第2話:イージス、覚醒-Aegis, awakening -
他の世界線シリーズ(なろうへ移植済の物及びpixivオンリーの物を含めて)に出てくる用語等も出てきていますが、チェックが必須という事ではありません。チェックしていると思わずニヤリと思うシーンもいくつかある…という範囲になります。
今回は、今までとは違って専門用語は控えめになるような気配もしますが…。
>更新履歴
・2015年5月6日午前11時36分付け:前書き簡略化、行間を含めて大幅調整。本編内容に変更はありません。
西新井にある某所、その部屋は非常に広く、20畳はあるだろうか? テーブルには、かなりの数の雑誌がバラバラになっている。
他にも音楽ゲームの筺体が置かれていたり、パソコンも3台置かれているようだが、何かの研究室と言う訳ではなく普通に部屋らしい。
この人物の趣味は、歴史の観測である。しかも、戦国時代や近代歴史のような物ではない。
彼女がターゲットとしているのはゲーム作品やアイドルなどのサブカルチャー的な歴史である。
「私の名前は西雲冬真。世界の中に存在するアカシックレコードにアクセス出来る―」
メイド服を上手く着こなしているように見える黒髪のショートヘアーで前髪はぱっつんの女性、身長は180近く、3サイズは81、60、88位か。
彼女の名は西雲冬真、西雲はネットラジオ番組のパーソナリティーをやっており、その生放送をしているようだ。
その番組名は《アカシックレコード・プロファイル》である。番組名に深い意味はあるのか、それは誰も知らない。
「今回、皆様に解説する単語は、アイドル戦争です」
アイドル戦争、それは西暦2014年の5年前である西暦2009年に起こりました。
女性超有名アイドルグループと男性有名アイドルによるコンテンツ頂上決戦…という風に雑誌等では言われていますが、真相は謎が多いです。
主に物理戦闘や特殊能力を駆使して戦っていたという風に記録されていますが、どのようなトリックを使ったのかは不明です。
一説にはARゲームと言われていますが、それでは説明のつかない現象もありました。それが、イージスの使用したディーヴァシステム…。
このシステムに関しては後々に解説しますが、一つだけ言える事は動画タグ的に言えば【人類にとって早すぎたシステム】という事です。
ディーヴァシステムの力に関しては、記録映像を見た皆様ならば…お分かりいただけると思います。
その一方で、超有名アイドルが使用していた武装にはオーバーテクノロジーが数多くあり、アニメやゲームの世界とも言われる位の物だったという記録も残っています。
このアイドル戦争には、陰謀説もある訳ですが…。どちらにしても、アイドル戦争には疑問が残る部分が数多くあり、今も研究が続いています。
この研究で真相を突き止めたその時、この超有名アイドルコンテンツが永遠に繰り返される連鎖を断ち切る事が出来るのかもしれません。
私は考えます。利益を追求する為ならば、犯罪にならない範囲でありとあらゆる手段を取ろうと考えた芸能事務所等がアイドルバブルを生みだし、更には一連の事件を生み出したのだと。
アイドル戦争にかかわった人物は、その何人かの詳細が明らかになっていません。アイドルを辞めて別の職業に就く人物もいれば…と、ここで言っても仕方ないですね。
(後略)
「それでは、また次回にお会いしましょう」
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西暦2014年5月1日、4月に宣言された『アイドル・クラッシャー』という新たなエンターテイメントを巡って動きがあった。
5年前、日本ではアイドル戦争と呼ばれる争いがあったのだが、それと同じような展開を呼ぶのでは…と一部では言われている。
『アイドル・クラッシャー』のルールは単純で、相手リーダーを撃破すれば勝利と言う物だ。
人数構成は1対1でも100対1でも1000対1000でも相手側の同意があれば問題はない。
リーダー以外のメンバーを撃破した場合、倒した人数に応じて賞金が得られる。
補足ルールとして、バトルに参加できるリーダーは1名のみ、修理と補給ユニットは1体までと言う制限がある。
エントリーユーザーは100万人に迫る物があるというが、実際は水増しされているという話も浮上していた。
どちらにしても、政府がエンターテイメントに介入するのは裏があると考えているらしく、それがアイドル戦争と同じ展開になるのではないか、と言う意見を生み出したのだろう。
それとは別に『アイドル・クラッシャー』は政府主導ではなく、別の勢力が関係しているのでは…と思っている人物もいた。
その理由として、今回からの新シーズンである『アイドル・クラッシャー2』では次期総理大臣の称号を与えるという要素があったからである。
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西暦2014年5月1日午前10時、警察車両を思わせるような武装パトカー5台が煙を上げている。パトカーのパトランプは点灯しておらず、白旗が上がっている。
