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糖度不足の解消法  作者: 河野 晶
おまけ
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10/10

ふとしたきっかけ(本編前・先輩サイド)

 金曜日。授業も終わり、今は部活動の時間。

 俺、河東耕一(高3)放送部員は演劇部の連中と一緒になって体育館に音響機器を運んでるところ。

 まあ、真面目に運んでる奴らはあんまいないけどな。男子連中は重い機材にうんざりしてるし、女子連中は椅子並べながらしゃべってるし、やる気ないなぁ。

 明日が演劇の発表会ってのによ、こんなんで大丈夫なのか? あれか? 本番前の息抜きか……。

「後は? 全部揃ってるのか?」

「マイク足んねぇ」

「スピーカーのコード忘れてるぞ」

 同じ放送部員にそう返されて、それぞれがそれぞれを見渡して。

 ま、ここはコレだよな。


「最初はグッ! じゃんけんポイッ!」



******



 体育館用のシューズからスニーカーに履き替えて、ふて腐れながら放送室へと向かう。

 一回で負けた。有りかよあんなの。あいつらゼッテー口裏合わせて全員グー出したんじゃね?


 うちの学校の体育館は2階建て。一階は倉庫と剣道室と柔道場、それから更衣室となんでだか会議室がある。で、2階が大体育館(小体育館は別棟にある)

 外階段を俺は多少不機嫌な顔つきで、外階段を下りて行く。

 踊り場を出て、また階段を下りようとしたら、一年の女子がいた。

 放送部の新入部員。名前は――。


「関崎?」

 俺は少し驚いて声を掛けた。

 名前を呼ばれて階段を上っていた関崎が顔を俺へと向けてきた。

 その左肩にアンプやスピーカーのコードの束が掛けられていて、かなり重いのか、顔が赤くなっていて息も上がっていて目元が潤んでいた。

「ああ、河東先輩ぃ。へルプー! 重いですぅ!」

 言われ、俺は関崎の傍まで行き、コードの束を全部引き受けた。

 持てない重さではなく、ほっとする。よたよたしてても女子が持てた物、男が持てないって情けなさすぎる。まあ、問題ない。つーか、コレくらいでよたつくのか女子は?

「何やってんだ?」

「え? コードいる分ですよね?」

 なんてきょとんとした顔で聞き返されて、その頬はまだ赤くて、潤みが消えていない目で見上げられて……。

「……重いの運ぶのは俺ら男子部員がするから」

「でも。少しくらい持てますよ?」

「いい」

 短く答えて、俺は階段を引き返す。関崎、なんだっけ?

「関崎、下の名前なんだった?」

「え? 香織です。においの香りに織姫の織です」

「おりひめ?」

 言ってて恥ずかしくないのか? その説明。

「あ、機織、糸・音」

「字はわかった」

 振り返って俺は関崎に言い返す。後ろを付いて着ていた関崎は、俺を見上げたままにっこり笑った。

「はい」

「…………」

「? 先輩?」

「なんでもない」

 首を傾げる関崎に俺はぶっきらぼうに答えた。


 

 多分、香織を意識し始めたきっかけがこの時だったと思う。

 どうせ、単純だよ。笑った顔が可愛かった、って理由だからな。


 告白したのはこの日から半年後。その後の話は、まあ、別の話。



サイト 初出 2010.2.13

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