第十一章④『新しい感情』
白百合のように無垢で迷いのない微笑み、力強くて優しい手。
胸に立ち込めていた暗雲は、みるみると晴れていく気がした。
花に包まれるような安堵に満たされるエアは、エレツにより強くしがみつき、大地のようになだらかでほんのり熱い胸に顔を埋めた。
すると、エレツも愛し子を抱き寄せるような優しい力加減で、エアを抱きしめ返した。
エアの頭上で、羽の舞うようにエレツが優しく微笑んだ気配もした。
いつも傍にいてくれたあのエレツが、こうして今自分と瞳を合わせ、言葉を交わしてくれる。
エアとエレツが離れていた時間は、一夜の夢のほんの刹那に過ぎない。
それでも、エアの鼻孔を撫でる甘く爽やかな草花の香りも、力強くも優しい腕のぬくもりも昔のままだ。
エアは懐かしさと共に安堵に満たされる。
一方で、今のエレツの体は以前よりもずっと柔らかで温かく、エアと同じ血の通った人間のように錯覚しそうになる。
男性らしさを醸し出す広い胸板の熱と硬さ、それに相反する女性のようにきめ細やかで美しい肌の感触――そして熱く波打つ心臓の鼓動。
エレツの爽やかな草の香り、と人間らしい熱い肌の匂いが溶け合い、エアの鼻孔を撫でる度に、エアの鼓動まで甘く高まっていった。
しかも鼓動の音色は、時折エレツの温和な声と甘い吐息が天使の囁きのごとく、エアの耳朶をくすぐる度に、全身へ波及していく。
神にも人間にも属さぬ心優しき存在は、エアの知るエレツと同じであることは確か。
それでも、記憶の中のエレツとは似ても似つかない姿態度に、エアは妙な恥じらいと熱に内心翻弄されていた。
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