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プロローグ: ほら、甘さがない

 梅雨が明けたばかりの7月。 

 うんざりしちゃう1学期の期末テストまで後5日。

 だけど私、関崎香織(せきざきかおり)(16歳。都立高2年4組。放送部所属です)は2歳年上の彼氏の部屋で、まったりとラブい時間を過ごしている。


 って、すんごく言いたい……。

 いや、彼氏の部屋には居るのよ?

 家には誰も居なくて2人っきりで、付き合い始めて約半年というラブ甘モード全開期。―― の筈なんだけどね、他のカップルとかならさ。

 

 甘くない数学の教科書とノートと筆記用具が乗っている彼の部屋の小さいガラステーブル。

 向かい合って座っている私の彼氏 ―― 河東耕一(かとうこういち)19歳、大学1年生 ――は目の前に可愛い彼女(私の事よ? 念のため)が居るにも関わらず、仏頂面で黙々と高校生の私には分からないレポートを書いている。

 お互いの勉強をしつつも、時折視線を交わして甘く微笑む。なんて、今までに一度もした事が無い。

 私が期待を込めて見詰めていると「睨んでないで宿題しろ」と、細くて低い不機嫌な声で言って来るだけ。

 好きな人睨んでどうするの?! 見詰めてるんじゃない! 乙女でしょ?!


 む~! む~! もう! せっかく2週間ぶりに会えたっていうのに、この会話の無さは何?!

 倦怠期? 倦怠期ですか! って甘い時期があってこその倦怠期さんだよねぇ。


「甘さが欲しい」


 思わず呟いた私の言葉を聴いて、先輩が(あ、高校で部活が一緒だったから、ずっと先輩って呼んでるの)が顔を上げた。

 染めていない短めの黒髪。細身の体。器用そうな長い指。顔は標準より良いと思う(ベタ褒めするのはちょっと照れる。恋人フィルターどんどこい)視力が弱いからか目つきは悪いんだけどね、何となく先輩の雰囲気には合ってると思うの。


 先輩はシンプルな銀縁メガネを指で押し上げながら、私に爆弾を落とした。

「今以上に太るぞ」

「っ!!」


 こんな感じで、私と先輩とのお家デート、というより勉強会は甘さの欠片も無く過ぎていく。

 この黙りがちで蟻の大きさほどの愛想も無い恋人と、どうやったら甘い時間を過ごせるか? が、私の目下の課題。

 さて、どうすればいいのかな……?。


 あ、一応言っておくけど、私は身長も体重も標準だからね!

 まあ、『やや痩せ気味』寄りか『やや太り気味』寄りかは、うう、言わなくていいよね?



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