79話
エレメルは、ローエム国王に語り掛ける。
「陛下の望む、この騒ぎの鎮静化は対応できます。騒ぎを収められますわ。」
まずこの騒ぎは、貴族の女性がオリオン公国に移住してしまったのが騒ぎの始まりだ。
貴族達は自分の子息たちの結婚相手が居なくなり、騒ぎ出したのである。なら結婚相手を連れてくれば騒ぎも収まるであろうと語ったのだ。国王もそんなことは分かっている。その貴族に相応しい格を持った貴族の息女が居ないのだ。
エレメルは分かっていますよと、ほほ笑む。
エレメルは、貴族の王立魔法学校を設立することを勧める。その理由として、貴族の子供たちが集まれば、結婚相手も見つかるだろうと。それに繋がりも出来る。貴族としては交流の場になるという。
外国からも、留学生を受け入れるようになれば、もっと広がりが出来るので、貴族たちは歓迎するはずだ。
そしてローエム王国に利権も出来る。貴族から学費を取り経営をしていく。高度な魔法の教育なのだ学費も高額になるだろう。
貴族達にも利益はある、優秀な人材の確保、これは王国にも言えることだ。
社交の場、外国との繋がり、魔法が使えるようになる。それも高度な魔法が学べるのだ。
エレメルは将来の利益だけではなく、すぐに目に見える利益を、貴族相手に示すようにする。
国王に、王立魔法学校は、王国の経営とする、だが一つだけではローエム王国は広すぎる。
そこで、王国の各盟主たちに王立魔法学校の分校を経営させて、盟主たちに利権を作ってやるようにすれば良いと伝える。貴族たちも利権である、役職、権利等を王国又は盟主から貰えれば黙るはずであると説明をしていく。
魔法学校を男女共学として女性たちの立場、勉強の場を与えれば、今の騒ぎは収まっていくと説明をした。
魔法使いに男女は関係ない。使える力は個人の才能だけであると。
国王唸る。「んんんんんーー。」
「陛下、ローエム王国がこの大陸の北部地域をすべてまとめるのです。魔法学校で強力な人材を確保し、外国からの留学生を抱えこみ、そしてローエム王国が外国に魔法学校を設立していけばローエム王国は一大勢力になるはずです。戦争なんかしなくとも相手が勝手に怖がりますわ。」
「陛下、歴史に名を残しましょう。偉大な王として。」
「そうです、父上は今でも偉大な王ですが、もっと偉大に大陸で一番の王になれるわ。」
エレメルとクリスは、国王を煽てる、煽てる、煽てたおす。王は倒れる。
「エレメル公王妃よ、魔法学校の設立と最初の教育をお願いできるか。」
「御意のままに。」 エレメルは深々と礼をする。
それからの行動は、速かった。
エレメルとクリスは、ハロルドとルドルフをローエム王国に呼び出し、こき使った。
エレメル、クリス、メアリーは社交の場、パーティーなど、頻繁に顔を出していく。ハロルドは国王と王国と盟主たちの利権の配分等の話や、これからの管理のやり方等の話を詰めていく。
ルドルフもローエム王国の各地を回り、盟主たち有力貴族に利権の餌をチラつかせていく。
オリオン公国では、魔法学校の設立準備等と魔法の教師の育成をマリア、イリアが担当していた。
マリアとイリアは、魔法学校の設立は、順調にこなしていった優秀な部下達も手伝い、各地に魔法学校を建設をしていった。だが、教師は難しいのでアレクを引っ張りだして、教師の教師を強制的にやらせたのだ。
「やだ、帰る。横暴だ。訴えてやる。」
「アレクス様、もう諦めてください。私たちはドラキュラ隊です。」
アレクは、公都ブレストに連行された。
「マリア姉、帰してください。僕には仕事があります。イリア姉、お願いします。」
「「無理よ。」」
「ひどい、この国に自由はないのか、政治家は何をやってるんだ。」
「アレク、あなたも政治家よ。それにこの国は公王制度よ。あなたに自由はないわ。」
アレク、打ちのめされる。
アレクは、教師役を承諾する。
一度、諦めると前向きになるのがアレクだ。
「いいですか皆さん、あなた達はこれからローエム王国で一番の魔法使いとなるのです。」
アレクは教師候補生たちに、魔法だけではなく、国のあり方、もちろん君主制度のあり方だ。
読み書きそろばんの大事さ。道徳心の大切さ。資質にあった教育のやり方。
魔法を使う上で、大切な事を教えていく。無暗やたらに使われて、争いの種になっては困るのだ。
魔法の前にきちんとした教育こそが大事だと教師に教育、洗脳していく。
教師候補生たちも、最初はこんな事と言っていたが、繰り返し同じことを教えられるとそれが正しく思えてくるのだ。
アレクの言うことは間違いではないぞ。 正解でもないが。
アレクは教師候補生たちに資質を見極める、不得意を練習するのはいい。だけど無理やりやらせるな。それなら得意なものを伸ばせと。
教師候補生たちはどんどん洗脳されていく。学力は国力だ。パンが無いなら菓子を食え。貴族は民を守るから貴族なのだと。だから貴族は特権を持っているのだ。民を守れない貴族はいらないと。あなた達がそれを教え、導くのです。あなたたち以外に出来る人はいませんよ。
あなた達、教師候補生は選ばれたのです。国をつくる。貴族、政治をするものを育てる役目に選ばれたのですよ。
こうしてアレクの教師候補生の魔法の特訓少しと洗脳教育のやり方を教えた。
教育官僚である。
アレクは、マリア、イリアに報告に行く。
「マリア姉、イリア姉、僕はもう、へとへとです。二度とやりません。」
「アレク、当分ないわ。」
「あっても、今度は少し違う形だわ。」
アレクは、背筋がぶるっときた。何も言わずに回れ右をして帰っていく。
「こわっ」小声で一言いっていた。
アレクの教育が一段落している頃。
ローエム王国では、騒ぎは収まり、代わりに利権争いが起きていた。
貴族達の性なのだろうか。
利権争いも下火になった頃、調整が終わりに近づいた時でもあるが、ローエム王国が、魔法学校設立を大々的に伝えた。
国内はもちろん、諸外国の大使に、外国の商人にと話が拡がるように伝えたのである。
ローエム王国内はもちろん、諸外国の反応が凄かった。魔法学校、魔法を学べるところは無かったのだ。魔法を教えてもらえる。国内、外国の貴族、裕福な人々がこぞって入学の希望を出してきたのだ。
もうローエム王国は、ウハウハ状態になっていた。盟主たちも同じように笑顔であった。
こうして魔法学校の準備が整っていった。
魔法学校での一番の被害者は、アレクであった。
アレク、お疲れさん。