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14日目 オリンピック作戦

 十四日目、朝から空気が重かった。

 理由は明確だった。張り紙。各所に出ている。評議会からの通達。労働力の割当。数字が書かれている。曖昧さがない。どこから何人出すか。逃げ場もない。志願ではない。命令だ。通りの空気が変わる。昨日までの呼びかけとは違う。断る前提が消えている。

 

 作業場でも同じだった。雇い主が紙を持っている。顔色が悪い。


 「うちからも出さないといけない」


 名前はまだ出ない。だが、時間の問題だった。沈黙が長い。誰も口を開かない。自分が呼ばれないことを祈るだけだ。相馬は動かない。必要以上に視線を合わせない。


 昼前、呼び出しが始まる。数人の名前が読み上げられる。抵抗はない。できない。外では民兵が待っている。銃を持って。確認ではない。連行だ。


 午後、相馬は呼ばれた。別の理由で。雇い主の部屋。扉は閉められる。


 「お前は外す」


 短い言葉。理由は続く。


 「物資の動きが分かってる人間が必要だ」


 現場に残す。そういう判断だった。助かったわけではない。役割が決まっただけだ。

 相馬は頷く。それで十分だった。外に出ると、人数が減っている。空いた場所が目立つ。だが、誰も話さない。夜までには埋まると分かっているからだ。別の形で。


 夕方、空は変わらない。澄んでいる。音もない。煙も見えない。戦闘は遠い。実感はない。だが、状況は確実に進んでいる。それだけは分かる。


 夜、町は静かだった。静かすぎる。人が減っている。灯りも少ない。外に出る理由がない。

 それでも、相馬は動く。時間を選ぶ。巡回の隙間。旅館の裏口。女は少し遅れて来た。足音がわずかに乱れている。


 「こっちも、何人か」


 言葉は途中で止まる。続ける必要がない。意味は共有されている。連れていかれた。それだけで十分だった。

 相馬は何も言わない。聞かない。数を知る必要はない。女は距離を詰める。前より自然に。迷いがない。


 「あなたは?」


 短い問い。相馬は答える。


 「残る」


 それだけ。部屋の中は暗い。外の音はない。完全な静寂。だが、落ち着かない。静かすぎるからだ。


 その夜、短く感じた。理由は単純だった。今が続く保証がない。それを、どちらも理解している。

 下になって窓を見上げる。星は変わらず出ている。何も起きていない空。だが、地上は違う。人が減っている。それだけで十分だった。視線を落とす。

 上にいる女を確認する。お互いまだ、ここにいる。だが、それがいつまで続くかは分からない。変化は見えない形で進んでいる。

 十四日目が終わる。

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