68話 審判の始まり
今日から一応最終章のつもりです…!
残り僅かになるかと思いますが完結まで頑張ります!
すぐさま臨戦態勢を取った…が、それよりも早く、青年は『それ』を開いた。
私は『それ』を知っている。あれは…『天空へ繋がる門』だと。急に記憶が掘り起こされた。
『英雄にして世界最大の罪人フィーナ・レインヴェル…裁きの時だ』
「なんのことやら…分からないかな!」
それが意味することすなわち相手は…会えと言われた『天神族』。ただどうしてこうも殺意を向けられている?
『…どこまで行っても所詮人の技術。天には敵わねぇ』
抵抗空しく接近され、あえなく捕縛。
「主になにしてる…お前!」
『獣、お前に用はない』
捕えられた私を見て敵と判断したミツハが襲い掛かるも…『聖獣』の無いミツハでは限界がある。不可視の一撃にて沈んだ。
「なんじゃ!?こいつ!」
『魔王と帝王か…てめぇらにも…言うべきことは無い。動かない方が身のためだぞ』
青年は私を抱えたまま…会議の場を出る。ミツハが待てと呟きながら這いずっているのが見えたが…当然追いつくはずもない。
『おい、あいつはどこにやった…?』
「…知らないなぁ…」
心当たりはある…というよりこれは…今思い出した?このことを覚えていたのであれば私はきっと…旅に出ていない。
『そうか…ならお前の記憶から読み取るまで』
「っ…」
乱暴に頭の内をぶん殴られたような鈍痛。意識が飛びそうだった。
『宿か…すぐ近くだな。…お前には先に行っててもらおうか』
背に開いたままの『門』へと放られる。
だめだ…行かせたら…みんなが…危ない…
だが何かに吸い寄せられるように、私は門を潜り…一瞬の視界の暗転の後………
* * *
エマとヴィレアは遠く離れたところからもそれを感じ取った。
「ヴィレアさん」
「逃げられそうもない…ですね」
そう認知し瞬きした次の瞬間には…ドアの前に、その気配の持ち主が立っていた。
『おっと…手は出さない方がいい。人質を取っている。こっちは一人…いや、一匹か。あいつに用があるだけだ』
「師匠のことですか?彼女が人質になりうると…」
『なるんだよ…俺は『天神族』だ』
「…え?」
ヴィレアが最初にその言葉に反応し魔術を使い攻撃を仕掛けた。
が、何が起こったのかその魔術は制御を失い逆にヴィレアを捕えることに。
『お前は、どうする?』
エマは問われ…後ずさる。その分を青年が詰める。
「貴方の目的は…」
『歴史の修正とでも言おうか?悪質な隠蔽が見つかったからな』
交渉には応じているが、有無を言わさぬ雰囲気。エマは抵抗は無意味と悟った。
ならば…できることを考えやるのみ。
「…貴方が…師匠に悪質な占いを引っ掛けたのですか?」
『へぇ…お前賢いんだな。あの魔女よりもよっぽど…』
「通りで…行く先々で問題が…主に『不死王』関連の問題が起こるわけです」
ようやく合点が行った。ならあとはこれを伝えれば…あぁ、だから先にそっちに行ったのか。
「つまり師匠は死ぬことも何もないってことですか…はぁ、とんだ無駄足を踏まされたものですよ、本当」
『小娘……貴様、何を待っている?』
「さぁ…?何が起こるんでしょうね?」
瞬間、光が瞬く。エマはそれを予期していたように目を瞑りそのまま駆け出した。
手を伸ばし…青年へ。範囲に入ったと知覚した次には魔力を込めて魔術発動。
青年の記憶が魔力の流動としてエマの頭へ流れ込む。
「目的は罪を認め現世を正すことそのために師匠そして…『不死王』を依り代にした使い魔」
『っ!』
もう交渉の余地は無い。仕掛けたのはエマだったのだから。反撃に放たれた不可視の一撃。防げるはずもなく…エマは、膝をついた。
「…モチさん…ルカさん…」
良かった…入れ違いになったらしい。偶々外へ出ている。逃げ切れれば…
* * *
『少々手こずったな…ガキ、もういいだろ。離せよ』
「いーやーでーすー!」
ブンブンと手を振って掛かってくるルカを、片手で食い止めながら…もう片方に手乗りさせたカーバンクルを見つめる。
『何喋れないフリしてんだ?』
『…ちっ…おい、フィーナはどうした』
カーバンクル…ことモチは青年を睨み威嚇しながら問う。
青年はその言葉にニヤリと笑ってから返す。まるで嘲るように。
『先に待たせてるよ。後はアンタだけさ』
ようやく…ようやくだ。長いこと待ったがようやく…舞台は整った。
『…悪く思うな』
「あっ!」
ルカを一瞬突き倒しその隙に移動。上空へ展開した『門』へ。
『始めようか…未来のための裁きを』
高らかに宣言する。今ここで…過去を照らし未来のための選択をすることを。
* * *
目を覚ますとそこは…懐かしい雰囲気の場所だった。
「ここって…」
「1000年前、不死王によって破壊された審議の間だ」
青年の声が誰も居ない、この空間に響く。それを耳にしてようやく、頭が回りだした。
「あっ…そっか…」
「渡った矢先すぐに寝るとはな。人族はこうも悠長だったか?」
「誰のせいだと思ってんの…というかこれ外してよ。どうせ逃げられないよ」
背中を向け、手首の枷を見せつける。結局あっけなく捕まってる時点で逃げられないしそもそもとして手のひらは標準として使いやすいだけで魔術師に拘束するならもっと他の方法が…
「罪人だと一目見てわかるだろう?」
「…だから、何のことかわからないんだけど?」
「本当に分かっていないのか?」
仕方がないな…といった様子で青年がごそごそと懐から桃色の球体を取り出して…
「…モチ?」
「そう呼んでいるのか。こいつは『不死王』の魂を依り代にした使い魔だろう?」
「そうだけど…?それがどうしたって…」
「色彩の魔女とあろうものが本当に…分かっていないのか?」
食い入るように睨み付けながら問われる。
薄々は勘づいていた。でも旅をするうちに、日々を送っているうちに忘れて…うん?
