第二章④『王の嘲笑』
「はははははっ。これはあまりにも滑稽である! かつて神々が人間と契り交わしてまで生んだ秘蔵の存在。この私の花嫁として神々が指名した小娘はいかなるものか。興味をそそられたので迎えてみたが……ふはははは! 明らかにただの餓鬼ではないか! そのうえ半分とはいえ、神々の血をひいて生まれた小娘が、よりによってこのような――くくくくっ」
目の前の王様が何を言っているのかまったく理解が及ばず、エアの心頭は一瞬漂白にのまれた。
しかも、嗜虐と侮蔑に冷え切った王の台詞――。
神々の血を半分ひいて生まれた者とは、一体誰を指しているのか。
それにしても、エアの一体何がおかしくて、王はこれほどまでに笑い叫んでいるのか。
王の睥睨も甲高い笑いも、内臓を引っ掻き回されているようで、耳障りですらある。
せりあがる不快感と恐怖をひた隠すエアに構わず、王様の理不尽な侮辱は続いた。
「よりによって、地図に点在する不要な塵のような村で育ったとは! 貧しい生活を強いられた半神の小娘は、いかに憐れで惨めな風情を湛えているのか。丁度良い退屈紛れになると呼んでみれば……。そのような襤褸を身にまとい、日々の渇きと飢えを満たすことで頭がいっぱいの獣畜生な格好は、さすがに私の度肝を抜いたぞ! はっはっは!」
王様の口からほとばしる徹底的な侮蔑と悪意、突き付けられた驚愕の事実に、エアの頭の心は混乱と動揺で吹き荒れる。
辛うじて分かるのは、エア自身と故郷を無価値な塵として、王は好き放題に憐れ蔑んでいることくらい。
しかし、惨めな子どもとして侮られることはともかく、愛する故郷まで侮辱されることは、エアにとっては本来聞き捨てならない。
確かに王様が築き上げた黄金大都市ダハブと比較することすらおこがましいほどに、エアの故郷の村はいかに貧しいのかは、天秤で計るまでもない。
しかし、貧しくとも心豊かな故郷と村人の笑顔も露知らぬくせに、目の前の驕り高ぶった王様はただ嘲笑する。
幼子が丹精込めて築いた砂の城を、嗤われながら踏み潰されたのと似た悲哀と屈辱。
同時に怒りの炎が、エアを凍らせていた緊張と恐怖を溶かす勢いで燃え始める。
「実に滑稽極まりないのは貴様の瞳だ! 清美な蒼海のように澄んだ瞳の色は!? 水平線のように真っ直ぐな眼差しは一体何故だ!? いかにも、「あんなみすぼらしい村でも、私は幸せに暮らしていましたわ」、とでも言いたげな表情は! よもや貴様は、神々どもが遣わした道化の刺客ではあるまいな!? この私を笑い殺すための!」
他方、エアに隠れ燃える怒りに無関心な王様は、容赦なき侮辱の砂嵐を浴びせてくる。
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