77話
大森林の湖
「カイン兄、大森林の魔物は、強い。」
「よくわからん。数が多いよ。狩っても狩っても、全然数が減らない。湧いてくるみたいだよ。」
「でも、冒険者ギルドが出来たら、冒険者たちは喜ぶかもね。」
「魔物は、売れるから。ここの大森林には稀種もいるし、普通の魔物でも、貴重だから高く売れるからな。」
「まだ大森林の奥にはいかないんでしょ。」
「まだ行かないよ。そこまで手がまわらないし、この周辺だけだな。」
アレクはこの湖から流れ出ている川の調査を、魚人たちに依頼をした。
「湖から、大きい川が3本出ている。1本はわかっているからいいとして、他の2本がどこに続いているのかを調査を頼むよ。」
「了解しました。目立たぬように調べてきます。」
アレクは、島の開発現場に来ていた。
「さすが、工事が速いね。」
「もう建物がありますよ。」
「これが、魚人の住居か中々いいじゃん。」
「水辺にあってすぐに湖に行けますね。」
「そうだね、この島には水路を造ってないからね。」
「どうして造らなかったんですか」
「時間も無かったのもあるけど、この島水面よりだいぶ高いでしょう。水路を造ると深くなるんだよ。使い勝手が悪くなるし、湖があるから要らないでしょう。」
「そうですね湖がありますね。」
アレクは港建設の現場にも行ってみる。
「ここの現場監督はいるか。」
「はい、私です。何か御用でしょうか。」
「いや大したことじゃないけど、港の深度には気を付けてと思ってね。」「これからはもっと大型船が来るようになるから、深くしといた方がいいんだよ。」
「大型船ですか。今の大きさより大きくなるのですか。」
「うん。段々と、大きくなっていくだろうね。」
アレクは、色々と意見、アドバイスを行い、その場をさった。
「師匠、もうこの島には用は無いですから水の都に戻りましょう。仕事が溜まってますよ。」
「そうだね、他の島に家を建てるの忘れてた。後で建てるかな。」「明日にでも一度帰ろうか。」
「はい、そうしましょう。手配等をやっておきます。」
「うぅ、さぶっ。」
「師匠、寒くないですよ、暑いですよ。」
「いや、今のはたぶん悪寒だよ。なにか嫌な予感がする。」
悪寒があったが、何事もなくアレク達は、翌日にはガレオン号に乗り、水の都に飛び立った。
悪寒の元がいた。
ハロルド、エレメル、ルドルフの3人である。
「湖の島を如何する。ルドルフ。」
「アレクに押し付けましょう。あんな大森林の中、誰も領地にしたく無いでしょう。」
「そうだな、船か飛行船しかたどり着けないような場所、誰もいらんな。」
「アレクが、島を開発したんです、他の誰も何も言えないでしょう。本人もです。」「今は他の開発で手いっぱいでもう無理ですし。」
「そうだな、アレクが開発したのだな。そうだ、そうだな。はははっ。」
ハロルドとルドルフは、問題が解決したので、笑顔で他の話題に移っていく。
それを、黙ってみているエレメルがいた。
「あなた、ルドルフ。」
「どうした、エレメル。」
「先ほどの、アレクが島を領地にするのはいいでしょう。賛成です。」「ですが、アレクは他のもいくつも飛び地で領地がありますね。さすがに代官は必要ですわ。」
「そうなんだが、代官の出来る人材は少ないし、もういないだろう。」
「私に、考えがありますの。一任してくださるかしら。」
エレメルの言葉には迫力があり、ハロルドは「はい」としか言えなかった。
ハロルドは、人材はもういないと思っていた、実際に使える人材はいなかったのだ。オリオン公国にもローエム王国にも、優秀な者は雇われ、使えない者は淘汰されていたからだ。
ルドルフも、如何するのかと興味はあったが聞けない。聞いたら巻き込まれると思い黙っていた。
正解だ。ルドルフ。
エレメルは、マリア、イリア、クリスと何やら密談をしていた。
数日後、エレメルとクリスの二人は青いすい星号に乗り、どこかへ旅立っていった。
エレメルとクリスはローエム王国の公爵邸にいた。そこでもメアリーを加えた3人で密談をしていた。
レオンは、メアリーにそれとなく話を振ったが、微笑まれて終わった。
エレメルの滞在は、1か月にも及び、その間の公爵邸は緊張の中にあった。誰もが無口になり、何もしゃべらないようになっていた。
エレメルは色々なパーティーに顔を出しては、ご婦人たちと面白おかしく楽しそうに過ごしていた。
そんなある日に、ローエム王国にオリオン公国への移住の届け出が、数十件だされた。
驚いたのは、ローエム王国と貴族達であった。
移住の届け出を出したのが、ローエム王国貴族の女たちであったからだ。
未婚の女性、既婚者で夫婦で移住、家族で移住、どれも女性が貴族の子供で爵位もなく、平民になったものや、貴族籍の者もいるが、結婚した場合は平民となる者たちであった。
ローエム王国では、女性の爵位相続は基本的にはしない。
女性貴族はいるが、あまり歓迎されていないのだ。
エレメルは、そんな女性たちを率いて、オリオン公国に舞い戻ってきた。
全員がドレスに身を包み、優雅に気品に満ちた仕草で船から降りてきたのだ。
総勢50人のご婦人たちであった。
迎えに来たのが、マリア、イリアと部下たちであった。
マリア、イリアに先導されて、情勢女性たちはオリオン公国、謁見の間に入っていった。
そこにいたのは、もちろんハロルド公王である。
無表情であるが、何となく顔のひきつっている雰囲気のハロルドは、淡々と陞爵の手続きを行っていた。
ルドルフもその場にいたが、無表情は出来ずに、愛想笑いを浮かべていた。
他の、男性陣も同じようなものであったようだ。
この日、オリオン公国には約50人の女性の貴族当主は誕生した。多くの女性は女爵となり街の代官として各地に散らばっていった。
その女性たちは、優秀である。そこいらの男性では太刀打ちできない程の優秀さであった。
ローエム王国では女性であるがゆえに職にも就けず、爵位も継げず、何も出来なかった人たちであった。
エレメルは、彼女たちが優秀で働き者、才能がある者たちである事を知っていたのだ。
そこで、マリア、イリア、クリス、メアリーの推薦者等色々と伝手を頼りに集めた50人である。
オリオン公国貴族の4分の1が女性貴族の当主となった瞬間である。
それからオリオン公国の快進撃がはじまった。
優秀な者に率いられた者たちは、統率がとれ、部下たちの能力を底上げしていったのだ。のちに部下たちも陞爵されて貴族となっていく。
オリオン公国は、この日敵対はしていないが、貴族のエレメル派が誕生した。
オリオン公国は、他に派閥は無いのだが。




