59話 『キングダム』
戦闘狂のおっさんをようやく宥め、やっとゆっくり紅茶を飲む。
「なぁエルさん、転移使えるんだろ?」
「ああ、使えるぜ。どこか行きたい所でもあるのか?」
「いや、そうじゃなくてさ。今からエルさんのダンジョンに俺を連れて転移して陣を置けばいいかなと思ってさ」
「今からぁ?俺のダンジョン来たって何も楽しくねーぞ?ここの方が何百倍も面白いんだしまだいいだろ」
「エルさんはそれでいいかもしれないけど同盟組んだって補佐さんにも伝えたいしさ。エルさんどうせ伝え忘れるでしょ?」
「俺の信用ねーな、ハハハ。分かった、じゃあ今から行くか」
「じゃあ陣の用意をするから少し待ってく―――――」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よし着いたぞ。ここが俺のダンジョン『キングダム』だぜ」
「着いたじゃねーよ!陣用意するって言ったじゃねーか!」
俺の言葉に周囲がざわつく。
「おかえりなさいマスター。そちらの不躾なお嬢さんは?」
あ、これは俺の態度が気に入らなかったようだ。このナイスミドルな方が補佐さんだろうか?
「おぉ、バルス。帰ったぞ。こいつが先日王都に来たダンジョンマスターだ。ユウってんだ」
「どうも初めまして。お邪魔してます。ユウと言います」
一応丁寧に挨拶してみる。第一印象はとても大事なのだ。
「これはご丁寧に。このダンジョンで補佐をやってますバルスです。ところでさっきの会話はどういった意味でしょうか?我がマスターが文句を言われていたようですが?」
うわー、やっぱり怒ってるわ。気付かなかったけど危険な名前だし、崩壊呪文だし!
「あーこれは失礼しました。エルウィンさんをエルさんと呼ばせてもらって同盟を組んでもらうことになりました」
「は?マスターどういう事ですか?」
「ん?そう言う事だぞ」
ちゃんと説明しろよぉぉぉ!
バルスさんがバルスしちゃうだろうがぁ!!
「意味が分かりませんが。何故ランク1位のマスターが新人と同盟を組むのですか?」
「ああ、多分次の集まりではユウが1位になるぞ。それもぶっちぎりでな」
「な?本当ですか?」
「ああ、昨日1日で2500万DPを越える稼ぎだしてたからな」
「に、2500万・・・?」
「それで同盟も対等同盟だ。どっちが上でも下でもねぇ。だから敬語もいらねぇと俺が言ったんだ」
「そうですか。マスターがそう言うのでしたら承知しました。ではユウ様こちらへどうぞ」
そう言って応接室の様な所へ案内された。そこでまずはコーヒーを頂く。
「まったくエルさんのおかげでいきなり印象悪くするところだったわ」
「ハッハッハ。気にするなユウ。転移陣なら俺が召喚しておくからよ」
「マスター転移陣とは?」
「ああ、こことユウのダンジョンを転移陣で結んでいつでも遊びに行けるようにするんだ。ユウのダンジョンがオモシレーんだよ」
「それと俺もエルさんのダンジョン見たかったし」
そこでバルスさんに転移陣を使える人数をお互い4人だけにすることを堤案され了承した。
設置する場所は専用の部屋を用意してくれるらしい、こちらはアイシャ達の家が良いだろう。
いくら同盟を組んでるとはいえコアルームのある1層にいきなり来られても困る。俺達もいつでも1層の家にいるわけではないしな。アイシャを通して念話で伝えてもらおう。
「エルさん、転移スキルが使えるなら陣を使わず直接来られるんじゃないの?」
「ああ、まだ知らなかったか。転移で他のダンジョンの中までは入れないのさ。地上は大丈夫なんだがな」
「え?だって俺さっき転移で来たよ?」
「ああ、それは俺がいたからだな。そのダンジョンの関係者が連れてきたってなら入れるようだ。だからやたら転移は配下に与えるなよ」
「その配下が脅されて転移でここまで来てしまうってこともあるのか」
「そう言う事だ。いくら配下が忠実でも中にはいろんなのがいるってことさ」
そういう事もあったんだろうな。言葉に気持ちがこもっている。
うちで転移を持ってるのはルーリとアイシャか。
アイシャは奴隷紋で俺の不利益になる事は出来なくなっているが・・・・一応注意しておくか。
後はルーリね。奴も大丈夫だろう。根拠はないけど。
「ところでマスター、報告があるのですが」
ちらりとこちらに視線を向けながらそう話しかけるバルス。
「あ、席をはずしましょうか?」
「ユウ様にも関係のある報告なのですが、よろしいでしょうか?」