「少し強く頭を打ったか?」
「そういうこと?」
あぁ……なるほど。となると……こいつが
「お前があの占いジジイか……最悪」
「正解。よく分かったな。まだボケちまったわけじゃないみたいで安心したよ」
「なんかおかしいとは思ってたけど!」
何がおかしいのか分からない。何よりも記憶が失われる例の現象。今思えばあれもあそこまで酷くなかった。なんなら記憶まで消えることなんて…無かったはずだ。
「記憶改変……それと認識阻害。お前らで言う『精神干渉』ってやつか。どうだ?気に入ってくれたか?」
「ま……お陰で旅に出るきっかけになった訳だしね…でも、この状況は看過できないかなぁ」
「もう一度聞くがどうしてこうなっているか分からないのか?」
話が逸れてたねぇ……
どうしてこうなったか……こいつが私に旅をさせ見せてきたものから察するに『不死王』関連でモチに関連していること…
「そこも、なるほど……ね。君らは知ってたの?」
「500年前、久々の復活を遂げたその時からな」
「言ってくれれば良かったのに」
「随分と仲良さそうにしていたぞ?言ったところでお前は曲がらん」
その通り。きっとその時言われても私は……あの子が居なくなった反動で余計にモチとは離れたがらないだろう。
「だから準備した。この空間を持ってお前を捌くために」
青年が…審議の間の上座、審判を行うものが立つ場所へ移動する。すると床がズズズと音を立てながら上がっていき、見下ろされる形に。
「ヴァルネシア=オブリビオンの名のもとに……『色彩の魔女』フィーナ・レインヴェルの審判を始めることを宣言する」
御託は終わりのようだ。手枷も確実に抵抗を許さないためか力強く、かつなんらかの魔術のような力を放っているようで光出した。
「心の準備は……出来ているか?」
「……全く……!」
審判が始まる。
* * *
審議の間に他のものは居らず私と、ヴァルネシアと名乗った青年のみの寂しい空間だった。
「フィーナ・レインヴェルはかつての『不死王』その魂を依代とした使い魔を飼っていた。それが原因で……世界はゆるりと、だが確実に滅びへと進んでいた」
青年が私も推測した内容を告げる。
「さて、それについて……アンタの意見を聞こうか?」
「へぇ、思ってたよりちゃんとしてるんだ」
てっきり話も聞かずに裁かれるのかと思ったが……違うようだ。
「体裁を成すことで発言、行い全てに重みが増す。まぁ……続けろ。やれば分かる」
「ふぅん……そう、なら……そうだね。なら言わせてもらうけど私は呪いが強まっていることなんて知らなかったよ。モチを『不死王』の魂を使って作った使い魔であることは否定しないけどね」
私が言い終えると手枷の光が点滅し出す。
カチカチ……カチカチと
それがしばらく続いた後……再び光を維持した。
「ほう、そうか……本気で知らなかったのだな」
「……そういう魔道具……みたいなもの?」
「お前らで言うところはそうだ。嘘は許されん。罰せられるものだということを忘れるな」
『天空』の世界では魔力ではなく何か別の『力』があるらしいが詳しくは知らない。そういうものなのだと心に留めておく。
「まぁその件はいい……次だ」
ヴァルネシアは1度こほんと咳払いをしてから……今度は空間を四方に切り取り展開した『それ』を見せつけた。
「これは『映像』という天空の技術だ。少し先の未来、現在、過去……念じた場面を映し出す」
1度パッ暗転……後、その映像とやらが写し出されて……
私の人生において、絶対忘れることのないその男が見えた。
「お前は少々この男に絆されているからな。少し……過去を復習しようでは無いか」
この男……そう、他でもないかつて『不死王』と呼ばれ世界を震撼させ今なお畏怖され続けている、1000年前の男。
──────ペルペトゥス・レックス
〜キャラ設定紹介〜
ヴァルネシア=オブリビオン(天神族)
天神族の現族長。フィーナに旅をさせるために占い師として予言を告げた張本人。




