69話 ナタリア
いつもの朝稽古をこなす。最近は剣の素振りに加え、格闘、弓も練習中だ。
ただベイダーで登場する時は剣と魔法をメインにして戦っている。
これはそのうちユウで遊ぶ時に同じ武器を使ってしまって同一人物と思われないようにするためだ。
朝練を終え、風呂で汗を流していたらエルさんが入ってきた。
「よう、ユウ遊びにきたぜ」
「ああ、いらっしゃい。って後ろの人は?」
そうエルさんの大きな体の後ろにすっぽり隠れるように人がいたのだ。
「ああ、こいつもダンジョンマスターの一人だ。名前は――」
「ナタリアって言います。初めましてユウさん」
ナタリアと名乗ったその人は見た目は女性(だが無性)で髪は肩までのショートっぽい茶髪。サバサバした感じがするスポーティータイプだ。
「ああ、初めましてナタリアさん。で、どういう事?」
そうエルさんに問いかけた。
いきなり初対面の人と風呂場で挨拶を交わす。もっとちゃんとお出迎えさせろよ。しかも相手がダンジョンマスターなら尚更だよ。
「どうもこうも良い風呂があるから行こうぜって誘ったんだが、ダメだったか?」
「いや誘うのは構わないけどさ、もっとちゃんと挨拶したかったっていうか……」
「そんなの気にすんな。なぁナティ」
ナティ?ナタリアさんの愛称か?
「ええ、裸の付き合いから始めるのもいいものです」
なるほどさすがエルさんの連れてきた人だな。ネジがちょっとズレてるわ。
「そうですか。まぁそう言うならゆっくり楽しんでください」
「ああ、そうさせてもらうぜ!がはははは」
「あんたは言われるまでもないだろ!」
この人はどうせ楽しんでいくんだからな。実際今も酒持ってきてるし。
掛け湯をさせた後みんなで湯船につかり酒を楽しむ。うむ、朝から贅沢な時間だ。
「で、エルさん本当は何しに来たの?」
「ああ?遊びに来たに決まってるだろ。ついでにナティも遊ばせてやろうと思ってな」
「ああ、そう言うことね。じゃあまた案内役でもしましょうか」
「話を聞いてから楽しみにしてたのよ。よろしく頼むわねユウさん」
「ユウさんじゃなくてユウでいいですよ。多分俺の方が後輩だし」
「いえ、確かに私の方が先輩かもしれないけどランキング的にはユウさんの方が上でしょうから呼び捨は無理だわ」
あれ?エルさんの友達の割に常識があるだと?それにランキングって確認できるのか?
「あのー、ランキングって確認出来るんですか?」
「ちがうちがう。エルウィン様から"俺より稼いでいる"とお聞きしたのよ。だったら誰よりも稼いでいるってことでしょ?」
「なるほどね。まぁ呼び名は好きに呼んでください」
それにしてもエルウィン様か……。俺が気軽にエルさんって呼んで怒られたりしないかな?
「あの、ナタリアさん。一つ聞いていいですか?」
「ナティでいいわよ。で何?」
「あ、分かりました。ではナティさん、俺がエルさんって呼ぶことに何か思う事あります?生意気だとか、ぶっ殺すだとか」
するとナティさんはケラケラと笑いだした。
「大丈夫よ。ただ私にとってエルウィン様が恩人なだけであって他人にまでそれを強要するつもりはないわ」
はぁ、よかった。ただでさえこれから敵が増える予定なのにエルさんの近い人まで敵に回すつもりはないからな。
「それを聞いて一安心です」
「な、面白い奴だっていったろ?」
「ええ、確かにそうですわね」
いや、今の会話に面白い要素あったか?スリルしかなかったと思うんだが?