「何だ、あのロボットは? アイドル戦争のイージスだというのか!?」
煙を上げているパトカーに乗った20代位の警察官のコスプレをした人物が、頭を抱えながら声を震わせている。
《機能停止させた車両は、リーダー機ではない模様。有効的な戦闘方法を提案―》
イージスAIがパイロットに指示を出す。そして、パイロットは無言でタッチパネルを操作し、次に倒すべきターゲットを見つける。
乗っているのは女性で、身長180センチ、3サイズは90、65、95らしい。服装はハルトと似たようなタイプのパイロットスーツで、肌と密着する関係上で下着ははいていない。
(はいているように見える凹凸は、ニップレスとまえばりかもしれない)
女性は無言でターゲットのアイコンをタッチし、手早い動きで目標をロックし、フェザーファンネルを放つ。
その後、ロックされた目標の武装パトカーは撃墜、パトランプから白旗が展開され、相手は機能停止をしたようだ。
《先ほど機能停止させた物を含めて、全てリーダー機ではない模様です。ハイスピードな戦闘方法を―》
イージスAIは彼女の戦闘スタイルに不安を抱き、効率的な戦闘方法を指示するように催促をするのだが、それを聞き入れるような気配はない。
『アイドル・クラッシャーには、リーダー機を撃破するとゲーム終了というルールもある。それまでに他の機体を撃破すれば、賞金もアップする』
彼女は淡々とイージスAIに説明をする。イージスAIにはアイドル・クラッシャーのルールを入力というか、データをインストールしたはずだが…。
《それが理解できません。必要以上の機体を撃破して、その果てに何を望むというのですか?》
『私が望むのは、超有名アイドルファンのような過激な存在を根絶する事。そして、音楽業界を新たな時代へ導く事』
《超有名アイドルファンを根絶…。その考えは理解できません。音楽業界は全てのジャンルが共存できるような場所へ変える事、それが理想ではないのですか?》
『理想論の押し付けは、やがて超有名アイドルを神化しようとする勢力に利用される。それならば、自分は超有名アイドル商法を根絶する道を選ぶ』
《あなたも、ハルトと同じ理想なのですか?》
AIとパイロットの論争が続くが、イージスAIの最後の一言は、彼女を黙らせる効果があったようだ。
〈ビームサーベル〉
パイロットがタッチモニターのビームサーベルアイコンをタッチすると、両腰からビームサーベルが展開され、イージスが両手でサーベルを持ち、それを構えた。
『私は、彼とは違う!』
初めて彼女は感情に身を任せ、ビームサーベルで同じサイズに近いポリスロボットの右腕を切り落とした。
そして、ポリスロボットの左肩から白旗が現れ、その旗にはリーダー機を現すチームエンブレムが書かれていた。どうやら、これで勝負は決まったらしい。
〈アイドル・クラッシャー終了。チーム2課ポリスリーダー機撃破に伴い、イージスの勝利となりました〉
周囲のスピーカーからバトル終了を知らせる放送が流れる。そこで流れたのは、何とイージスが単独であるという事実だった。
「バカな! 50人相手に、たった1機で撃破したというのか?」
チーム2課ポリスのリーダーと思われる男性は悔しいという表情を浮かべる。
チームを組む事は強制ではない為、1人チームもありというアイドル・クラッシャーで、ガチで1人チームというのはイージスだけだ。
しかも、単純にメンバーがいないだけではない。他にも数人のスタッフがいるらしいが、基本は非戦闘員の為にバトル参戦をしていないのである。
『イージス、次のエリアへ―?』
パイロットの女性が次のエリアへ向かうように指示をするが、イージスが向かう先は西新井にあるガレージエリアだった。
『イージス、どういう事なの?』
《先ほどの戦闘で、エネルギーを予想以上に消費。現状の残存エネルギーでは戦闘の続行は不可能と判断します》
『なら、補給ユニットを使えば…』
《我々は単独行動です。修理および補給ユニットは使用できません》
イージスAIとパイロットの対話が続く。結局、イージスAIの言う事に一理あるので、西新井のガレージエリアへ向かう流れになった。
【あのイージス、本物なのか?】
【本物以前に、イージスが複数体確認されたという事をネットでも聞かない】
【つまり、あれはオリジナルのイージスなのか】
【外見が微妙に変更されているように見えるが、アイドル戦争の動画を見る限りでは本物だと思う】
【もしかして、パイロットも同じなのか?】
【あの戦い方とは全く違う。AIが学習している可能性も否定できないが、最低でもパイロットは別人だろう】
ネット上で今回の戦闘を見たユーザーが感じたのは、イージスのパイロットが別人に代わっている可能性があるという事だった。
一方、北千住近くのゲーセン前、イージスの試合動画を見ていたのは黒のショートヘアに背広、男性と思われるような体格の女性だった。
名前は上条麗菜、かつては芸能界でも有名なアーティストとしても有名な彼女が、どうしてアイドル・ガーディアンの動画を見ていたのか?
