第28話 間話:3人のアフター・ティー
更新伸びてしまい申し訳ありません。
忙しくてそのままにしておいたら、いつの間にか1月ほど経ってしまってました。
また少しずつ更新していきます。
ロディたちが帰った後のフェイ邸の一室で、テーブルを囲んでくつろぐ3人の年配の姿があった。
テーブルには紅茶が入ったカップが3つ、その香りとともに並んでいる。
「・・・まったく、呼びもせんのにいきなりやって来るなど、礼儀も何もあったもんじゃないわい。」
館の主であるフェイは、招かれざる2人の女性に向かってぶつぶつと文句を口にする。
「あんたから礼儀に対して苦情を言われるとは思わなかったよ。どれだけ若い女の子に迷惑をかけてきたかわかってるのかい。」
招かれざる客の1人、ロスゼマが、フンッと言いながらじろりとフェイをにらむ。
「今回はちゃんと正式に招いたんじゃ。ナコリナちゃんたちに変なことをするわけなかろうが。」
「どうだか。」
2人の、いつもやっている口げんかのようなやり取りを見ながら、もう1人の客はただ笑みを浮かべている。
しばらくして口論も途切れたころあいになって、エリーはようやく口を開いた。
「みんないい子たちでしたね。私も楽しくなっちゃったわ。」
いきなりの言葉にやや意表を突かれたフェイがエリーに振り向き、そして悪態をつくように言った。
「当り前じゃよ、ちゃんと事前に調べておるわい。何よりロディが一緒にパーティを組んでおるのじゃ。性格の悪いものはおらんに決まっておるわい。」
「ふふ、本当にあのロディって子を信用しているのね。」
「・・・信用ってほどじゃあないがのう。」
「何柄にもなく照れてるんだい。」
ロスゼマが茶々を入れると、フェイが不機嫌そうに反論してきた。
「う、うるさいわい。お前こそナコリナちゃんを気に入っておるようじゃないか。」
「そうさ、ナコリナはいい娘だよ。素直で、よく気が付くし。・・・あんたはどうなのかい?」
話の矛先をロスゼマに向けてそらせたつもりがいきなり正面から受け止められてしまい、フェイは言葉に詰まってしまった。
そんな様子を笑顔で見ていたエリーが、少し真面目な顔つきになってフェイに話しかけた。
「フェイ、本当にロディを弟子として認めないの?」
「む、それは・・・」
食事の時にも話題になった『弟子』について、エリーが混ぜ返すように言うと、ロスゼマもそれに乗ってきた。
「フェイは昔から『ワシは弟子なぞ取らん。もし弟子にするとしたら、ワシと同じレベルになれそうな奴だけだ。』と公言して、だから今まで弟子は1人もいないじゃないか。昔の言葉で今更引っ込みがつかなくなってるだけだよ。つまりは単なる意地っ張りだよ。」
「ワシのレベルにまで登ってこれそうな者が居なかったんじゃから仕方がないじゃろう。」
「ロディはどうなんだい?」
「・・・まだ、わからんわい。」
フェイが見せる逡巡に、エリーが心配そうに口をはさむ。
「私は、過去の自分の言葉にいつまでもこだわらないほうがいいと思うわよ。私が見てもロディはこれからも伸びそうな気がするわ。ロディを弟子と認めても、あなたの名声に傷がつくとは思えないけど。」
「ワシの名声のこととか、そんなことは思うておらん。じゃが、ワシは弟子は取らんと・・・」
「いつまでも意地を張ってんじゃないよ。そんなつまんないことを言ってたら、そのうちロディのほうから愛想をつかされちまうよ。」
女性2人からの集中砲火を浴び、フェイは押し黙ってしまい、カップを持って紅茶を口にする。
ロスゼマがため息をつきつつフェイを見て言った。
「アンタ、ロディに見込みがあると思ってるんだろう?だから自分の持てる技術と知識を伝授しようとしてるんじゃないのかい?」
「・・・」
「『賢者フェイの弟子』と呼ばれるのにふさわしくなってほしんじゃないかい。」
「・・・まあ、ワシの知識と技術を、ワシの死で途切れさせたくはないのは確かじゃ。」
フェイは紅茶で口を湿らせてからカップを置き、2人に顔を向けて言った。
「ワシの弟子を名乗れる資格があるかどうかは、いずれワシが判断する。」
「そりゃ、いつなんだい?」
「ロディたちはこの街にとどまるつもりは無いのじゃろう?彼らが街を旅立つまでには決めるわい。」
「・・・まったく、めんどくさい男だねえ。」
ロスゼマはあきれたようにつぶやき、エリーは2人を見て微笑んでいた。
エリーは最近のフェイに変化を感じている。フェイだけではなくロスゼマにもそれを感じる。
『2人とも、以前に比べてなんだか生き生きしているわね。生活にハリがある感じ。それもあの子たちが来てからだわ。』
ロディたちはロスゼマとフェイにいい影響を与えている。エリーから言わせれば、2人とも毎日が楽しみで仕方がない様子に見える。無論、彼らに言えば強く否定されるであろうから口には出さないが。
エリーの冒険者時代、フェイとロスゼマは尊敬できる先輩であり、目標でもあった。そんな彼らが今の生活を楽しんでいる。エリーにとってはそれだけで十分嬉しい事だった。




