67話 歯車は回り続ける
「で、先ほどの話は本当の事なのですか?」
ハンが飛び出していったドアを見つつそう問うギルド長。
「先ほどの話?帳簿が2冊あるってこと?」
「ええ。それが事実ならしっかりと調べなければいけませんので」
「いや、適当に言ってみただけだよ」
「は? ではあの人が言っていたって話は?」
「それも適当に。でも何か心当たりありそうな顔だったなぁ」
「はぁぁ。まったく勇者の使いでなければ怒りたいところです」
フフフ、怒ってもいいのだよ。ギルド長。
帳簿が2冊ある事は事実だし、あの人が言ってたのも本当だからな。適当と言う言葉はだね、適度に当たると書くのだよ。
さてハンの奴隷が紛れているって情報も教えてあげたし、そろそろお暇しますかね。
「ではこれからのお付き合いよろしくお願いしますね」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
そう、俺がここにいる理由はハンの奴隷を暴くのとベガス商会の申請の確認だった。
申請は店長がジョシュに決まった昨日のうちに出して受理されていたし、あとは税やルールについての最終確認である。
そこへたまたまハンが遊びに来てくれただけだ。
そのおかげで面白い展開にもなったしな。結果オーライである。
ギルド長と握手をし部屋を出る。
「あ、ドワーフの服やポーション類はギルドにも少しでいいので流して下さいね」
「それは私の仕事ではありませんので。店長のジョシュにお聞きください」
「はは、そうさせてもらいますよ。ではまた」
「失礼します」
詳しい商売の話は基本配下にスルーである。それでなくても最近仕事ばかりしてるのだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
※ ハン視点 ※
やっと店に着いた。
「おかえりなさいませ、商会長」
「ああ、妻はどこにいる?」
「会長室にて仕事をなさってます」
「私の部屋か丁度いい。誰も通すな」
「かしこまりました」
そう言って自室に戻る。もちろんメアは付いてきてはいない。
自室の扉を開けると中には妻であるアンが寛いでいた。
こいつ、俺が苦労してるというのに………。
「あら、あなた。おかえりなさい。新しくオープンした店とやらはどうでしたか?」
「ジョシュが店長をやっておった」
「は?ジョシュってあのジョシュ??」
「ああ、俺達が陥れたあのジョシュだ。しかも客が並ぶように入っておった」
「な、何てこと………。どういたしますか?ギルドに掛け合って」
「もう行った!だが私の奴隷が入っている事もばれてしまった!おまけに………」
待て、ここで素直に聞いてこいつが認めるだろうか?しかし聞かない事には真相は分からないままだ。
「アン、勇者の町について聞いておるか?」
「突然なんです?それより奴隷の件はどういたしますの?」
「答えろ!勇者の町を知っているか?」
「え、ええ。知ってますわ。なんでも夢や希望の町だとか。連れて行って下さるの?」
やはり知っておったか。それでわたしを裏切ったのか?
「その勇者の使いと言う奴に"帳簿が2冊あると、ある人物に聞いた"と言われたのだ!その事を知っているのは私とお前だけだ!この意味が分かるか?」
その言葉にアンは驚き目を見開いている。やはりお前だったか!
「あなたは私がそれをその使いの者に密告したとお思いなのですか?」
「俺以外お前しか知らないんだ。お前を疑うのは当然だろう」
「それで私に何の得があるというのです?」
「罪を軽くしてやるとか、助けてやるとか言われたんだろう!」
「その使いとやらは罪を軽くする権力をお持ちなのですか?そもそも私の名前を言ってたわけではないのですよね?」
ぐ、確かにアンの名前を言ってはいない。あの人と言っただけだ。
「言ってない。それに権力も何もないただの使いだろう」
「でしたら私には何の得もありませんよね?もし得があったとしても今の生活を追われてしまうのなら全てが損ですわ」
確かに言われてみたらそうだ。罪を軽くしたところで逮捕されるのは明らか。逮捕されてしまえばこの生活もなくなってしまう。
そんな事をこのアンが許すはずがない。
「くそっ!では私は口車に引っ掛かり、まんまと騙されたってことか」
「多分そうでしょうね。ただ普通の人は帳簿が2冊だなんて嘘をとっさに思い付かないと思いませんか?今後注意しておく方がよろしいかと」
「あ、ああ。そうしよう」
何だかうまく丸めこまれてしまった気がするが言い返す言葉もなかった。
「ところで、そのジョシュが始めた店はどうなんですの?」
そうアンに聞かれたので改めて説明したのだった。
「ではうちのゴルド商会も安売りするしか道はありませんね」
「やはりそれしかないか」
こんな筈ではなかったのに………。
「今は、です。客を取り返してその店を潰してしまえばまた好きなだけ儲けられますわ」
「な、なるほど!さすが私の妻だ!」
「その妻を先ほどまで疑っていたのは誰でしたかしら?」
「す、すまなかった……」
「それと、最近噂であなたが町娘を口説いて妾にしようとしたと聞きました。それに何人も妾がいるとも」
「だ、だれがそんなデタラメを!」
「あなたを信じてよろしいのですよね?」
「もちろんだ!私はそんなことしていない!」
まずい。最近派手にやり過ぎたか……。メアともしばらく控えよう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
※ ユウ視点 ※
戦いたい!
ここ最近戦ってない。戦いたいのだ。
「セバス、運動したいからバトル出ようかと思う。」
「ユウの好きなようになさいませ」
よっしゃ、久しぶりに暴れてやろう。
って思ってたのにルーリに止められた。
「今日は私が出るんだから諦めなさいよ!」
「やだ、やだやだ!」
「子供か!」
「戦いたいー。戦いたいー!」
「あの戦闘民族のサ○ヤ人だってもう少し大人だったわよ!」
いや、あいつら敵を強くさせるために見逃したり、敵がパワーアップするのを待ったりしていてかなり自分勝手だったぞ!
「じゃんけんで決めようぜ!」
「い・や!今日は私」
「はい。最初はグー!じゃんけんぽん!」
負けてしまった。不意打ちで攻めたのに負けてしまった。
俺のAGIを持ってしても負けるとはルーリめ腕を上げたな。
そして俺は知らないフリして出ようとしたらセバスに止められた。
「ユウ、そろそろ人数も増えてきましたし上級の試練も開放致しませんか?」
「ブーブー」
「可愛くありませんよ?」
「わかったよ!やるよ、やりますよー」
今日は弟子の観戦するから明日ね!
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