第五章⑨『民の嘆き』
半神半神の青年シャムス――神と同格の聖美さと強靭なる肉体、深淵の叡智、生まれながらにしてあらゆる天賦の才を賜った真なる王。
当初のシャムスは、非常に聡明かつ勇猛果敢な肝に加え、神々への感謝と祈りを常に忘れない、敬虔なる王子へ成長した。
しかし、一体何の悪夢というのか。
人間にとって理想的な王であり、神々にとって理想的な代理人として謳われていたシャムス青年は――いつの日か砂嵐のように苛烈で、神々ですら手には負えない、傲岸不遜な暴虐の王へ生まれ変わってしまった。
八代目イムベラトル王は、暴虐と理不尽の限りを尽くした。
莫大な富と財をダハブ市民から奪い、ありとあらゆる快楽を貪り尽く、ありとあらゆる生命を理不尽に刈り潰していった。
歴代の王を超越する傲慢――暴虐ぶりに、ほとんどのザハブ市民は限界を超えようとしていた。救済を希う祈りとして声なき悲鳴は、洪水のごとくおびただしさで、主神サマーァに毎朝毎夜届き続けた。
「最高神サマーァ様よ、どうか我々の祈りを聞き届けてくだされ」
「我らの王、八代目イムベラトル様の目に余る暴虐――我々ザハブに生きるすべての民は、既に限界に達しております」
「我々が苦痛と飢餓を孕む体に鞭打って生んだ富も、我々が生まれた時から大切にしてきた価値あるものも、私の命にも代えれない愛する者も全て、王はことごとく奪ってゆきました」
「主神サマーァ様。どうか我々人間に救済と慈悲を! 我々を苦しめる冷酷非道な王イムベラトルに厳粛なる制裁を――!」
しかし、シャムスを擁護する彼の守護神・太陽神アッシャムス、と「神の約定」に阻まれている主神サマーァですら、シャムスには頭が上がらなかった。
たとえシャムスが、地上と民を蹂躙し、親しき仲を覗く神々への暴言という冒涜行為すら平然と犯しているとしても。
ともあれ、民の負った幾多の苦痛、と他の神々の苦情を聞き届けた主神サマーァは、深刻に迫った事態を前に、ようやく重い腰を上げた。
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