくる。
「ユウさんすごい試合だったわ。おめでとう」
「ああ、ありがとう」
「ユウ、もう一試合あることもお忘れなく」
「もちろん忘れてないさ」
しっかり引き締めてくれるセバスはやはり有能な補佐である。
そこにエルさんが戻ってきた。
「おう、ユウ!最後のありゃなんだ?全く見えなかったぞ。気が付いたらぶっ刺されてたわ」
「フフフ、エルさんの技を教えてくれたら教えてやるよ」
「わははは、じゃあ仕方ねぇな。次で破ってやるぜ」
「俺もエルさんの技を見破って、そのうえで勝ってやるさ」
そう、今回エルさんはあの技を出していない。あの技と言っても俺には見当もついていないのだが、前回殺された技だ。
そしてエルさんの言うようにこの大会を今回だけで終わらせるつもりがない以上、次の大会でまた当たるはずだからな。
それまでにあの技に対応できる様にまだまだ鍛錬しなければならないだろう。だからお互いにまだ手の内は晒さない。
ましてや俺の無拍子は未完成であるのだ。そんな弱点を話すはずがない。
「私には教えてくれるよねー?」
ルーリがそう言ってきたので「無理」とだけ言っておいた。
断られないと思っていたルーリが口をポカーンと開けたままこちらを見てる。
「お前はもっと精神面を鍛えなおせ。怒りは仕方ないがもっとコントロールできるように」
「うぅ……。わかったわよ」
まぁ、そういう俺だって全然出来てないんだがな。一緒に成長していこうではないか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さて続きまして準決勝第2試合を始めます!まずは獣人界の王 者・ガルド選手!対しますは謎の剣士、しかしその強さは本物・ムサシ選手!」
「さぁ決勝で待つベイダー選手と戦うのはどちらでしょうか!それでは開始!!」
開始早々ガルドが距離を詰めていく。対してムサシは剣を鞘におさめたまま構える。
――居合。
本来居合とは座った状態から一気に抜刀することを言うと習ったが、今では立った状態からの抜刀術も居合と言っていいほど浸透していた。
多分あの三本の刀を使う剣士のおかげだろう。
ガルドが右腕を振りぬく直前、身を躱し相手の懐へと入って抜刀する。
その速さについていけたものは少ない。
「速いな……」
そうポツリとつぶやくエルさん。
「確かに。だがガルドも紙一重で躱してる」
そうガルドはその一撃を紙一重でかわしていた。
だが脇腹から多少の流血が見られていた。何かのスキルでも使ったのか、それともその剣速による効果だろうか。当たっていないはずなのに傷を負ったのだ。
その傷を治さずにガルドは攻撃を続けた。ムサシも今度は剣を抜き対処する。
お互いの攻撃はそれぞれがまともに食らったら死ぬであろう一撃の連続であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
まさか俺の攻撃がここまで通用しないとはな……。
ガルドはそう思い目の前の男を見やる。
「強いなぁ、お前」
「さて、先ほどの人達と比べるとお互いまだまだですよ?ここのところ鍛錬をサボっていましたし」
「まだ強くなれるってか。期待させてくれるなあ」
「こちらこそ、お互いに楽しんで殺りましょうか」
無表情な男だから無視されると思いきや応えてくれた。しかも楽しんでときた……。
じゃあ俺もそれに応えないとな!
俺にさっきの試合のダメージはない。しかし精神的なものは別だ。今まであの試合ほど苦労した事はなかった。
後から聞いたらあのお嬢さんは覚えてないと言っていたらしい。本能だけで戦っていたのだろう。末恐ろしいお嬢さんだった。
そしていま目の前にいる男もまたそんな雰囲気を醸し出している。
獣人国では負けることなどなかった俺が恐れている?
無理矢理その考えを振り払うかのように体を動かす。それを見た男も間合いを詰めてくる。
パンチやキックを放とうとも決定打には程遠い。おまけに相手の攻撃も鋭さを増してきていた。
奴の言ったことが本当ならサボっていた体が徐々に解れてきたってことだろうか?
序盤の互角の攻防が次第に傾いてくる。もちろん俺の劣勢にだ。
最初はただの冷やかし気分だったのだ。予選もただ力任せに殴っていただけだった。
上位の結果は出せたんだが俺の数段上をいく奴らが何人もいた事に驚いたのは事実だった。
認めよう。
認めることから始めよう。
――俺は弱い。まだ弱い。
だがそれで終わらせない。弱いのなら鍛えればいい。
鍛えて強くなればいい。戦い方を覚えればいい。俺はまだまだ強くなれる。
直後に目の前の男……いや、ムサシが放った突きが俺の喉へと突きささったのを見て、意識が途切れた。
目を覚ますと医務室のベッドの上だった。
「負けた…か」
「お疲れ様でした。ガルド様」
そう声をかけてくれたのは豹の獣人で俺の供であるレスタだった。
「ああ、負けちまったな」
「負けちゃいましたねー。でもあいつめっちゃ強いから気にしない方がいいですよー」
レスタもまた2回戦でムサシと戦いあっさり負けていた。
その経験からムサシの強さを感じ取っていたのだろう。しかし……
「レスタ、まるで俺が負けるのが分かっていたみたいだな?」
「え??何でですかー!応援してましたよ!しまくってましたよ!」
慌てた感じでレスタがガルドの応援をしていたと言うが、
「じゃあなんで医務室にいるんだ?さっき負けたばかりだってのにここにいるのが早過ぎないかい?」
「あ……。いや、その、あの……」
しどろもどろになるレスタ。それを見て笑った。
「ぐははは、いいってことよ。レスタ、俺はもっと強くなるぞ」
「はい!その姿を見れるまでお供しますよー」
「お前とラスタも強くなるんだよ!」
えッ!という顔をして驚くレスタ。お前女なんだからその顔はマズいぞ。
「一緒に鍛えようぜ。それで負けたあいつにひと泡吹かせてやるんだ」
「エー?(私は無理ですから)ガルド様一人でやってくださいよー」
「何か言ったか?」
「――い、いえ!頑張りましょう!」
その後医務室にラスタが飛び込んでくる。
「ガルド様ご無事ですか?」
「ああ、大丈夫だ。ほらな、ふつうはこのタイミングで来るんだぞレスタ」
「グ……、ごめんなさーい」
「何の話でしょうか?」
「いやいや、いいんだ。席に戻ろうか」
そう言って俺達は医務室を後にした。
「ガルド様、席に戻っても決勝戦は明日なので、もう試合はありませんよ」
「な、なに!?明日だったのか??」
「そう説明にあったでしょ」
「お前らが聞いてると思ったから聞いてなかった」
はぁぁぁ、と大きなため息をついたラスタ。え、その態度とっちゃう?俺偉いんだけどその態度しちゃう?
「ついでに言うならガルド様も3位決定戦と言う事で、あの天狗仮面と戦うことになってます」
「おお!あいつと戦えるのか!なんか他人の感じがしないんだよ、あの仮面のやつ」
「奇遇ですね、我々もそんな気がします」
何だか失礼なことを言われているみたいだったが今は気分がいいので許してやろうじゃないか。
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