「これは、例の勢力が動きそうな予感がする」
しかし、彼女は芸能界を離れている。更に言えば、その直接原因はアイドル戦争なのだが…。
「動き出す前に手を打たないと…」
彼女が取った行動、それは何処かへとメッセージを送る事だった。
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今から2年前の西暦2012年6月、彼女が廃工場でイージスに出会ったのはその時だった。
午前11時、とあるゲームセンターへ向かおうとした時に、不思議な光を彼女は目撃した。
「この光は…」
彼女の名前は水上沙夜、超有名アイドルの握手券商法や過激なファンの存在もあってアイドルファンを辞め、今は音楽ゲームの楽曲をメインに聞いている。
水上が工場内に入ると、そこには1体のロボットがしゃがみ状態で置かれていた。整備はされているように見えるが、埃をかぶっている個所も目立つ。これが、イージスだと知ったのは後の話だった。
「あなたが、呼んだの?」
イージスの装甲に触れた水上は、コクピットハッチが開いた事に驚いていた。
コクピット内に入った水上が驚いたのは、シートに置かれていた白をベースにしたパイロットスーツと、SFアニメに出てくるようなエッジが効いたようなメットだった。
《おはようございます。マスター》
そして、メットを手に取った水上に対し、イージスAIが声をかけてきた。これには、水上も周囲を見回して何処から声が出ているのか確認をする。
《あなたの手に持っているメット、それを通じて会話をしています》
何かに気付いたイージスが水上に対して話す。どうやら、彼女がメットから手を放そうと考えていた事で、何とか…と。
「あなたは一体何者なの?」
水上の問いに、イージスはこう答えた。
《私の名前はイージス、ディーヴァシステムのテストタイプとして作られた超AIです》
「ディーヴァシステムって、これ?」
イージスの答えを聞き、水上はスマートフォンの中に入っている動画の1つを見せた。
《これは何でしょうか?》
動画では湖に浮かびあがるドラゴンの1枚絵が表示されており、後は動画の説明文や作者コメントが書かれている。俗に言う、オリジナル曲と言う事らしい。
「ディーヴァシステムは、動画サイトでも有名な音楽作成ソフトの1つとして知られているわ。あなたに見せている動画も、それを利用して作られた楽曲よ」
《今から、ネット環境アップデートを始めます。2012年の出来事やカルチャーを中心にアップデート―》
水上が見せた動画を見ても事情がつかめないイージスは、ネット環境のアップデートを始めた。その速度は、30秒にも満たないスピードだった。
《アップデート終了しました。ディーヴァシステムが、現在では動画サイトで有名な楽曲にも利用されている事を把握。フィギュアや関連グッズ、楽曲コンテスト、音楽ゲーム等でも利用されていることも分かりました》
「30秒にも満たないスピードで、そこまで調べるなんて。あなたは何年前のデータを参考にしていたの?」
《西暦2009年のデータを参考にしていました。この当時には、ディーヴァシステムは軍事利用や兵器として利用される事を前提に開発されていました》
軍事利用と聞いて、水上は言葉も出なかった。むしろ、言葉を失ったという表現が正しいのかもしれない。
確かにアイドル戦争を瞬時にして終わらせるような能力を持っている事を考えれば、歌で戦争を終わらせようという漫画やアニメ、ゲームだけの話と思っていた事も現実になるかもしれないと考えてしまう。
《しかし、軍事転用に関しては手を挙げる企業が現れなかった為、結局は実現しませんでした。そして、先ほど見せていただいた動画のような使用方法が生まれ、歌を簡単に作る事が出来るという部分のみがソフト化されました》
「その辺りは何もメーカー側が発表する事はなかったので、まさか…と思ってましたが」
その後、水上とイージスのやり取りは何度か続き、最終的には水上がイージスに乗る流れとなった。
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水上がイージスと出会う少し前の4月上旬、音楽業界では一つの動きがあった。
【アイドル戦争とは何だったのか?】
【結局、超有名アイドルの宣伝に利用されたような気配がする】
【政府が法律を作ったとしても、買収報道等が頻繁にされている所を見ると…】
【超有名アイドル商法の根絶は夢物語なのか?】
【どうしてこうなった】