ちなみに敬語もやめろと言われたが、"今すぐは無理です。慣れてからそうします"と答えておいた。
エルさんが"俺にはすぐ敬語やめたじゃねーか"って突っ込まれたけど、あんたはいいんだよ。そういう人なんだよ。
その後俺達は風呂を出て朝食を取った。
そこへルーリが「ハラ減ったー」と飛び込んできた。おいお前腹減らないはずだろうが。
勢いよくドアを開けた後、エルさんとナティさんを見たルーリは時間停止し――直後に土下座した。
「来ているとは知らずに失礼いたしました!ナタリア様!」
え?ルーリとナティさん知り合いだったのか?
最近やっとエルさんに慣れてきて、俺と同じ様に接する事ができるようになってきたルーリが土下座。
それを見てエルさん酒噴き出したし。こっちに飛ばすのやめろ。
「いいのですよ、さあ立ってください。一緒に食べましょう」
恐る恐る立ち上がるルーリ。え?そんなに怖い人なの?
俺の隣にゆっくり座るルーリ。
ルーリ:なんでこの状況なのよ!先に言っておきなさいよ。
ユウ:自然な流れでこうなった。俺にもよくわからん。
念話が飛んできたので思ったままに返事しておいた。
本当に流れに任せただけでこうなったので仕方ない。
「ナティさんと――「ななな、ナティさん!?」
ナティさんの名前を呼んだだけでルーリが驚き声をかぶせてきた。
「ユウ!そんなに気易く呼んでいい御方じゃないわよ」
「ルーリさん、でしたよね?私がそうお願いしたのです。ユウさんを尊敬してますし」
「ナタリア様がユウを尊敬??」
おいなんだその顔は。テンパリ過ぎて?が顔支配してんぞ。
「そう言う事だ。ところで二人は知り合いだったのですか?」
「ええ、そうね。直接話した事は数えるくらいだったけどね。そうよね?」
ルーリが背筋をピンと伸ばし答える。
「はい!覚えていただけて光栄であります!」
お前はどこの体育会系だよ。光栄であります!って。
「おい嬢ちゃんよ。緊張する事はねぇぞ。今はユウの右腕なんだろ。ドーンと構えておけ。ランキング1位の右腕なんだ。オロオロしてたら舐められちまうぞ」
「そうよルーリさん。もっと力を抜いて」
なんかエルさんがまともな事言うと違和感があるんだが。ただ言ってる事は本当の事だ。俺も勉強になった。
ただルーリって俺の右腕なの?
そうだとしたら俺の右腕いっつも何処か飛んで行っちゃうんだけど?右腕ない時の方が多いんですけど?
「はい!わかりました!これからはしっかりしていきます」
そんな考え事をしていたらルーリが涙目で返事していた。まぁいいか、左腕だけで頑張れば。
「ところでなんでナタリア様がここにいるんですか?」
「ナティでいいわよ。」
「いえ、滅相もありません」
「そう?ユウさんの右腕という程なら構わないんだけどね。そうそう、私がここにいるのはエルウィン様と同じ様に同盟に加えてもらうためよ」
初耳なんだけど。慌てて話に入り込む。
「え?同盟ですか?」
「ええ、ダメかしら」
いや、ダメじゃないんだけど。ただ同盟に加わって何か得があるんだろうか?俺的には味方が増えるのは大歓迎だけど。
「理由を聞いてもいいですか?」
「ええ、いいわよ。1つ目はエルウィン様が勧めたから。2つ目は実際自分の目で見て信用できたから。3つ目は楽しそうだから。こんな所かしら」
楽しそう……ね。実際楽しいから間違いではないな。
ただ信用できるような事を言った覚えはないんだよなぁ。何かスキルでも持ってるんだろうか?
ここで聞いても教えてくれないだろうし、だからと言って断る理由もない。
「分かりました。私に断る理由はありませんよ」
「では、これから同盟の一員としてよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
そう言って握手を交わす。
「じゃあ同盟の祝いに乾杯しようぜ!」
そうエルさんが音頭を取ってみんなで乾杯した。まぁエルさんが信用してるようだし大丈夫だろう。もし裏切るような事があればその時はその時だ。楽しませてもらおう。
その日はカジノ、闘技場、そして賭けにと大いに楽しんでもらって夜は俺達の家に泊まってもらったのだった。
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