第二章②『聖城塞』
都市国家ザハブの中心にそびえ建つ巨大な聖城塞に、エアは到着した。
大地の黄金、太陽の白金の耀きを吸収したような泥煉瓦造りの城塞。
王様を含む貴族が拠点とする宮殿、と都市神を祀る神殿の二つで統合され、高大で頑丈な造りの城壁が城塞を囲う二重構造である。
七層の螺旋状階段が建てられた城塞は、約二十五メートルもの高さで構成され、天界への階段のごとき赴きがある。
さらに約百五メートル四方という、アルドゥアラー随一の都市国家としての最大面積も誇っている。
天高き広大な建物を生まれて初めて見たエアは、驚嘆を隠せなかった。
「我らの偉大なる王・イムベラトル様の城へようこそ――エア様」
城門の前で馬車から丁寧に降ろされたエアは、慇懃なあいさつと共に従者に迎えられた。
しかしそれは、決してエアを歓迎したものではない。
むしろ聖なる城塞に踏み入れるうえで、身の程を弁える心構えを命ずるするような響きに満ちていた。
長旅の余韻とザハブに満ちる熱く新鮮な空気に耽る間もないようだ。
格子のように自分を囲う従者に付き添われているエアは、天界の扉のように荘重な門を潜っていく。
城内で果てなく広大な渡り廊下に、歩くエアの姿が鏡のように映っている。
透き通る深緑の美しい湖の水面を歩いているような錯覚に陥る。
左右には整然とそびえ建つ円柱、とその間から覗く荘厳な扉は、月を砕いたようにもやがかった美しい温黄色に輝いている。
壮麗で神々しい建築物から装飾・内装に至るまでが、エアを天界に招かれたような感動と共に魅了した。
一方同時に、ザハブの城に踏み入った時点から、二度と後戻りできない世界へ攫われたような不安と緊張も、エアに絡み付いてきた。
いつ決壊するのか不明な薄塩の上を歩くような心境でエアは長々しい廊下をようやく抜けた。
廊下を抜けた瞬間、眩い白熱光に双眸を突き刺されたエアは、反射的に片手をかざした。
しかし、眩さに両瞼を閉ざす自由が許されるのは、数秒のみであった。
何故なら、あの畏怖なる暴虐王の聖なる御姿は、白熱の光の下に今晒され――エアの無防備な瞳を焼き尽くす勢いで映った。
思わずエアは、冷たい固唾を強引に溜飲し、奥歯と丹田に力を込めた。
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