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04 濃霧の謎

 

 あまりの衝撃に私は何度も鑑定紙を読み返したが、そこにはやはり同じ事しか書かれていなかった。


「え、でも…天使族ってなんだろう?私、人間じゃなくなっちゃったの…?」


 私の問いに答える人はおらず、そこにあるのは何度見ても変わることのない鑑定紙の結果だけだった。


「いやいやいや、やっぱり何かの勘違いじゃ…」


 もう何度目かという結果の確認を行ったが、得られたものは謎の文字が読める違和感の気持ち悪さだけだった。


「うーーん……よし!もうこれ以上気にしない!」


 この状況を見て神が楽しんでると思うとなんか癪なので、私は無理やり納得することに決めた。

 異世界に転生して種族が変わった?なんぼのもんじゃい!

 しかし、天使というのが天の使いだとすると、私はアイツの使いということ…?えー、なんか嫌。

 あとは、他のスキルについて考えておこうかな。でも、同じスキルでも二種類あるような匂いがする。

 例えば収納はいわゆるアクティブスキルだけど、この天使の恵みとかいうやつなんかはいわゆるパッシブスキルみたいなものでは無いだろうか。

 という訳で、早速検証だ!


「天使の恵み!」


 ………。

 ………。

 うん、何も起こらないね。私の予想は当たってたようだ。

 それにしても、なんか何度も収納を使っていたらスキルを使うのにも慣れてきた。恥ずかしがってた頃の自分が懐かしい。二日前だけど。


 一応スキルを全部確認してみた結果、どうやら収納以外は全部パッシブスキルか何らかの理由で発動しないアクティブスキルのようだった。

 パッシブスキルであるにせよ今は発動することが出来ないアクティブスキルにせよ効果の確かめようはないのだが、特に気になるスキルは──読心術以外は全部名前じゃよくわからなくて気になるね。

 いや、ある意味一番気になるのは読心術かもしれない。使おうと思えば使えるものなのか常に使われてしまうのかでは、大きな差がある。これは他の生き物と遭遇してみないことにはわからないだろう。

 結局鑑定紙を使って得られたものは、自分がわけのわからない生き物だということと効果のわからないスキルを幾つか持っているということだけだった。

 これって、何もわかってないのと同じなんじゃ…?それともあれかな?何もわかってない事をわかっているっていうソクラテス的なアレ…

 とにかく、これ以上ここで考えていても仕方が無い。私は当初の予定通り、今日は森の探索をすることにした。


「収納!」


 目の前に真っ黒の空間が現れる。私はなんとなくこれを収納空間と名付けることにしたのだが、その収納空間から剣を取り出しておいた。


「今度こそしゅっぱーつ!」


 こういうのは気分を作るのが大事なのだ。掛け声は必須だよ!




 家から出て少し歩いたのだが、私は既に異常な現象に巻き込まれていた。

 家が見えなくなってきたあたりで、突然濃霧が発生しだしたのだ。

 これでは印をつけるだけじゃわからないと思い、仕方なく一本道になるように木を切り倒していくことにした。

 木を切り倒すのはかなり大変──だと思ったのだが、この剣はどうやら特別なものらしく、何故かはわからないが木を豆腐のようにスルスルっと切断してしまうのだ。

 正直私も木をスルっと切り倒した時はかなり困惑したのだが、この剣にも何かスキルがあるんじゃないかという結論に至った。

 流石にとても鋭利だとかで片付けられるレベルの話ではないので、十中八九スキルがあると見ていいだろう。スキルでは無い何か別のこの世界特有のルールがあったらそれまでだが。

 そんな訳で一々木を切り倒すのに手間を取られずに済むなと安心した矢先に、またもや問題が──今度は解決された。

 突然濃霧がスーッと消え去ったのだ。慌てて後ろを確認すると、そこには濃霧で一寸先も見えない真っ白の空間があった。

 これはもしや戻れないやつ!?と思って戻ってみたが、やはり濃霧に包まれてまたすぐに濃霧が止むと、そこにはちゃんと家があった。

 しかし、切り倒した木や印をつけた木はどこにも見当たらず、ここが何か特別な場所なんだということを私は嫌でも理解させられた。

 それでも、濃霧を突っ切れば家に辿り着けるということなので、これはかなり便利だ。濃霧が晴れた先は木もまばらな周囲を見渡すことが出来る森だったので、一応印をつけるのはやめないが、迷う心配はもうなくなったと言ってもいいだろう。

 再び濃霧の先に出ると、そこはとても現実感のある景色だった。

 空気はキラキラしていないし、風の吹く音や何かの呻き声も聞こえる。


 ………ん?呻き声?


 嫌な予感がしながら呻き声のする方を振り向くと、そこには私の七、八倍ほどの大きさのゴリラがいた。


「Grrrrr...」


 そのゴリラが真っ黒の瞳で、私を見下ろしてくる。私はあまりの恐怖に、その場から一歩も動くことが出来なくなってしまった。

 そして、私とそのゴリラが見つめ合って数秒が経つと、そのゴリラは私に興味などなくなったかのように立ち去っていった。

 ゴリラが立ち去ってからしばらく固まったままだったが、段々と緊張から解き放たれていった私はふと読心術の事を思い出した。

 先程ゴリラの見つめ合った時は、ゴリラの考えていることはわからなかった。

 ゴリラが私を見てしばらくしてから立ち去ったということは、その間に何かを考えていたのは確実だろう。そこで読心術が発動しなかったということは、もしかしたらこれは発動のON/OFFが出来るのではないだろうか。

 ただ単にゴリラの知能が低くて発動しなかったという可能性もあるが、これはこの読心術のスキルに期待が持てる。

 そう思うと、先程のゴリラに対する恐怖も薄れてきた。しかし、この森にはあんな化け物がいっぱい居るのだろうか?だとすると早々に人生を諦めたいレベルなのだが、さすがに神もそこまで理不尽ではないだろう。

 それを確認するためにも、まずはこの森を探索しなければならない。先程のゴリラにまた遭遇したら次はないかもしれないから、これからはきちんと周りを入念に警戒して進もうと決意して、私は本格的に森の探索を開始することにしたのだった。


ゴリラ……でけぇ……(自分で考えた設定やろが)

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