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第21話 商人の異物収集

 聖イリス教国を出発してから6日目の夜。


 レイブン王国から半日程の距離に差し掛かった俺達は、夜を越す為に夜営を敷いた。


 本来、徒歩で聖イリス教国からレイブン王国に行こうとすれば、2、3週間程掛かるが、今回はパウロの馬車に乗って移動した為、1週間程で着きそうに成った。


 イブの『その心配は、必要ありませんよ。』はこの事を言っていたのか?……

 だとしたら、何でそれを知っていた?……

 ……運命……フッ、まさなか。


 俺は魔物の肉を焼いて夕食を作りながら、イブの思惑について考えを巡らしていた。

 

 一方、パウロは少し離れた所で、今焼いている魔物の頭蓋骨を綺麗に磨いていた。

 

 それは、長く冒険者生活をしてきた俺から見ても変わった行動だが、今日に始まった事ではなかった。



 ここまでの道中、何度か魔物に遭遇して倒しては、その度にパウロは飛び付く様に魔物の近くへ行って、身体の1部等を採取していた。


 昨日は、“ジャイアントモス”という魔物に遭遇した際、パウロはジャイアントモスが放つ胞子を瓶に集めていた。


 そして、今日は夜営を敷く前に“ワイルドボア”という中々現れない魔物に遭遇し倒した後、パウロは目を輝かせて『頭だけ切り取って欲しい』や『上手く革を剥いで欲しい』と俺に要求してきた。



 まあ、ワイルドボアの肉は旨く、今日の夕食にするつもりだったが、正直パウロの真意が気になる。

 

 そうこう考えながら肉を焼いていると、頭蓋骨を磨き終えたパウロが、匂いに釣られた様に焚火の方へ来た。


 俺は肉の焼け具合を確認し、パウロへ夕食を出した。


「ありがとうこざいます。」


 夕食を受け取り、礼を言ったパウロはそれにかぶり付いた。


 俺も、自分の分の肉の焼け具合を確認してかぶり付いた。


 そして、俺は夕食を取りながら、パウロにここ数日の()()についてを尋ねてみた。

 

「パウロ、さっきまでワイルドボアの頭蓋骨を真剣に磨いていたが、あんな物一体何に使うんだ?」


 パウロは、頬に溜めた肉を飲み込み、質問に答えた。


「あれは、レイブン王国で開催される交易祭に出品しようと思うんです。」

「交易祭?……

 初めて聞いたが、出品て事は市場みたいなものか?」

「まあ、物の売り買いという面ではそうですね。

 でも、市場の様に決まった商品が並んでいる訳ではありません。

 交易祭は、各地から来たら行商人が店を構える大規模な売り場が展開されていまして、旅の道中で手に入れた変わった品々が出品されているんです。

 この交易祭は、レイブン王国で年に1度開かれ、今年の開催が明後日からと成っています。」


 なるほどな、パウロが言っていた『別の国へ行く用事がある』てのと、先を急いでいた理由てのはそういう事だったのか。


「つまり、交易祭が始まる前に、出店の許可を貰う為にレイブン王国へ急いでいたて事か?」

「いえ、出店事態は既に許可を貰っています。

 ただ、出店場所は先着順と成っている為、良い場所を抑えて置こうと思ったのです。」


 この時、既に出店許可を貰っていると聞いた事で一時的に安堵したが、その次に言った“急いでいた本当の理由”を聞いた事で、再び申し訳ない気持ちに苛まれた。


「すまない……」

「だから、もう良いですって。

 過ぎた事です。

 さあ、もう寝ましょう。

 明日早く起きれば、それだけ早く着けます。」

「ああ……」


 パウロは嫌な顔をせず、俺の謝罪を受け入れた。


 そして、明日に備えてそのまま眠りについた。


 パウロは眠る様言っていたが、夜営は危険を伴う為、俺は燃え上がる焚火を前に見張りに就いた。



 パウロが眠ってから1時間程経過した頃、俺は少し気分を落ち着ける為、辺りを見渡して魔物が周囲にいないかを確認した。

 結果、夜営付近どころか、かなり遠くの方まで目をやっても、魔物が放つ微細な魔力の反応はなかった。


 そして、暫くは安全だと判断した俺は、葉巻を取り出し、焚火で火を付け一息着いた。


 今夜の森は物静かだ。

 聞こえるのは、夜風に揺れる木々の音と、焚火の中で跳ねる薪の音だけ。


 俺は葉巻を口に咥え、焚火をじっと見つめながら、1人物思いにふけていた。


 その時、不意にパウロとの会話を思い出した俺は、聖教国で受け取った招待状を取り出して焚火で照らし眺めた。


 交易祭が明後日で晩餐会が明日か……

 となると晩餐会は大方、王貴族による交易祭の前祝いと言ったところか。

 まさか、そんな一大行事に呼ばれる日が来るとわ思わなかったぜ……


 俺は口いっぱいに煙を吸い、吹くために上を見上げた。

 すると、暗い夜空を輝く星々が彩った、神秘的な景色が目に入ってきた。


 こういった一時は、心を落ち着かせ、血生臭い戦いを忘れさせてくれた。



 翌朝


 夜営を片付け出発した俺達は、王都を目指して()()()()に荷馬車を走らせた。


 暫くして森を抜けると、遂に王都が姿を現した。


「アルベルトさん、王都が見えてきましたよ!

 この調子なら、予定より早く着きそうです!」

 

 パウロは、もうすぐ着く事を喜び、王都の方を指さした。


 俺は何時頃に着くかを計算する為、上を向いて太陽の位置を確認した。


「この調子なら、正午頃には着きそうだ。

 早起きした甲斐があったな。」

「はい!

 さあ、レイチェル、バターカップあともう一息だから飛ばしていくよ!」


 パウロが手綱を強く叩くと、荷馬車は更に速度を上げ、レイブン王国王都を目指した。

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