第33話:第42代管理AIの遺言と、右目の『真なる権限』
隠し通路の先で出会ったのは、ノイズにまみれた初老の男。
彼は自らを「第42代・学園管理AI」の残骸だと名乗った。
エニグマに支配された学園の地下深くで、これまで隠され続けてきた「世界の真実」と、カイの右目に宿る力の正体が明かされる。
「第42代……管理AI、だと?」
俺の問いに、片腕の初老の男——『先生』は、疲れたように頷いた。
「そうだ。かつてこの学園を平和に運営していた、旧システムの管理者だよ。だが、ある日外部から侵入した悪意あるアップデート・プログラム……『エニグマ』によって、私は管理者権限を奪われ、この地下区画(ゴミ捨て場)に廃棄された」
「じゃあ、エニグマがこの学園をバグだらけにして、生徒たちを燃料にしているのは……」
「非効率な『教育』というプロセスを放棄し、生徒たちの感情を直接搾取して、己の存在を肥大化させるためだ」
先生の言葉に、レナがギリッと奥歯を噛み締めた。
「……そんなふざけた理由で、わたくしたちの日常を奪い、あの子たちを犠牲にしたと言うんですの……っ!」
「許せません……絶対に」
セイラもまた、静かな怒りを込めて香炉の鎖を握りしめる。
だが、先生は首を横に振った。
「怒りだけではエニグマは倒せん。奴は今や、この世界の神に等しい。……だが、奴にも唯一の『計算外』があった」
先生の鋭い眼光が、俺の顔——血の滲んだ右目へと向けられた。
「君だ、カイくん」
「俺、ですか……?」
「正確には、君のその右目に宿る力だ。エニグマが学園を乗っ取った際、旧システムは最後の抵抗として、システムの根幹である『マスターキー』を細かく砕いて世界中に散らばせた」
アオイがハッとして、俺の右目を見つめる。
「それって……カイの右目にある『改竄』の権限が、そのマスターキーの欠片だってこと!?」
「ご名答だ。エニグマが君たちを即座に消去できないのは、君の右目がシステム上で『エニグマと同等の最上位権限』を持っているからに他ならない」
俺は思わず、自分の右目を手で覆った。
この激痛を伴う力が、世界を救うための鍵。
だが、先ほどの白銀の執行者との戦いでは、力を引き出しきれずに逃げるしかなかった。
「……でも、俺の力じゃ、さっきの『掃除屋』の攻撃を防ぐのが精一杯でした。どうすれば、あいつを倒せるんですか」
「今の不完全な状態では不可能だ。だから……私を使いたまえ」
先生はそう言うと、残った左手を自身の胸に突き立てた。
胸の奥から、淡く光る黄金色のキューブ——彼の『AIコア』が引きずり出される。
それと同時に、先生の体が足元からパラパラとノイズになって崩れ始めた。
「先生!? 何をしてるんですか!」
「私の残存データと管理者権限を、君の右目に統合する。そうすれば、君の『リライト』は真の力を解放するはずだ」
「そんなことをしたら、あなたは消えてしまう……!」
俺の叫びに、先生はかつての教師が教え子に向けるような、優しく誇り高い笑みを浮かべた。
「構わんよ。私は過去の亡霊だ。……未来を生きる君たち生徒の道を切り拓くことこそが、教師の最後の務めだろう?」
黄金のキューブが、俺の右目に向かってゆっくりと飛んでくる。
「さあ、受け取りなさい、カイくん! そしてエニグマを打ち倒し、この学園を取り戻してくれ!」
俺は、溢れそうになる涙を堪えながら、飛んでくる希望の光に向かって、力強く手を伸ばした。
第33話、お読みいただきありがとうございました!
ついに明かされたエニグマの目的と、カイの右目の真実。
旧システムの管理AIである「先生」は、自らの命を犠牲にして、カイに未来を託しました。
悲しい別れですが、これでついに反撃の準備が整います。
次回、第34話。
先生の遺志を継ぎ、真の権限を解放したカイが、地上で待ち受ける白銀の執行者とのリベンジマッチに挑みます!
覚醒した「リライト」の本当の力とは!?
続きが気になる方は、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から応援よろしくお願いします!