「それなら尚更ユウにも一緒に聞かせてやろう。ユウも構わないだろ?」
そうエルさんに聞かれたので、構いませんよと答えた。
しかし俺に関係のある報告ってなんだろうな。
「王城の(王に憑依している)ギルからなのですが、一部の貴族がニューべガスを攻めましょうと嘆願してきているとかで対応を求めてきています」
ああ、まだ収まってなかったのね。
「だってよ、どうするユウ?」
「構いませんよ。町の場所はここです」
そう言ってワイバーンから聞いた大体の場所を紙に書いてエルさんに渡す。
「いいのか?やっぱり戦闘狂だな、わはははは」
「エルさんと一緒にすんな。DPだってDP!」
「分かった分かった」
そういって渡された紙を見やる。
「王都から馬でも7~10日くらいか。もしかすると転移陣の置いてある家から攻め込んでくるかもしれないぞ?」
「ああ、それならそれでもいいよ。かえって領域内で殺せるだろうから嬉しいね」
「ぶはっ!やっぱおめーは面白いわ。そう言う訳だからバルス、伝えておいてくれ。『国の兵は出せないが領兵でやるなら構わん。勝ち取ったらお前達にあの町を与える。ただし負けた時の責任はお前達が取れ。国は一切関与しない』とな。」
「かしこまりました」
「っていう訳だユウ。同盟組んでいきなり死ぬんじゃねーぞ」
「ああ、いい報告を待っててくれよ。それに準備もあるからすぐに来るわけじゃないだろ。その間にこっちも準備を進めておくよ」
この時点で迎え撃つためのいい案が浮かんでいたが、エルさんに言う事でもないので黙っておく。
それよりも今は自分以外のダンジョンについて聞いておきたい。
「それよりエルさんのダンジョンって今は何階層なの?」
「今か?400~500じゃないか?なぁバルス」
「はい。425階層です」
425!そんなに深くなってるのか~
「で、人間の最深到達はどのくらい?」
「100は行った事ないな。95くらいだ」
うわーまだまだじゃないかよ。まだ全体の1/4しか進んでないのか。
でも多分人間達は「あと5階層でラスボス!」とか思ってそうだ。
「じゃあコアレベルも相当なんだろうね」
そう言うとバルスが口を挟む。
「マスター分かっていると思いますが」
「ああ、分かってるさ。それについてはレベルのみしか教えられないが今は9だ」
へぇ。召喚内容は教える事が出来ないのか。
「あれ?でも俺ルーリにいろいろ教えちゃってるけど。あいつも元ダンマスだけどいいのかな?それに昨日俺の召喚できるものも教えた気がするんだけど?」
「ああ、配下になった元ダンマスになら教えても問題ないぜ。それにコアレベル上のヤツが下のヤツに条件とか機能なんかは教えられないってことだ」
「ならよかった。エルさんも元のダンマスについてとかよく知ってたね」
「あ…。――俺は物知りだからな、ハハハハ」
なんだ、その「あ…」は?そんな目で見ていると
「これも言えない事なんだよ。危うく言いそうになったんで慌てたってことだ。これ以上は聞くな。うっかり喋っちまったらまずいんだよ」
「何だ、そういうことね。隠し事されてるかと思ったわ。よく考えたらエルさん隠し事とか無理だしな」
「甘く見んな。俺だってな隠し事の一つや二つあるわ」
それを聞いたバルスがこう言う。
「ダンジョン運営に関わる事でしたら大変です。あとでしっかり聞かせていただきましょう」
こちらを見るエルさん。いや俺のせいじゃないでしょ(笑)
こうして無事?顔合わせも終えエルさんから転移陣を受け取った俺は一人でダンジョンへ転移で戻る。
エルさん?ああ、バルスさんに2日も開けるなんて、と怒られて残ったよ。
これで今日のバトルも安心して参加できる。
自宅旅館に戻るとすぐセバスがやってきて
「おかえりなさいませユウ。ご無事でしたか」
「ああ、ただいまセバス。普通に話してきただけだ。最初は補佐のバルスさんに怒られそうになったけどな」
「バルス様でしたか……よくご無事で………」
なんか安堵感半端ないんだけど?え?怖いの?滅びの技あるの?
気を取り直し早速アイシャの家に転移し、普段俺達が飛んでくる部屋に転移陣を設置した。
通れるメンバーは今のところ俺、セバス、ルーリだけにしておいた。
「さてセバス、アイシャ。主だった者達を今夜1層の俺の家に集めてくれ」
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