SEVEN 02
石造りの家々が立ち並ぶ小さな村の中に広人はいた。
他のプレイヤーの気配は全くなく、NPCだけが所々に点在しており、来訪者が語りかけてくるのを待っているようだった。
よくよく見ると構造物やNPC、空間の作りこみはマグナスキルオンラインに比べると、雑というよりも古いという印象を広人は受けた。例えば雑貨屋の店頭に並ぶ品々は、大きな板に描かれた絵であり、実際に手にすることが出来なかった。
「初期型のVRMMOはみんなこんな感じだよ。なんとなく遊園地とかのアトラクションに似ていると思わない?ほらほら、このNPCなんかマネキンみたいだよね」
手招きをして広人を自分のいるところへ誘おうとしている女性は、自らをSEVENと名乗った。
白い空間にいた黒い球体が姿を変えたものである。
「貧相な作りを補うために、やたらと光るオブジェクトも多いしね。見ようによっては色の付いたガラスみたいだけど」
黒髪を後ろでひとつにまとめ褐色の肌色をした女性アバターは、現実世界のアラブ系の人々に似ていた。端正なくっきりとした顔立ち。艶やかな瞳と目が合うたびに広人は動揺した。そんな広人を見て時折SEVENは笑顔を浮かべた。
「君、彼女いるんでしょ。あからさまにそんな態度するようじゃ、おちおち街中デートなんて出来やしないじゃないか。カップルにちょっかい出すのは男性だけとは限らないんだよ」
「彼女…か」
「いないの?」
「まあその…なんて言うかそれらしいものは何となく…」
あはは、声を上げたSEVENは広人に駆け寄るなり、彼の腕を掴むとそこに自分の胸部を押し付けてきた。
「わっ!」
再び声を出してSEVENが笑う。
「君、面白いね。あはは」
少し悔しげな表情をしながら広人は聞いてみた。
「このゲームは何というゲームですか?」
「名前か…名前ね」
不意に物憂げな表情を見せながらSEVENは言った。
「ここはね、閉鎖されたVRMMOなんだよ。今のところ無料サービスゲームとして再生するためにデータは残っているけど、引き取り手が見つからない場合は消滅してしまう運命にある」
「そうなんですか?」
「過疎で閉鎖に追い込まれたVRMMOなんて、世界中いくらでもあるよ。過疎だけが原因って訳じゃないけどね。他にはプラットホームOSやハードの世代変更のためって事もあるけど。基本的にハードは大きな要因にはならないんだけど、どうしても処理速度とかの点では新しいものにかなわないからね」
「なるほど」
「というか君、時間やトイレとか大丈夫?お腹とか空かないの?」
思い出したようにSEVENは広人に聞いてきた。
「大丈夫です…というより色々興味あることを教えていただいているので、そっちはどうとでもって感じですね」
「面白すぎるよ君、あはははは。…だって私の正体知ってるんでしょ?世間では犯罪者のレッテル張られてるし」
「一人じゃないって聞いてたし、それに…良い人もいると聞いてますから」
満足そうな笑みを浮かべてSEVENは言った。
「あくまで自分が受けた印象を主な判断材料とするところ、いいね、君いいよ」
「それはどうも」
「…評判通りってところだね」
「なんですか?評判って?」
「独り言だから気にしないで。…って次も行ってみる?」
SEVENは左手を広人の前に差し出した。少し遠慮しながら広人は彼女の手を握った。
「いつでも会える訳じゃないんだよね……うーん…どうしようか…」
再び独り言らしき事を口にしたかと思うと、広人の顔を見ながらこう話した。
「よし!決めた!」
SEVENは右手を高々を天に向けて突き出した。
足元から光の輪が次々と現れ、二人の体を包み込んでいった。
…戻ったら、薫にどう説明しようか…。
薄れ行く視界の中で広人はふとそんなことを考えていた。