ネット上では、超有名アイドル商法が復活しているという噂が光の速さとも言えるような速度で拡散していたのである。
週刊誌報道もアイドル戦争が終わった直後では少なかったが、1年、2年と経過していく内に真相解明を求める声が増えていた。
イージスに関しての議論はネット上で活発な一方、週刊誌やワイドショー等のテレビでは超有名アイドルと政治家の結びつきを指摘する声の方が相次いでいる。
黒歴史になっていたはずの超有名アイドル商法も復活しつつあるらしい…という話も出てくる位に、超有名アイドルの話題が絶えないという事なのだろう。
4月10日午前10時、上野公園では抗議集会が行われていた。その人数は500人を超えるのではないかと言われている。
「我々は立ち上がらなければ!」
「超有名アイドルの完全復活こそ、日本経済を救う唯一の手段である」
「これ以上、日本政府による超有名アイドルの管理を許すわけにはいかない! このままでは、某女性アイドルグループ以外は消滅する事は明白である」
広場の中央で訴えているのは、グリーン、イエロー、ブルーのマスクを被った背広の人物である。おそらくは…。
「政治家によって全てが管理されたアイドル、それが意味するのは人心―」
グリーンの人物が訴えようとした時、武装した部隊が抗議集会に介入したのである。その中にはロボットも数体存在する。
「お前達は何者なんだ?」
イエローの人物が彼らに訊ねる。しかし、彼らが口を開くような気配はない。そんな中で、1人の人物が部隊の中から現れる。それを見た3人は、衝撃を受けていた。
「そんな馬鹿な事が…あるのか?」
最初に声を出して驚いたのはブルーの人物だった。見間違えるはずもない。彼は間違いなく…。
「九音玲二…なのか?」
イエローの人物も言葉に出来ないほどの怒りを、彼の出現で感じていた。サングラスに背広と言う服装だが、身長170センチに黒のセミショートヘアという特徴は、間違いなく彼の特徴と一致する。
九音玲二、かつて同じグループでレッドを担当していた人物でもある。グループ解散後は消息不明と言われていたが、どういう心境の変わりようなのか?
グループが解散し、事務所が強制調査を受けた際も彼の姿はなかった。他のメンバーも強制調査前に事務所を出た為、彼の足取りは他のメンバーが知っているはずもなかった。
そんな彼が、アイドル規制法案の抗議集会に現れた意味、それは…。
「君達を逮捕する。理由は、BLカップリング勢に手を貸すような抗議集会に協力した疑いだ」
九音の話を聞いても意味が分からなかった。3人は真の敵を超有名アイドルと明言し、周囲にいた集会参加者も過去にアイドルグループのファンクラブに入会していたような人物ばかりだ。男性が半数だが、中には女性の姿も見受けられる。
「我々はBL作品とは一切関係のない集会を開いている! 言いがかりはやめてもらおう」
「九音玲二ならば、超有名アイドルが復活する事を一番望んでいるはずだ! 何故、BL作品を逆恨みするような事をする!」
「まさか、日本政府の差し金になったのか?」
他の観客が九音の発言に対して抗議をする。確かに、アイドル戦争が終わった原因は某□□□漫画の信者やBL勢が介入したという事は週刊誌でも取り上げられているのだが…。
「政府の差し金? 私は政府の操り人形ではない。我々は、超有名アイドル解放組織『IKS47』! アイドル規制法案等から超有名アイドルを解放する為に行動している」
どうやら、九音は超有名アイドル解放組織『IKS47』として抗議集会を止める為に現れたらしい。
「残念だが、過激なファンはBLカップリング勢の勢力拡大行為と解釈し、この場にいる全員を逮捕する。これ以上、アイドルを反政府勢力等の道具にする訳にはいかない」
九音が指をパチンと鳴らすと、武装集団の中にいたロボットがホーミングレーザーを放つ。このホーミングレーザーは殺傷能力は一切なく、スタン性能のみを持った物である。
「これ以上、超有名アイドルファンが暴走すれば、海外市場でも超有名アイドルに対して規制法案が作られるのは明白。それを防ぐためにも、こうするしかないのだ」
九音は何かの考えがありつつも、それを全て話すような事はなかった。
その日のニュースでは、速報でIKS47がカップリング勢に正義の鉄槌を下したという事で取り上げられていた。捕まえた集会参加者の中には、某□□□作品の信者が混ざっており、それが大きく取り上げられた格好である。
【予想通りの展開過ぎた】
【やはりこうなるか。結局、彼女達はカップリングが作れれば、周囲はどうでもいいと考える集団だ。一歩間違えれば…】
【某□□□作品→某水泳漫画に移り変わったり、それ以外にも小説サイトのランキング独占、他にも多数のサイトがカップリングで制圧されている現状だ。どこまで彼女達はランキング独占を続ければ気が済むのか?】
【もしかすると、その正体は男性アイドルグループの過激なファンが勢力を分離したとか…そう言った路線かもしれない】
(中略)
【中には少数派で正しく活動している人物がいるのは確かだが、一握りの暴走したファンばかりがクローズアップされた結果、IKS47には反社会的勢力として敵視されているのだろう】
【超有名アイドルにも過激なファンはいたはずだ。それも摘発すればいいのに、どうして?】
【テレビ局としては超有名アイドルには資産価値が残っている。だからこそ、資産価値のないBL作品やカップリング勢を根絶させようという動きがあるのかもしれない】
【どちらにしても、IKS47が行っている行動が超有名アイドル復活に貢献しているのかは疑問に残る。あれでは、逆に海外からは輸出反対の声が上がるのも時間の問題だ】
ネットでは、ニュースを受けて、このようなやり取りがされていた。
何故、有名アイドルグループのメンバーでもあった九音が超有名アイドルを解放する為の組織を作ったのか…。その真相は週刊誌等でも憶測が多数出ている。
その中でも一番関心を集めたのは、要約すると『アイドル法案で超有名アイドルが規制されるのはおかしい』という説だった。
しかし、ネット上では表向きの目的にすぎないと一蹴する動きがある。その理由の一つは、IKS47の行っている行動にある。その一例は―。
〈小説サイトで某□□□作品の創作小説が上位を独占している状況→男性アイドルグループのカップリング小説を書くと、規制法案にかかる為の代用と決めつける→最終的に小説サイトで該当の小説は投稿規制される〉
〈超有名アイドルのCDがオークションで転売されている→某□□□作品の信者が超有名アイドルの評判を下げる為に行っている→出品者を逮捕〉
〈つぶやきサイトで超有名アイドル批判をしているつぶやきを発見→某□□□作品の批判に書き込みをすり替え、しかも最初からコメントをしていたかのように細工→細工に気付かない某□□□信者のコメントで、つぶやきが炎上→炎上のきっかけを作ったコメントを投稿した某□□□信者を一斉逮捕〉
あくまで一例だが、これらの行動を〈超有名アイドル復活の為に邪魔な勢力を力で排除する〉という色が濃く出ている事がよくわかる。
〈男性アイドルと会える…と語る悪質な出会い系サイト→サイトの管理している会社に対して抗議→会社側は拒否→サーバーを丸ごとハッキングでデータ消去〉
補足をするのであれば、出会い系サイトのデータ消去には続きがあり、これによって回収された覚せい剤や拳銃の密輸、裏バイトと言った情報だけを抜き取り、警察へ提出して行動の正当性を主張している。
同刻、西雲の自宅では〈とある物〉を解析中だった西雲が、IKS47に関するまとめサイトをスマートフォンで眺めていた。
「これだけの力技で超有名アイドル思想を復活させようとするとは。IKS47こそ、真の危険思想勢力と言うべきか」
西雲にとっては、超有名アイドルは戦争を生み出す為の道具程度にしか考えておらず、それが無血戦争とも言われたアイドル戦争を生み出した…と考えている。
「いずれ、世界は繰り返す。超有名アイドルのような利益追求型の人間が増えれば、日本だけではなく世界もアイドルバブルで不景気の冬が到来する」
西雲の考えも、常人には理解しがたいものであった。彼女が深刻な表情でまとめサイトを見ていた理由も、おそらくは…。
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次回予告
西暦2014年、『アイドル・クラッシャー』はステージ2となる『アイドル・クラッシャー2』に突入していた。
そして、そこで獲得できる栄誉として次期総理大臣の称号を日本政府が設定する。
さまざまな激闘が展開される中、秋葉原では予想外とも言える人物が現れ、彼女は鮮烈なデビューを飾る。
次回、連鎖のアイドルソング『翼羽アリス、アイドル・クラッシャーを始める』
「超有名アイドル商法の連鎖を断ち切れるのは、誰なのか?」
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